【サマータイム制導入に反対する】 特別号外 p0004
◆「真珠湾攻撃は誤爆だった」説 第4回◆
今回は、前回予告した通り、映画の題名にもなっている「トラ、
トラ、トラ」という暗号について考察してみようと思います。
この暗号に対する従来の解読(結果)は、定説(故意説)の正し
さを証明する動かぬ証拠とされてきました。
ですが、これは裏を返せば、従来の解読が間違っていたのであれ
ば、定説は完全に根拠を失うということでもあるのです。
実際、従来の解読は、全く英語文化圏的な解釈でしかなく、戦前
日本人の感覚には全くそぐわないものであり、しかも奇襲攻撃を
しようとしている側に立ってみると、その送信からして全くおか
しなものになっているのです。
つまり、映画を鑑賞している人にしか納得がいかないものになっ
ているのです。
今回は、こうした実態を暴き、故意説にトドメを刺そうと思いま
す。
◆ボイスレコーダーは搭載されていたのか?
私は、以前、それも長年、「トラ、トラ、トラ」のことを「奇襲
成功」という意味の暗号なのだと思っていました。
劇中の淵田隊長のこのセリフ、「我、奇襲に成功せり。トラ、ト
ラ、トラやっ!」に圧倒されてしまったからです。
実際、このセリフは、強い印象を受け手に与えると思います。
おまけに、この場面をものすごく盛り上げてくれるものです。
ですが、それだけに、今になってみると、「これは、場面を盛り
上げるための演出のために創作されたものなのではないか?」と
思えてならないのです。
映画やTVドラマなどでは、よくあることですからね。
はたして、このセリフが本当に口にされたものであるということ
を証明する直接的な証拠はあるのでしょうか?
録音はあるのでしょうか?
ボイスレコーダーとかが搭載されていたとは、とても思えないの
ですが、どうなのでしょうか?
もし録音が無いのなら、良くてせいぜい伝聞でしかないでしょう。
ならば、絶対視する必要など無いはずです。
◆まだ攻撃が始まっていないのに奇襲成功?
実際、このセリフには腑に落ちないところがあります。
なぜなら、このセリフが出てくるシーンでは、攻撃はまだ始まっ
ていないからです。
まぁ、突撃命令とやらは出ていることになっているのですけれど
ね。
でも、攻撃はまだ始まっていないのです。
ですから、まだ何の成果も挙げていないのです。
なのに、「(奇襲)成功」だなんて、ちょっとお目出たすぎやし
ませんか?
普通、何らかの成果をある程度挙げてから言うものでしょう。
「成功」という言葉は。
これで、もし、敵の待ち伏せにあい、返り討ちにでもされたら、
大恥かいちゃいますよ。
なのに、随分と軽い…。
淵田隊長は、完全に「十二歳の少年」扱いされているのです。
これって、淵田隊長に対する侮辱になるのではありませんか?
「○○地点(域)、通過」とか「○○段階、経過」ぐらいが普通
でしょう。
「成功」は、やはり、不自然です。
ならば、「トラ、トラ、トラ」の意味は「奇襲成功」ではないこ
とになるはずです。
◆送信しなければならないことなのか?
それに、まだ攻撃も始まっていない段階で「奇襲成功」というこ
とを送信する必要があるのでしょうか?
誰が、そんな情報を必要とするのでしょうか?
それを考えると、ますますおかしいと言わざるを得ないのです。
というのも、奇襲攻撃前の送信は、奇襲攻撃を感づかれるおそれ
のある行為になるからです。
つまり、もし通信を傍受・盗聴されていたとしたら、「日本は何
かをしでかそうとしているぞ」と悟られてしまうかもしれないか
らです。
ですから、奇襲攻撃の場合、攻撃が始まる前の送信は、出来るだ
けしない方がいいのです。
本当に必要な送信だけに限るべきなのです。
では、攻撃が始まってもいない段階での「奇襲成功」は、どうし
ても送信しなければならないことでしょうか?
