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           『科学』という思想信条 vol.27

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 当メルマガを購読していただき、ありがとうございます。
 前回に引き続き、『ダーウィン進化論』について取り上げようと思います。
 なお、今回から購読される方は、このメルマガのvol.14〜26、及び、旧メル
 マガ『隠れオカルティズム』のvol.3〜14を、まず御覧になることをおすす
 めします。

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<記憶のメカニズム>

 前回までに、中間のものをでっち上げてでも、不連続なものを繋げたがるの
 が、人間の習性であることを述べました。
 実は、そうしたことを、人間は生まれた時から、ずっと、無意識のうちに行
 っているのです。
 それは、脳が物事を記憶する際に、です。

 脳が何かを記憶する際、個々の情報(や知識)を、バラバラに、別々に記憶
 していくわけではありません。
 それらを結びつけて記憶していくのです。
 つまり、様々な情報(データ)が、脳の内部で繋げられて、記憶されるので
 す。

 こうした『繋がり』があるからこそ、人間は、自分が必要としている記憶を
 選択的に呼び出すことができるのです。
 もし、そうした『繋がり』が無ければ、必要としている知識や情報が脳に詰
 まっていたとしても、それを得ることはなかなかできないでしょう。

 それに、人間の脳が記憶できる情報の量には限りがあります。
 それ故、何かと関連させなければ、沢山の情報を記憶することなど、そうそ
 うできるものではないのです。

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<ある種の障害>

 ところで、脳の内部の情報の『繋がり』は、無意識のうちに築かれます。
 そのおかげで、たとえば、過去に経験したことのある危険から未然に逃れる
 ことが可能になるわけです。
 この場合、たとえば、危険の予兆となることと、過去の苦痛の感覚との『繋
 がり』が、脳の内部に構築されているわけです。
 それも、無意識のうちに…
 このおかげで、人間は、まだ科学が発達していない時代でも、生き抜くこと
 ができたわけですね。

 ところが、こうした『繋がり』も、場合によっては、ある種の障害をもたら
 すことがあるのです。

 たとえば、機械の異常による事故で死ぬ目にあった人が、それ以後、(機械
 の)油の臭いがするだけで気分が悪くなり、果ては、どうしようもないほど
 の恐怖感に襲われる…といったことがあるのです。
 こういう人の場合、『油−機械−事故−苦痛』という『繋がり』が、脳の内
 部に構築されてしまっているのですね。

 困ったことに、こうした脳の内部に築かれてしまった『繋がり』というもの
 は、なかなか断ち切ることはできません。
 傍目から見れば、「なぜ、そんな連想をするのだろう?」と不思議に思うで
 しょう。
 人によっては、「油は機械が正常に動くために必要なものなんだよ」などと
 主張したくなるかもしれません。
 しかしながら、そんな科学的説教も、こうした障害に苦しむ人には、何の役
 にも立たないのです。
 「誰も、この苦しみを理解してくれない…」
 言われた側は、かえって苦しむだけです。
 それぐらい、一度、脳の内部に築かれた『繋がり』というものは、強固なも
 のであり、そう簡単には断ち切れないものなのです。

 そこで気付いてほしいのですが、脳の内部に、生物間の『繋がり』が構築さ
 れてしまっている人たちも、同じような障害に見舞われるのではないでしょ
 うか?
 何しろ、一度、築かれた『繋がり』を断ち切ることなんて、そうそうできる
 ことではないのですから…

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<連想暗記術>

 脳の内部に築かれた『繋がり』は、簡単には断ち切れません。
 ならば、それを逆手にとって利用すれば、記憶力をアップできるのではない
 でしょうか?
 実際、そういうことは、既に、お受験の世界で実行されています。
 たとえば、『連想記憶術』と言われているものです。

 まあ、何でも良いのですね。
 語呂合わせとかでも…
 みなさんも、受験勉強の際、何かにひっかけて知識を頭に詰め込みませんで
 したか?
 たとえば、こんなふうに…
 『蘇我氏を蒸し殺し、大化の改新−645年』
 『蒸し殺し(むしごろし)』が『645』とひっかけてあるわけです。
 実際に蘇我氏が蒸し殺しにされたかどうか?、なんてことは、どうでも良い
 のです。
 
 つまり、知識や情報を頭に詰め込むには、それらを、バカ正直に、個々に覚
 えようとするのではなく、何か自分に馴染みの深いものに関連付けて覚える
 のが効率的なのです。
 すると、脳の内部で『繋がり』が構築され、覚えたことが忘れにくくなるの
 です。

 それならば、膨大な数(種類)の生物を覚えようとする時も、それらを別々
 に覚えるようとするよりは、連想しやすいように類似性に着目し、関連付け
 て覚える方が利口でしょう。
 何しろ、脳の内部に築かれた『繋がり』は、強固なものなのですから…

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<「脳…」と言えない現代人>

 進化論における系統樹という概念は、確かに、生物学の学習の効率を大幅に
 高めてくれます。
 しかしながら、そこに描かれる生物間の『繋がり』は、本当に確かなものな
 のでしょうか?

 少なくとも、戦後世代の人たちの多くは、小さい頃から進化論を吹き込まれ
 て育ったはずです。
 したがって、脳の内部にも、そうした生物間の『繋がり』が構築されている
 はずです。
 それ故、たとえ間違っていても、あるいは確かな根拠が無くても、そうした
 生物間の『繋がり』を「合理的だ!」と思うことでしょう。

 確かにバラバラであるよりは、繋がっている方が、『体系化』されていると
 言えるかもしれません。
 しかし、その『体系』自体、本当に有意義なものなのでしょうか?
 上で述べた『ある種の障害』に苦しむ人の脳の内部の『繋がり』も、傍目か
 ら見れば、全く非論理的なものに思えますが、本人にとっては絶対的な『体
 系』なのです。
 同じことが、系統樹に固執する健常者にも言えるのではないでしょうか?

 人間の好き・嫌いも、脳の内部に築かれた『繋がり』によるものと考えられ
 ます。
 たとえば、「○○が好き」という人は、○○と、良い思い出とが、脳の内部
 で繋がっているわけです。
 逆に、「○○が嫌い」という人は、○○と、嫌な思い出とが、脳の内部で繋
 がっているのです。
 人間の趣味とか性格といったものは、こうした『繋がり』による『体系』か
 らくるものなのです。

 変質者の異常な趣味や性格も、例外ではありません。
 傍目から見れば「トンデモないこと」でも、本人にとっては確かな『体系』
 なのです。
 したがって、『体系化』されているからといって、それを無批判に賛美・崇
 拝するのは、全く愚かなことと言わざるを得ないのです。

 差別や偏見も、脳の内部の『繋がり』による『体系』に他ならないのですか
 ら…

 いずれにせよ、ここで認識していただきたいことは、進化論(の系統樹とい
 う概念)が、人間の脳の働きに非常によくマッチングしたものであり、それ
 故、それ自体にかなりの洗脳効果があるということです。
 このことに気付けば、やはり慎重にならざるを得ないと思うのですが…

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<念のため…>

 念のため、お断りしておきますが、物事を繋げたがることが、絶対悪だと言
 っているのではありません。
 そういう習性があるからこそ、人間は物事の間に存在する相関性や関連性、
 法則…といったものを推測できるのです。
 というより、それがなければ、そうした命題を解明しようとさえしないこと
 でしょう。
 しかしながら、それによって得られるのは、あくまで推測であって、事実で
 はない、ということを忘れてはなりません。

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発行者   : media
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