【マルクスとアインシュタイン】


◎反エコ(環境)ファッショ特集 【10】

 今回も、「風力発電=無害」論者たちが論拠としている「影響消滅
 理論」(注:造語。定義については、前回を参照のこと。)を解剖
 する話です。
 すなわち、影響が薄まっていくメカニズムについての話です。
 なぜ、どういうメカニズムにより、影響は薄まっていくのか?
 どうして、影響が薄まっていく場合と、そうでない場合とがあるの
 か?
 そうした謎を解明してみたいと思います。

 はっきり言って、今回の話には当たり前の話が多いと思います。
 ですが、当たり前のことが理解できなかったり、気付かなかったり
 するのが、現代人なのです。
 しかも、この『影響が薄まっていくメカニズム』というものは、意
 外と奥が深いものなのです。
 自然保護のために、また、科学の健全な発展・啓蒙のために、どう
 か最期までお付き合い願います。


●広がると薄まる

 前回指摘したように、エントロピー理論などのような「影響消滅理
 論」は、全ての影響に適用できるわけではありません。
 距離や時間が隔たっても影響が薄まらない場合があるのです。
 ですから、「なぜ、どういうメカニズムにより、影響は薄まってい
 くのか?」ということを調べてみることが絶対に必要なのです。

 では、影響が薄まるためには、どうなればいいのでしょう?
 まず最低限必要なことは、影響が「広がる」ことです。
 影響(の原因となる「もの」もしくは「こと」)は、「広がる」こ
 とにより、薄まっていくのです。

 (前回した話の中で)プールの水に滴下されたインクの話が、最も
 わかりやすいですね。
 滴(しずく)だったインクは、プールの水の中に広がっていくこと
 により、薄まっていくわけです。

 このように、影響は、「広がる」ことにより、薄まっていくわけで
 す。


●増えないことが必要

 では、「広が」りさえすれば、必ず薄まるものなのでしょうか?
 残念ながら、答えは「ノー」です。
 「広がる」だけでは不十分なのです。

 たとえば、インフルエンザやエイズなどの疫病がそうです。
 「広が」っても、薄まりませんでしょう。
 それから、物理の対象ではありませんが、噂や風評がそうです。
 これらなんかは、かえって濃くなっていくことさえありますよね。
 それから、前回話したドミノ倒しやトランプピラミッド崩しがそう
 です。
 影響が「広が」っても、薄まらない場合があるのです。

 では、なぜ、「広がる」ことで、薄まる場合と、薄まらない場合と
 があるのでしょう?
 それは、影響が「増えるか?、増えないか?」で決まることなので
 す。

 薄まる例として、再び、プールの水に滴下されたインクの例を考え
 てみましょう。
 インクは、「広が」っていっても、(インクの)質量や分子の数は
 増えませんよね。
 だから、「広がる」ことにより、薄まっていくのです。

 対して、インフルエンザ・ウィルスなどは、個体数が増えてしまい
 ます。
 だから、「広が」っても、薄まっていかないのです。

 このように、「広がる」ことに加えて、「増えない」ことが必要な
 のです。


●保存則をめぐる御都合主義

 さて、鋭い方なら、この話を聞いて、ある重要な科学法則のことを
 思い出されたのではないかと思います。
 それは、『保存則』です。
 そう、風発マフィアたちが大嫌いな『保存則』です。
 「広がる」ことで薄まるためには、保存則が成り立つ必要があるわ
 けです。

 プールの水に滴下されたインクには、『保存則』が成り立ちます。
 だから、「広がる」ことにより、薄まっていくのです。

 対して、インフルエンザ・ウィルス(の数)には、『保存則』が成
 り立ちません。
 だから、「広が」っても、薄まっていかないのです。

 このように、風発マフィアたちが自己正当化のために振り回してい
 る「影響消滅理論」は、実は、『保存則』に依存している理論なの
 です。
 なんと、呆れたことに、彼らは、全く御都合主義的に、『保存則』
 に依存したり、『保存則』を無視したりしているのです!