常識的に考えれば、答えは「ノー」でしょう。
だから、「奇襲成功」送信は不自然だと言っているのです。
◆奇襲攻撃をしようとしている側から考えるべき
このように、奇襲攻撃をしようとしている側からみると、定説は
おかしなことだらけなのです。
それに気付かないのは、『奇襲攻撃をしようとしている側からみ
る』ということを全くしてこなかったからでしょう。
これは、文化人の怠慢としか言いようがありません。
「相手の立場で考えよ」と説教する連中がいますが、そういう連
中に限って、奇襲攻撃しようとしている側の立場で考えようとは
しないものなのです。
◆攻撃を十分イメージさせる暗号
奇襲攻撃しようとしている側に立って考えると、「トラ、トラ、
トラ」という暗号もおかしいと言わざるを得ません。
なぜなら、この暗号は、相手に攻撃を十分にイメージさせる言語
表現が使われているものになってしまっているからです。
まず「トラ」ですが、これは単純に受け取れば、「虎」すなわち
「Tiger」ということになるでしょう。
米国人にとって(も)、虎は、獰猛(どうもう)な肉食獣のはず
です。
ですから、攻撃を十分にイメージさせる表現になるはずです。
そんな表現を、攻撃前に送信する暗号に使うなんて、バカとしか
言いようがないではありませんか?
「ニイタカヤマノボレ」などと比較してみて下さい。
暗号としてのセンスが無さ過ぎでしょう。
これでは、奇襲攻撃のことを相手に教えているようなものです。
◆三回連呼は煽ったり急(せ)かしたりする時の表現
さらに問題なのは、その「トラ」を「トラ、トラ、トラ」と三回
連呼する暗号になっていることです。
英会話に詳しい人なら、こんな暗号使用には絶対に反対するはず
です。
なぜなら、英会話の世界では、同じ言葉を三回連呼するのは、何
かを煽ったり、急かしたりする時の表現になるからです。
たとえば、「メイデイ、メイデイ、メイデイ!」なんかがそうで
すね。
これは、飛行機に異常が生じて緊急事態になった時にパイロット
が管制官に送信する信号です。
御存知の方も多いのではないでしょうか。
それから、潜水艦が急いで潜水しなければならなくなった時には、
全乗組員に命令を伝える人が「ダイブ、ダイブ、ダイブ!」と言
いますね。
一方、軍用機などの発進や出撃を促す時は、「○○(軍用機など
の名前)、ゴー、ゴー、ゴー!」と言ったりします、
このように、英語圏では、同じ言葉を三回連呼するのは、煽った
り、急かしたりする時なのです。
ですから、「トラ、トラ、トラ」は、「奇襲攻撃、Go、Go、
Go!」の意味にとられてしまう可能性が極めて大なのです。
そんな暗号を、まだ攻撃が始まる前の段階で送信させるなんて、
日本海軍は余程のバカであるとしか言いようが無くなってしまう
のです。
これでは、「米軍さん、早く奇襲攻撃に気付いて下さい!」とお
願いしているようなものです。
わざわざ奇襲攻撃に気付きやすくなるような表現を用いた暗号を
使わせているのですからね。
このように、「奇襲成功」という解読だけでなく、語感も奇襲攻
撃前用の暗号としては全然納得がいかないものなのです。
ということは、解読だけでなく、奇襲攻撃をしようとしていたと
いうことからして全くの作り話だったということでしょう。
「我、奇襲に成功せり…」というセリフも、全くの創作だったと
しか考えられないのです。
◆あまりに英語文化圏的すぎる解読
「奇襲成功」という解読は、映画のあのシーンを盛り上げるのに
はピッタリなのかもしれません。
また、「奇襲攻撃、Go、Go、Go!」という解読は、極めて
英語文化圏的な解釈(『読』の誤字ではありません。念のため。)
であり、英語圏の人や英語かぶれのニッポン人には自然なものに
感じられるのかもしれません。
ですが、この暗号を使用したのは、戦前の日本人です。
ですから、ここから先は、戦前の日本人の言語感覚で解読してみ
ようと思います。
◆危険なもの
まず「トラ」の意味ですが、これは単純に『虎』で良いでしょう。
むしろ問題は、『虎』が何を表しているのか(何のたとえなのか)
ということです。
『虎』は、日本人にとっても恐い存在だったはずです。
『虎穴に入らずんば、虎子を得ず』という諺(ことわざ)があり
ますでしょう。
ま、もともとは中国の諺だったようですが、日本でもお馴染みの
諺だったはずです。
で、やはり、危険なものの象徴となっています。
また、今でも「あの人は酒を飲むと、虎になる」という言い方を
します。
ですから、『トラ』は恐いもの、危険なものを意味しているとみ
て良いと思います。
◆外国のもの
さらに、もう一つ、気付かなければならないことがあります。
それは、虎は日本の自然界に棲息しない生き物であるということ
です。
加藤清正の虎退治の話は、朝鮮出兵の時の話だそうです。
ですから、虎は外国の生き物となるわけです。
つまり、「トラ」は、外国のものを意味していると考えられるわ
けです。
以上のことから、「トラ」は『外国の危険なもの』と考えられる
のです。
◆数や頻度の多さを表す少々暗い表現
では、三回連呼は、どうでしょうか?
