【サマータイム制導入に反対する】 特別号外 p0007


◆「真珠湾攻撃は誤爆だった」説 第7回◆

 今回からは、延び延びになっていた電波通信の話をします。
 一回では、とても語り尽くせないので、複数回に渡る話をします。
 今回は、その導入の話となります。

 さて、「電波通信の話」と申し上げましたが、通信工学とかテク
 ノロジーといった、いわゆる「理工系の専門的な話」がメインな
 のではありません。
 それらを活用する『通信戦』の話がメインとなります。
 『通信戦』は『情報戦』の一部と言えないこともないのですが、
 私は別にした方が良いと考えています。
 なぜなら、『情報戦』の話というと、たれ流される情報の中身に
 ついての話がメインになってしまう傾向があるからです。
 対して、『通信戦』の話の場合は、通信技術の活用法や落とし穴
 の話がメインになるのです。
 なので、別のテーマとして扱うことにしました。
 どうか御理解願います。

 『通信戦』(の研究)は、真珠湾誤爆の謎を解明するのに欠かせ
 ないテーマです。
 また、見事に的中したルーズベルトの大予言の謎の解明にも役立
 ちます。
 さらに、もしかしたら、ミッドウェイ海戦(における日本軍側の
 混乱ぶりの謎)にも関係しているかもしれないのです。
 ならば、決して無視できないテーマということになるでしょう。

 『通信戦』は、近代日本史研究における大きな大きな盲点であっ
 たと思います。
 このメルマガ記事がきっかけで流れが変わることを期待してやみ
 ません。
 それでは、本編をどうぞ。


◆実は初犯ではなかった日本軍の誤爆

 ちょっと意外に思えるかも知れませんが、「真珠湾攻撃は誤爆だ
 った」説に最も強い拒絶反応を示すのは、もしかしたら右派の人
 たちなのではないかと私は心配しています。
 なぜなら、右派の人たちは日本軍の優秀さのことをよく知ってい
 るからです。
 それ故、「優秀な日本軍が誤爆なんてことをやらかすわけがない」
 と思っていたとしても、少しも不思議ではないからです。

 ですが、「優秀だから誤爆はあり得ない」という理屈は、明らか
 に間違っています。
 実際、歴史に目を向けてみると、真珠湾攻撃よりも前の時分に、
 日本軍は中国大陸で米国や英国の艦船を誤爆しているのです。
 そして、そのたびに謝罪しているのです。
 そうした誤爆の中には、出撃からして「誤」であったケースもあ
 ったというのですから、驚きです。
 ですから、歴史もまた、「優秀だから誤爆はあり得ない」という
 理屈が誤っていることを証明しているのです。

 というわけで、見栄や意地を張るよりも、「なぜ優秀な軍隊が誤
 爆なんてことをしてしまうのだろうか?」ということを研究する
 方が、ずっと利口なのです。


◆誤爆の原因

 誤爆には、大きく分けて、二つのケースがあります。
 まず一つは、『(命令を出す側が)何か(どこか)を攻撃させよ
 うとしていたが、(命令を受ける側が)違うもの(ところ)を攻
 撃してしまった』というケースです。
 攻撃対象を見間違えたり、狙いをはずしてしまったりするケース
 ですね。
 誤爆の大半は、このケースです。
 このため、人によっては、このケース(の誤爆)しか、誤爆とは
 認めないことがあります。
 なるほど、そういう人たちなら、「真珠湾攻撃は誤爆だった」説
 のことを「誤りです」と断じてしまうでしょうね。
 もちろん、そんな評価は公正とは言えません。(これは余談。)

 一方、誤爆には、もう一つ、別のケースがあります。
 こちらは、かなり希(まれ)なケースなのですがね。
 でも、決してゼロではないのです。
 それは、『(命令を出す側が)何か(どこか)を攻撃させようと
 していたわけではなかったのに、(命令を受ける側が)攻撃に走
 ってしまった』というケースです。
 つまり、現場の部隊が暴走してしまったケースです。

 なんて話をすると、「本当に、そんなことがあるのか?」と思う
 人がいるかもしれません。
 確かに、これは滅多に起きることではありません。
 しかしながら、まれに起きることがあるのです。
 たとえば、先ほど述べた『日本軍が中国大陸でやらかした誤爆』
 のうち、『出撃からして「誤」であったケース』が、そのケース
 である可能性が大なのです。
 これは、攻撃命令が出てもいないのに、軍用機の乗組員が「出た」
 と勘違いしたか、そうでなければ、一度は出たが、取り消され、
 その伝達が間に合わなかったかのいずれかでしょう。


◆命令の伝達がうまくいかないと現場暴走型の誤爆が起きる

 ここで気付いて欲しいのは、この二つ目のケース、すなわち、現
 場の部隊が暴走することによって起きる誤爆は、命令の伝達がう
 まくいかない時に起きるということです。

 これは、考えてみれば、当たり前のことです。
 軍隊は、命令には絶対服従の世界です。
 ですから、命令伝達がうまくいかないと、誤爆ぐらい、いくらで
 も起こり得るのです。