●続かないことが必要

 ところで、『保存則』が成り立つ場合、見落としてはならないこと
 があります。
 それは、『増えない』だけでなく、『減(ったり消滅した)りもし
 ない』ということです。
 たとえば、プールの水に滴下されたインクは、増えないだけなく、
 減(ったり消滅した)りもしないのです。

 さて、そうなると、新たな問題が生じてきます。
 それは、影響の蓄積という問題です。
 影響が続いた場合、すなわち、影響の原因となる「もの」もしくは
 「こと」が追加され続けた場合、影響が『減(ったり消滅した)り
 もしない』のなら、影響は蓄積され、濃くなっていってしまう(薄
 まらなくなってしまう)でしょう。
 いわゆる「塵も積もれば山となる」です。
 「塵」は無視できる(「無」とみなせる)ものでしょうが、「山」
 になってしまうと、無視できるものではないはずです。

 プールの水に滴下されたインクの例で説明しますと、インクの滴下
 が一回(一滴)きりなら問題無いのですが、何滴も滴下され続ける
 と、「広がる」ことによって薄まることができたインクの濃度も、
 だんだん濃くなってきて、やがては無視できない濃さになってきて
 しまうのです。
 そうなると、もはや、距離や時間の隔たりがあっても、インクの色
 が消滅しきれなくなってしまうのです。
 つまり、「影響消滅理論」が通用しなくなってしまうのです。

 というわけで、影響が薄まるためには、影響が『続かない』という
 ことも必要になってくるわけです。


●影響を受ける側が関与している

 それにしても、なぜ、インクを滴下し続けると、薄まっていかなく
 なってしまうのでしょうか?
 それは、プールの水の体積が有限だからです。
 「広がる」ことができる範囲に限界がある。
 それ故、ある以上は薄まることができない。
 だから、「塵も積もれば山となる」現象が起きてしまうのです。

 これは、『影響を受ける側(この例の場合で言えば、プールの水)
 が影響を受け入れられる能力には、限界というものがある』という
 ことを示しています。
 そして、この限界のせいで、影響が薄まることに制約が生じてきて
 しまうのです。
 つまり、影響が薄まる現象に、影響を受ける側の能力の限界がかか
 わってくるのです。
 ということは、『影響が薄まる現象には、影響を受ける側が関与し
 ている』ということになりますでしょう。

 このことが最もよくわかる例が、前回話した例のうち、「メッタ刺
 しにされ殺された死人は蘇らない」という例です。
 影響を受ける側、すなわち、『(メッタ刺しにされた人が)負った
 傷を受け入れて(引き取って)くれる人』が存在しない。
 だから、メッタ刺しにされた人が負った傷は消えないのです。(ま
 た、この世の誰の体にも傷は生じない。なぜなら、この世の誰も、
 『影響を受ける側』にはならないから。)

 影響を受ける側が存在するだけでもダメですね。
 たとえば、ドミノ倒しのドミノがそうです。
 「あるドミノ」が倒れると、そのせいで、「別のドミノ」が倒れる
 (倒される)。
 でも、「あるドミノ」は、元の(倒れていない)状態には戻りませ
 んよね。
 影響を受ける側(すなわち、「別のドミノ」)が存在するにもかか
 わらず。
 トランプピラミッド崩しの場合も、同様です。

 このように、影響を受ける側が存在するだけでは、影響は薄まって
 はくれないのです。
 影響を受ける側が影響を受けるだけでは、影響が増えてしまい、影
 響に関して『保存則』が成り立たなくなるため、影響は薄まらない
 ことになってしまうのです。
 影響が薄まるためには、影響を受ける側が、影響を与える側から、
 影響を引き取ってくれる必要があるのです。(別の言い方をするな
 らば、『影響の受け渡し』といったところでしょうか。)

 このように、影響が薄まる現象には、影響を受ける側が関与してい
 るのです。
 ですから、影響が薄まっていくメカニズムを解明するためには、影
 響を受ける側の働きを解明する必要があるのです。

 というわけで、次回は、影響を受ける側の働きを解明していきたい
 と思います。
 では、また。


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発行者:media
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