それは、数や頻度の多さを表すと考えられます。
たとえば、行楽日和で、どこも人でいっぱいの時、「どこへ行っ
ても、人、人、人である」といった表現をしますでしょう。
また、田舎をドライブしていて景色に退屈した時、「どこまで行
っても、山、山、山だ」といった表現をしませんか?
大抵、あまり嬉しくない時に使う表現ですよね。
「○○ばかり」とか「○○だらけ」といった感じが込められた表
現です。
というわけで、「トラ、トラ、トラ」は、「トラが沢山」とか、
「トラだらけ」という意味にとれるわけです。
以上のことから、「トラ、トラ、トラ」は、「危険な外国のもの
がいっぱい」とか、「外国の危険なものだらけ」といった意味に
とれるわけです。
◆「トラ」はハワイの米軍のことだった
では、「危険な外国のものがいっぱい」とは、具体的にどういう
意味なのでしょうか?
「危険な外国のもの」とは、何?
それは、その時の航空部隊の立場になって考えると、よくわかり
ます。
航空部隊は、ハワイ上空にいたのです。
ということは、いつ米軍に要撃・迎撃されてもおかしくない空域
にいたということでしょう。
そんな航空部隊にとって「危険な外国のもの」といえば、ハワイ
の米軍でしょう。
つまり、「米軍がいっぱい」、「米軍だらけ」だったわけです。
◆「危険空域に入った」が正解
以上のことがわかれば、正解もわかるはずです。
つまり、「トラ、トラ、トラ」の本当の意味は、「危険空域に入
った」という意味だったのです。
先ほど挙げた諺「虎穴に入らずんば、虎子を得ず」で言えば、ま
さしく「虎穴に入った」ということなのです。
ならば、「トラ」すなわち「危険な外国のもの」がいっぱいなの
は当然でしょう。
場面と、暗号を送信している人たちの立場とを考えれば、この解
読に矛盾は無いはずです。
◆牽制説に相性ピッタリな暗号
こうしてみると、この新しい解読結果は、牽制説(誤爆説)に相
性ピッタリなものであることがわかるでしょう。
日本軍の司令部は、航空部隊に攻撃させる気が無かった。
航空部隊は、牽制作戦をさせられていた。
そして、いつ米軍から要撃・迎撃されるかわからない空域に入っ
た。
眼下には、危険な存在となる米軍が、わんさかいる。
なので、そのことを意味する暗号=「トラ、トラ、トラ」を送信
したのです。
ちなみに、この「トラ、トラ、トラ」は、米国人には危機感を抱
かせる効果が期待できます。(先ほど述べたように。)
ですから、牽制の効果が高まることになるわけです。
こうしてみると、ものすごくよく考えられた暗号であったことが
わかるでしょう。
ある意味、「ニイタカヤマノボレ」よりも暗号センスに長けた暗
号であるとさえ言えるほどなのです。
以上のことがわかれば、牽制説が暗号の問題からも正しいという
ことがわかると思います。
「トラ、トラ、トラ」暗号送信は、牽制説ではプラスとなること
になりますし、故意説では(既に指摘したように)マイナスにし
かならないことなのです。
ならば、どちらが正しいかは明白なのではありませんか?
