【くたばれ!友情論】 vol.19


◎アニメと友情論<その1>

 アニメの世界では、友情は絶対的正義・真理とされていますよね。
 でも、現実の世界では、はたして、そう言いきれるでしょうか?
 幼い子供でもない限り、自信・確信をもって「イエス」と答えら
 れる人は、そうはいないでしょう。
 やはり、アニメのようなわけにはいかないですよね。
 そこで、今回から、「アニメと友情論」というテーマを取り上げ
 てみようと思います。

 んで、今回と次回は、「なぜ、アニメの世界では、友情論はうま
 くいくのか?」という謎に迫ってみようと思います。


●恐るべき構図

 たとえば、よくある「ヒーロー・ヒロインもの」を見ると、次の
 ような、お決まりの構図があるものです。

  A.主人公の友だち=味方=正義

  B.主人公の友だちでない者=味方じゃない=敵=悪

 この二種類の人間たちが、必ず存在します。
 つまり、人間が、恐ろしいほど単純に分類されているのです。

 そして、何より注目すべきは、主人公の友だちでない者は悪であ
 るとされている点です。
 友だちじゃないから、友情がない。
 友情のないものは、絶対悪。
 逆に、主人公の友だちは、友情があり、絶対的善。
 これが、友情がイメージ的に正義やら真理やらと結び付けられて
 しまう要因でしょう。

 一方、視聴者側は、主人公を応援したがるもの。
 だから、上のような押し付けがましい構図に、疑問を抱かない。
 そのために、自分が友情論に洗脳されている事実にも、気が付か
 ない。

 結構、怖いです、アニメってやつは。


●天動説的人間分類

 では、「スポ根もの」の場合は、どうでしょう?
 こちらは、いくらなんでも、正義とか悪とは言えませんね。
 でも、

  A.主人公の友だち=味方=支え合うべき対象

  B.主人公の友だちでない者=味方じゃない=倒すべき相手

 というように、やはり、単純かつ差別的な構図がしっかりと存在
 しているのです。
 先ほどと同様、やはり主人公中心の分類です。

 そう、アニメの世界では、主人公を中心(基準)にして、人間が
 敵・味方、好かれ役・憎まれ役に、単純に分類されているのです。
 まるで、地球を宇宙の中心と考えようとする天動説のように…。

 これは、いただけません。
 主人公という特定の人間だけを特別視する行為です。
 つまりは選民的な差別の世界ですね。
 現実の世界には、沢山の人間がいるのです。
 ですから、現実の世界で、こんな思想を実践されたのでは、たま
 ったものではありません。


●「戦い」がメイン・テーマ

 友情論がうまくいっているアニメ作品を見ると、そのメイン・テ
 ーマは、どれも「戦い」であることがわかります。
 「戦い」には、味方と敵が必要です。
 だから、友情が極めて重要な要素になってくる、というわけなの
 です。

 ちなみに、「恋愛もの」だって、「戦い」がメイン・テーマなん
 すよ。
 どんなに綺麗ごとを並べようと、あれは、異性をめぐる争奪戦で
 すからね。
 やはり「戦い」なのです。

 現実の世界では、友情は恋愛の障害となることが少なくないので
 すがね。
 アニメの世界では、「戦い」をメイン・テーマにし、そして何よ
 り、主人公を宇宙の中心(笑)に据えることで、逆に「自分を支
 えてくれるもの」にできちゃうわけです。


●まさに毒饅頭

 とはいえ、面白いアニメって、見てると、やっぱり夢中にさせら
 れちゃいますよね。
 で、知らず知らずのうちに、主人公を応援しちゃってるです。
 そのために、何でも主人公中心に見てしまう。

 しかも、「戦い」がテーマになっていると、余計、熱くなってし
 まう。
 だから、冷静にものごとを見ることが、ますますできなくなる。

 アニメは、まさに毒饅頭ですよ。
 ただの娯楽として見るぶんには、害はそれほどでもないんですけ
 どね。
 「ためになる」なんて態度で見ていると、頭が完全にパーになっ
 ちゃいます。

 「俺は違うぅ!」なーんて言い張っている人が、実は一番危なか
 ったりしてー。(笑)

                        (つづく)

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発行者:media
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