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           『科学』という思想信条 vol.4

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 今回から、『火星の人面岩論争』を取り上げます。

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<バイキングの写真>

 『火星の人面岩』そのものは、科学のテーマにするのには必ずしもふさわし
 くないものなのかもしれません。
 ですが、その論争(や批判)となれば、科学のテーマとすることは可能でし
 ょう。
 そこで、これを取り上げたいと思います。

 火星の人面岩論争は、『思想信条』の露骨なぶつかり合いの良い例と言えま
 す。
 つまり、その存在を主張する人たちだけでなく、それを否定しようとする人
 たちもまた、己の思想信条を剥き出しにしているのです。

 まず、とり上げられなければならないのが、バイキングの写真に対する解釈
 です。
 彼らはこれを、
 「光と影のトリック」
 と、一方的に決めつけました。
 もちろん、これが対案としての仮説として提唱されたのなら、問題はありま
 せん。
 否、むしろ、そうした提案は、大いになされるべきでしょう。
 ですが、それを結論としたとなると、話は別です。

 一体、彼らは何を根拠に、あの写真を「光と影のトリック」と結論できたの
 でしょうか?
 そういう可能性は指摘できるとしても、結論するのは強引すぎます。
 この写真だけからは、そう結論するに足る決定的な証拠などは、得られない
 はずです。
 それなのに結論を下すのは、「あれは絶対に顔だ!」と主張するのと、何ら
 変わりがありません。

 結局、人面岩信者たちが人面岩の存在を信じたがっているのと同じように、
 否定論者たちもまた人面岩の存在を否定したがっているだけなのです。
 これは、まさに思想信条の世界に他なりません。

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<マーズ・グローバル・サーベイヤーの宣伝効果>

 もっとも、今となっては、このような問題提起は無視されるのがオチでしょ
 う。
 なぜなら、マーズ・グローバル・サーベイヤーのあまりに鮮明な写真が出回
 っているからです。
 多くのメディアは、こう謳っています。
 「バイキングよりも高性能の最新鋭探査機、マーズ・グローバル・サーベイ
  ヤーが、はるかに鮮明な映像を送ってきた。それが、この写真だ!」
 確かに、公開された写真は鮮明で、しかもそこには『顔』は映ってはいませ
 んでした。
 これにより、人面岩論争は決着がついた、とメディアは断言しています。

 しかし、本当にマーズ・グローバル・サーベイヤーは鮮明な映像を送ってき
 たのでしょうか?

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<カメラが良くても…>

 ここで気付かねばならないことが二つあります。
 一つは、どんな高性能のカメラにも限界があるということ。
 そしてもう一つは、実はこれが何よりも重要な問題なのですが、たとえどん
 なに高性能なカメラを用いても、撮影条件が悪ければ、鮮明な映像など決し
 て得られはしない、ということです。
 ですから、本当に問われなければならないのは、
 「どれだけ高性能の装置を用いたか?」
 ということではなく、
 「実際、どれだけ鮮明な映像が撮影できたか?」
 ということなのです。

 それでは、マーズ・グローバル・サーベイヤーから送られてきた映像は、実
 際にはどうだったのでしょうか?

 注意しなければならないのは、メディアに登場する「はるかに鮮明な映像」
 は、生の映像ではないことです。
 あれは画像処理によって鮮明に見えるよう加工された映像なのです。
 画像処理の威力がどれだけ強力なものなのかは、バイキングの映像から『瞳
 』や『涙のしずく跡』までが再現(?)出来ることからも、明らかでしょう。
 ですから、この写真をネタに議論するのは、ほとんど意味がありません。
 議論の対象とすべきなのは、画像処理前の『生の映像』なのです。
 
 それでは、生の映像の方はどうだったのでしょうか?
 見ると、えらいボケボケの不鮮明なもので、おまけに形が著しく歪んでいる
 のです。
 このことから、マーズ・グローバル・サーベイヤーの映像は、バイキングの
 それと、本当は大差なかったことがわかります。
 「性能の差」という宣伝文句に惑わされて、実態を見失ってはいけません。

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<撮影条件>

 鮮明な映像が得られなかったのは、撮影条件が悪かったからです。
 そもそも、NASAは、この地域を撮影する予定ではありませんでした。
 ですから、まともな映像など得られない条件の下で、撮影が強行されたので
 す。
 ですから、高性能の装置を使いながら、鮮明な映像が得られなかったのは、
 当然のことなのです。

 このことは、上でも述べたように、形が歪んでいたことからも明らかです。
 これは、真上(真正面?)からではなく、かなり無理な角度から撮影した証
 拠です。
 これでは、鮮明な映像など得られるはずがありません。

 ついでながら、このことは別の問題の存在をも示唆してます。
 「はるかに鮮明な映像」の方は、もとの映像と違って、形の歪みが極めて小
 さいですね。
 これは、もとの映像に(少なくとも)座標変換を施した証拠です。
 つまり、この「はるかに鮮明な映像」は、実は、見た目とは別の角度から撮
 影されたものなのです。

 座標変換による再現(?模造?)は、決して完璧なものではありません。
 極端な話、『真横から撮った映像』から『正面から撮った映像』を再現(?)
 するのは不可能です。(隠れてしまった部分は、再現(?)できない)
 マーズ・グローバル・サーベイヤーの映像は、それよりは角度的に好条件な
 のでしょうが、それでも再現(?)に必要なデータが失われている可能性が
 絶対に無いとは言い切れないのです。
 それに、もとの映像が不鮮明なことを考え合わせると、ちっとも好条件とは
 言えなくなるでしょう。
 加えて、「光と影」の問題も絡んでくるはずです。

 以上のようなことから、「はるかに鮮明な映像」を無批判に認めるわけには
 いかないのです。
 したがって、それをネタに人面岩の否定を説くのは、自らの思想信条の強さ
 を世間にアピールすることになるだけなのです。

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<念のため…>

 誤解しないでいただきたいのですが、私は何も人面岩信者たちの肩をもって
 いるのではありません。
 「本当は人面岩が存在するのだ」などと言う気はありません。
 まして、「どこかに陰謀がある」などと言う気は、毛頭ありません。
 私が言いたいのは、批判者たちも信者たち同様、強い思想信条の持ち主であ
 るということです。
 そして、その思想信条を、客観的事実として世間に認めさせるために、様々
 な宣伝手法が用いられるという科学の現実を指摘したかっただけです。

                           (次回に続く)

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発行者   : media
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