◆「トラ、トラ、トラ」送信時までは作戦通りだった
さて、「トラ、トラ、トラ」の意味が「危険空域に入った」の意
味なら、これを送信した時点までは、牽制作戦は順調に進んでい
たということになりますよね。
で、問題は、この後です。
この後、何かが起こったのです。
司令部が全く想定していなかった何かが…。
それにより、航空部隊は誤爆へと暴走してしまったのです。
おそらく、そのことを知った南雲長官や山本五十六、東條英樹は
真っ青になったことでしょう。
『取り返しのつかないことになってしまった』と。
それはともかく、では、何が起きたのでしょうか?
何が航空部隊を誤爆へと暴走させたのでしょうか?
それを推理するためには、航空部隊の人たちの心理を考えるのが
一番であるはずです。
◆かなりの緊張状態だったはず
まず考えられるのは、航空部隊の人たちが、かなりの緊張状態に
あったであろうということです。
いつ米軍から要撃・迎撃されるかわからない空域にいるのですか
ら。
しかも、こちらからは攻撃できない。
本部からの新たな命令(攻撃命令)があるまでは。
ならば、かなりの緊張状態であったとしても、少しも不思議では
ないでしょう。
で、緊張状態にある時は、暴走しやすい状態になっているもので
す。
とてもピリピリとした状態になっているでしょうからね。
一般市民の場合ですと、ちょっとしたことで暴動やパニックが起
きやすくなっている状態です。
余裕が無くなり、冷静さが期待できなくなる状態です。
ナーバス(神経質)にもなる。
ですから、危険な状態にあったことは事実なのです。
◆トリガーが必要
ですが、航空部隊の人たちは、そんなことだけで暴走するような
精神力の弱い人たちではなかったはずです。
誤爆に暴走してしまったのは、誤爆に導くようなトリガー(引き
金)や導火線となることがあったからです。
というか、誤爆は暴走だったのではなかったのです。
「暴走」という言い方は、牽制作戦を支持する者の立場での表現
にすぎません。
さらに、「誤爆」についてでさえ、そうです。
真珠湾を攻撃した航空部隊の人たちは、中央からの命令を忠実に
実行した気になっていた可能性が極めて高いのです。
全ては、トリガー(となったこと)のせいなのです。
◆航空部隊が待っていたもの
では、トリガーとなったのは、一体、何だったのでしょうか?
それを推理するには、航空部隊の人たちの心理を、さらに読んで
みるのが一番です。
彼らは、危険空域にいました。
そのような場合、何かを待つはずです。
それは、中央からの指示です。
『これからどうすれば(どう行動すれば)良いのか』を教えてく
れる命令です。
それを待っていたのです。
そんな心理状態になっている人たちを『確実に』攻撃に走らせる
ことができるものといったら、一体、何でしょうか?
それは、「これは本部から我々に下された命令だ」と航空部隊の
人たちが思い込んでしまうような攻撃命令の無線通信ではありま
せんか?
それ以上のものは、まず考えられないでしょう。
でも、本部からは、そんな無線通信は送信されていないはずです。
そんなことをしたら、勝利の方程式たる『避米排英戦略』が台無
しになってしまうからです。
では、誰(どこ)が送信したのでしょうか?
これには、複数の可能性が考えられます。
そうした話は、第6回以降にする予定です。
それまで、どうかお待ち下さいませ。
* * *
次回、第5回は、全く別の観点から、故意説はあり得ず、牽制説
しかあり得ないことを示したいと思います。
と同時に、航空部隊が誤爆に暴走したのは、謎の怪電波のせいで
ある可能性が高いことを、極めて間接的な証拠ではあるが物理学
的証拠ではある証拠を示すことで論じてみたいと思います。
題材となるのは、水中からの奇襲攻撃部隊であった(ことになっ
ている)『特別攻撃隊』をめぐる話です。
おたのしみに。
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