【マルクスとアインシュタイン】


◎反エコ(環境)ファッショ特集 【11】

 体調不良のせいで二ヶ月ほど間があいてしまい、申し訳ありません
 でした。

 さて、今回も、「風力発電=無害」論者たちが論拠としている「影
 響消滅理論」を解剖する話です。
 すなわち、影響が薄まっていくメカニズムについての話です。
 前回予告したように、今回は、影響を受ける側の働きを解明してい
 きたいと思います。

 もしかしたら、一見、内容に当たり前すぎると思われる部分が多く
 て、つまらないと思われるかもしれません。
 ですが、当たり前だと思っていることに意外な盲点が潜んでいるも
 のなのです。
 また、当たり前のことが実は理解できていないことも結構あるもの
 なのです。

 自然保護のために、また、科学の健全な発展・啓蒙のために、どう
 か最後(前回、「最期」と記してしまいました。何とも物騒な誤植
 で、すみません。)までお付き合い願います。


●起きて当たり前の現象ではない

 前回説明したように、影響が薄まっていくためには、影響が(増え
 ない形で)広がる必要があります。
 ですが、この『影響が(増えない形で)広がる』という現象は、決
 して『起きて当たり前』の現象などではないのです。
 『影響が(増えない形で)広がる』現象を実現してくれるもの(も
 しくは作用)が存在しなければ実現しない現象なのです。

 そのことがよくわかる例と言えるのが、以前話した『ダムの海岸線
 後退への影響』の話です。
 ダムを造ったら、そこから(河口からも)離れた所の海岸線が後退
 してしまった…という話ですね。

 これは、ダムが出来たせいで、土砂が(海岸線後退が発生した)海
 岸に供給されなくなったことが原因です。
 ですが、「影響消滅理論」が全ての問題において通用するのであれ
 ば、これは何とも奇妙な話ということになるのではありませんか?
 なぜなら、土砂は拡散してしまうことになるので、ダムからも河口
 からも離れた所にある海岸に土砂が供給されることなど、全く期待
 できないことになるはずだからです。
 従って、ダムが出来たぐらいで海岸線が後退することはない…はず
 なのです。

 ところが、実際には、海岸線の後退が起きる。
 それは、ダムが出来る前には土砂が供給されていたからです。
 そして、それは、土砂が拡散していかないから実現することなので
 す。
 では、なぜ、土砂は、「影響消滅理論」が説くように拡散してはい
 かないのでしょうか?

 土砂の拡散という現象とは、土砂が移動する現象(の一種)です。
 ですが、土砂自身には、移動能力が無いのです。
 土砂の移動は、実は、水の流れによって実現することなのです。
 ですから、水の流れが『土砂を拡散させる(ように移動させる)よ
 うな流れ』でなければ、土砂は拡散していかないのです。

 ダムの影響が及ぶケースは、『水の流れが、土砂を拡散させる流れ
 になっていないケース』なのです。
 つまり、土砂を拡散してくれるものが存在しないケースなのです。
 川の水の流れは、土砂を下流へ追いやるだけで、(ほとんど全くと
 言っていいほど)拡散させません。
 さらに、海水の流れも、(このケースでは)海岸線に沿うような流
 れになっているわけです。
 だから、土砂が拡散していかず、故に、ダムが出来ると(土砂供給
 が無くなるため)海岸線の後退が起きてしまうのです。

 このように、『影響が(増えない形で)広がる』という現象は、決
 して『起きて当たり前』の現象などではないのです。
 『影響が(増えない形で)広がる』現象を実現してくれるもの(も
 しくは作用)が存在しなければ実現しない現象なのです。

 ちなみに、(これまた以前話した)プールの水に垂らされたインク
 が広がって薄まってしまう現象は、インクの分子の運動に加えて、
 浸透圧が関わっています。
 ですから、やはり、『影響が(増えない形で)広がる』現象を実現
 してくれるもの(もしくは作用)が必要であるということを示して
 いる例なわけです。


●影響を受け入れる能力が必要

 では、『影響が(増えない形で)広がる』現象を実現してくれるも
 のとは、どういうものなのでしょうか?
 それには、どのような能力が要求されるのでしょうか?