 こうしてみると、命令の伝達がうまくことが如何に重要なことで
 あるかがわかると思います。


◆航空戦力には切っても切れない電波通信依存という現実問題

 さらに、『出撃からして「誤」であったケース』では、もう一つ
 気付かなければならない問題があります。
 それは、無線の問題です。

 みなさんは、こんな不満を抱きませんか?
 「誤出撃したのなら、無線で攻撃中止・帰還命令を出せば、誤爆
 は未然に防げたはずだろう。」と。

 でも、防げなかったのです。
 その理由は、当時の軍用機には無線が搭載されていなかったか、
 そうでなければ、無線が切られていたからでしょう。

 航空機というものは、非常に便利で強力な兵器となるのですが、
 一度飛び立ってしまうと、連絡がとれない、故に、命令を伝える
 ことが出来ないという大問題があるのです。
 なので、無線が欠かせないのです。
 無線が生命線と言っても良いほどなのです。

 なので、航空戦力に関しては、無線すなわち電波通信の問題がど
 こまでもついて回るのです。
 ですから、航空戦力を用いる軍事活動では、電波通信の問題が無
 視できないのです。
 従来の近代史の研究では、この点がすっぽりと抜け落ちてしまっ
 ているのです。
 だからこそ、歴史の真相を解明するためには、電波通信の問題へ
 の取り組みが欠かせないのです。


◆又聞き状態…『通信』は実に心許ない命令伝達手段

 軍隊がまともに動いてくれるためには、命令が正しく伝わる必要
 があります。
 で、口頭で直接命令を出せる場合は、良いのです。
 命令が誤って伝わることがありませんし、聞き違いや聞き落とし
 の問題についても、『復唱』させることによって、チェックする
 ことが可能です。
 ちなみに、『復唱』とは、命令を受けた側が、受けた命令の内容
 を口に出して言うというものです。
 これで、命令を出した側が、命令が正しく伝わったかどうかをチ
 ェックすることができるのです。
 そんなわけで、口頭で直接命令を出せる場合は、前述の二つ目の
 ケースのような誤爆は、まず起こり得ないのです。

 ところが、命令を出す側と、命令を受ける側とが、離れた場所に
 いる場合は、話が大きく違ってきます。
 なぜなら、命令は、『通信』を介して伝えられることになるから
 です。

 これが大きな問題を引き起こすのです。
 なぜなら、命令を受ける側は、いわゆる『又聞き』状態におかれ
 るからです。
 『又聞き』の情報が、如何に信用できないか、みなさんも御存知
 でしょう。
 軍の命令だって、同じなのです。

 事実、通信が介在する場合は、命令を出す側と受ける側との間に
 少なくとも二人の介在者、すなわち、通信士が存在することにな
 るのです。
 この人たちのどちらか一人でも情報を歪めてしまったら、命令は
 正しく伝わらないことになる(∴暴走することになる)のです。
 しかも、先ほど述べた『復唱』も行いにくいというのが実情です。
 ならば、情報の信用性はかなり低くなると言わざるを得ないでし
 ょう。
 従って、何か対策をとらない限り、誤爆が起きる可能性は、いく
 らでもあり得るのです。


◆通信障害という大問題

 さらに、通信障害も大きな問題です。
 通信には、障害が付き物です。
 この対策が出来ていないと、誤爆が起きる可能性は、いくらでも
 あり得るのです。

 たとえば、あなたが「出撃準備命令」を出したとしましょう。
 その時、「準備」のところで通信障害が起きてしまったとしたら?
 受信した側は、「攻撃…命令」を受けることになるでしょう。
 つまり、「攻撃命令」が出たと勘違いする可能性が、いくらでも
 あるのです。
 ならば、誤出撃も誤爆も、いくらでもあり得ることになるでしょ
 う。


◆通信の便利さに目が眩(くら)む愚かしさ

 通信は、便利なものです。
 離れたところにいる味方に、情報や命令を伝えられる。
 それも、素早く!
 なにしろ、信号そのものは(ほぼ)光の速度で伝わるのですから
 ね。
 伝令などとは、比べものになりません。

 こんな便利なものは、19世紀にはありませんでした。(もちろん、
 それ以前の時代にも。)
 それが、20世紀になると、出現してくることになる。
 特に、昭和の時代になると、無線すなわち電波通信が普及してき
 て、ケーブルのないところにも情報が送れるようになる。
 海や空にいる者とも情報のやりとりができるようになる。
 どんどん便利になり、軍事にも欠かせないものになっていったわ
 けです。

 ところが、これには、大きな落とし穴があった。
 そのため、それが無かった時代には(まず)起こり得なかった問
 題が起きるようになってしまったのです。


◆対策が不十分であった可能性が高い日本軍

 (電波)通信が歪んだ情報(命令)を伝えてきても、受信した側
 が送信した側に十分な確認をとれば、そうしたトラブルは最小限
 にくい止めることができることでしょう。
 実際、現代では、それが当たり前のようになっています。

 ところが、戦前の日本軍は、そうではなかった可能性が大なので
 す。
 (電波)通信の重要性や情報伝達の速さに気を取られて、その落
 とし穴に対する対策を怠っていた疑いが濃厚なのです。
 その証拠が、中国大陸での誤出撃・誤爆だったのではないかと思
 えてならないのです。
 もし、先程述べた『出撃からして「誤」であったケース』に対す
 る反省が、この傾向(電波通信依存の傾向)を強めてしまったの
 だとしたら、実に皮肉な話です。

 そして、対策不十分のそのまま、真珠湾牽制作戦に出てしまった。
 ならば、誤爆ぐらい、いくらでもあり得るということに気付くで
 しょう。
 なぜなら、電波通信の落とし穴は、今回述べたことだけではない
 からです。
 次回以降、それについて指摘していきたいと思います。

 というわけで、次回以降をおたのしみに…。


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