【マルクスとアインシュタイン】 vol.12


◎マルクス主義の実態(その10)

 (注)初読の方は、まず、vol.1〜11を必ず熟読して下さい。
     → http://mediax.hp.infoseek.co.jp/mm5/bn.htm


●唯物論の盲点

 マルクス主義の最大の特徴の一つに、「唯物論」をウリにしてい
 る点が挙げられます。
 これが科学的な雰囲気を醸し出しており、それ故、多くの人が騙
 されてしまうわけです。

 唯物論という考え方自体は、無神論を前提にする限り、正しいと
 言えます。
 問題は、それが唯物論として正しい理論なのか?、ということで
 す。
 唯物論と言われるものは、古代から存在しますが、その多くが間
 違ったものであったことは、みなさんも御存知でしょう。

 唯物論が目指すのは、物質を根本的存在とし、精神や意識などさ
 えをも物質に還元してとらえることです。
 そして、そのために、一切の現象を、物質的諸条件とその法則性
 のみによって規定しようとします。

 しかし、すでに述べたように、唯物論にも間違った理論はあるの
 です。
 言うまでもなく、誤った唯物論からは、誤った結論しか得られま
 せん。
 ですから、唯物論だからといって、「科学的だ」とか「正しい理
 論だ」などと即断するのは、単にイメージでとらえているにすぎ
 ない、軽薄な行為なのです。


●社会は多体系の複雑系

 さらに、唯物論にはこんな問題もあります。
 それは、たとえ個々のものどうしの間に成り立つ法則が単純でも、
 多数のものが関連し合う問題になると、えらく複雑になってしま
 って、解析が実質的に不可能になり、実用に耐えなくなってしま
 う場合が少なくないということです。
 いわゆる多体系(→複雑系)の問題です。

 そこで、社会のことを考えてみましょう。
 社会は、多数の人間から成り立っています。
 そして、人間は、膨大な数の原子から成り立っています。
 ということは、社会を唯物論的に扱おうとすれば、無数の物質の
 振る舞いを解析しなければならないことになりますね。
 また、そのために、無数の(初期)条件を把握することも必要に
 なってきます。
 現実には、こんなことは不可能です。
 ついでに言うと、社会の外には、別の社会が存在し、これらの影
 響もあるわけですから、解析など実質不可能です。
 ですから、唯物論的に社会をとらえることなど、まず不可能なの
 です。

 つまり、真に唯物論的に考えると、マルクス主義がイカサマ科学
 であることが、すぐにわかるのです。
 それがバレずにすんでいるのは、思想オタクたちに、真の唯物論
 者がいないからです。

 もちろん、多体系の問題でも、ある条件の下では、近似的にとは
 いえ、解析が可能な場合があります。
 それは、たとえば、均一とか一様といった条件が満たされている
 場合です。
 当然のことながら、こうした条件が満たされていない場合は、ダ
 メです。
 そして、そんな条件が満たされるのは、現実世界では、ごく限ら
 れた場合だけなのです。
 余談ですが、学者というものは、そういう単純なもの=理想化さ
 れたもの=非現実的なものばかりを扱いたがる傾向があるものな
 のです。

 ちなみに、「均一」とか「一様」といった条件は、社会科学の分
 野で言えば、まさに「平等」に相当するものでしょう。
 こんなところからも、「平等」が結論ではなく、成立するための
 条件にすぎないことがわかると思います。(vol.10参照)
  → http://mediax.hp.infoseek.co.jp/mm5/10.htm

 以上のように、唯物論的だからといって、それを「科学的」など
 と信じるのは、まことに軽率なことなのであります。
 科学的な雰囲気に騙されてはいけません。


●単純と美

 ところで、唯物論には単純化がつきものです。
 というか、唯物論では、複雑なものを、単純なものの組み合わせ
 によって説明しようとするのです。
 ですから、単純化が唯物論の本質であるとも言えましょう。

 さて、当たり前のことですが、間違った単純化を行えば、間違っ
 た唯物論(の理論)ができてしまいます。
 天動説は、その良い例です。
 ですから、正しい唯物論を構築するためには、正しい単純化を行
 わなくてはなりません。

 ところが、困ったことに、単純化には、これといったルールがあ
 るわけではないのです。
 では、学者たちは何に基づいて単純化を行うのか?、というと、
 それは多くの場合、その人の趣味です。
 そして、それは、その人にしてみれば、美しいものなのです。
 つまり、単純化のルールは「美」なのです。

 「ずいぶんといい加減だなぁ」ですって?
 そう、だからこそ、十二分な検証が必要なのです。
 十二分な検証が行われるのが科学、そうでないのが思想の世界で
 す。
 思想はまさしく創造的な芸術の世界。
 その人の思い込み、こだわり、感覚の世界。

 というわけで、誤った唯物論は、優れた芸術作品なのです。
 多くの人を魅了し、夢中にし、熱狂させるのです。
 下手にケチをつければ、命の保証さえありません。(笑)

 唯物論と美(芸術)…一見、正反対に思えるこの両者は、実は意
 外と結びつきやすいものなのです。
 もちろん、ダブル・スタンダードを好まない人には、分裂症か二
 重構造にしか見えないでしょうが…。


●唯物論と芸術とアインシュタイン

 さて、天才アインシュタインは、典型的な唯物論者でした。
 と同時に、美を尊ぶ芸術系の人間でもありました。
 「単純なものが美しく、故に正しい」と。
 バイオリンの腕前も、かなりのものだったとか。

 そう、論理の世界ではないのです。
 思い込み、こだわり、感覚の世界。
 芸術では矛盾など問題ではない。
 常識に芸術上の価値はない。
 現実的なものは芸術に非ず。
 理解できないのは、お前たちに芸術のセンスが無いからさ!

 芸術の世界では、天才と狂気は紙一重。
 こういうところに、相対論や量子論に始まる近現代物理学の正体
 を解明する鍵があるのです。


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発行者:media
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