 まず、影響を受け入れる(引き受ける)能力が必要ですね。
 影響を受け入れてくれなければ、『影響』は『影響を及ぼそうとし
 ているもの(もしくは、エリア)』に留まったままで、広がってい
 きません。

 つまり、『影響を受け入れてくれるもの(もしくは、エリア)』に
 『影響』は広がっていくわけです。
 別の言い方をすると、『影響を受け入れてくれるもの(もしくは、
 エリア)』が『影響を受ける側』になるわけです。
 当たり前のことですが…。


●影響を他に及ぼす能力も必要

 さて、影響を受け入れる能力だけでは、影響は広がってはいきませ
 ん。
 影響を受けた所にしか、影響の範囲が限られてしまうからです。

 影響が広がるためには、影響を受けた所が、(自分が受けた)影響
 を他に及ぼさなければなりません。
 ですから、『影響が(増えない形で)広がる』現象を実現してくれ
 るもの(すなわち、影響を受ける側)には、影響を他に及ぼす能力
 も必要なのです。


●影響を受け渡す能力も必要

 影響を受ける側が、影響を受け入れ、なおかつ、その影響を他に及
 ぼすことで、影響が広がっていくことが、これまでの考察によりわ
 かりました。
 ですが、それだけでは十分ではないのです。
 なぜなら、影響が広がる際、影響が増えないことが必要になるから
 です。
 影響が増えてしまうと、影響が薄まっていくことにはなりませんで
 しょう。

 影響が薄まっていくためには、他に影響を及ぼす際、自分が受けた
 影響を、出来るだけ沢山、他に押し付けてやる必要があります。
 つまり、影響を受け渡す能力が必要なわけです。

 別の言い方をすると、自分が受けた影響を他に押し付けるような形
 での『他への影響の及ぼし方』でなければならないわけです。
 さらに別の言い方をするならば、自分の所に影響が出来るだけ残ら
 ないようにするような『他への影響の及ぼし方』でなければならな
 いわけです。
 つまり、得た影響を吐き出してしまうような及ぼし方でなければな
 らないわけです。

 当メルマガでは、こうした働きのことを、以後、「受け渡す」と表
 現することにします。


●影響を受け入れる能力とは矛盾する能力が必要

 影響を受け渡す能力とは、要するに、(影響を受ける前の)元の状
 態に(出来るだけ)戻ろうとする能力のことです。
 でも、よくよく考えると、この能力は、先ほど述べた『影響を受け
 入れる能力』とは矛盾する能力である…ということに気付くでしょ
 う。
 元の状態に戻ろうとするということは、影響を受け入れることを拒
 むということになりかねないことなわけですから。

 では、この矛盾した働きをする能力を実現するためには、どうあれ
 ば良いのでしょうか?


●影響に逆らおうとする能力であれば良い

 そのためには、その能力が『影響に逆らおうとする能力』であれば
 良いのです。
 逆らおうとするだけなら、拒むのとは異なり、影響をある程度もし
 くは一時的には受け入れ(させ)ることが出来ます。

 それだけではありません。
 『影響を受ける側』は、影響に逆らおうとします。
 で、この『逆らい』は、『影響を及ぼそうとする側』にとっては、
 自分が及ぼそうとする影響とは逆の影響となるのです。
 この『逆の影響』のおかげで、『影響を及ぼそうとする側』も(影
 響を受ける前の)元の状態(に近い状態)に戻れることになるので
 す。

 ちなみに、ドミノ倒しのドミノには、この能力がありません。
 だから、倒れたドミノは倒れたままなのであり、故に、影響は増殖
 するだけで、薄まっていってはくれないのです。
 トランプ・ピラミッドのトランプについても同様です。


●決して単純ではない『元の状態』問題

 このように、『影響を受ける側』に『(影響を受ける前の)元の状
 態に(出来るだけ)戻ろうとする能力』があれば、影響が薄まって
 いく形で広がっていくことが実現できるのです。

 ところが、ここで、また、新たな問題が生じてくるのです。
 それも、かなり深刻な問題が…です。
 それは、「『元の状態』とは、一体、どういう状態なのか?」とい
 う問題です。

 この問題の重大さを理解するために、最もわかりやすい例として、
 ドミノ倒しのドミノの状態について考えてみましょう。
 まずは、質問。
 ドミノが立っている状態が『元の状態』なのでしょうか?
 それとも、ドミノが倒れてしまってる状態が『元の状態』なのでし
 ょうか?
 これ、回答に困る質問ではありませんか?

 ドミノが倒れるという影響の及び方について考察する問題において
 は、前者が正解ということになりますよね。
 ですが、ドミノが立っていたのは、人間が立てたからなわけですか
 ら、元は倒れた状態だったと言えます。
 ですから、そうなると、『元の状態』は後者ということになってし
 まうのです。
 はたして、正解はどちらなのでしょう?

 『元の状態』というのが、どういう状態なのか?、決められないの
 では、『元の状態』に戻るも何もないでしょう。
 従って、『元の状態に戻ろうとする能力』も何もあったものではな
 いことになってしまうのです。
 それ故、影響が薄まる形で広がっていくという教義も、無根拠にな
 ってしまうのです。
 つまり、影響消滅理論が通用するための根拠が無くなってしまうの
 です。
 ですから、『元の状態』問題から逃げるわけにはいかないのです。

 というわけで、次回は、この『元の状態』問題に取り組んでみたい
 と思います。
 では、また。


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発行者:media
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