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           『科学』という思想信条 vol.16

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 前回に引き続き、『ダーウィン進化論』について取り上げようと思います。
 なお、今回から購読される方は、このメルマガのvol.14〜15、及び、旧メル
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<思わず興奮!?>

 いつだったか、どこかの電話会社のCMで、こんなのがありました。
 力士が何人も土俵に上がって、入り乱れて取り組みを行うのです。
 そして、それを実況している人が、(たしか)「ややこしいんだよ」とぼや
 く…。(ちらっと見ただけなので、細かいところは目をつむって下さい)

 やはり、相撲の取り組みは、1対1がいい、ということですね。
 否、相撲に限らず、どんな勝負事でもそうです。
 1対1の方が、見ている者は興奮する。
 多対多では、ついてゆけず、興ざめしてしまう。
 ごちゃごちゃと複雑な『多対多』より、単純明快な『1対1』の方が断然、
 ウケがいい。

 科学論争を取り上げる場合も同様です。
 いくつもの説を全て真面目に取り上げると、複雑になり、読者や視聴者には
 ウケが悪い。
 やはり、1対1にしぼって話を進めた方が、読者や視聴者は興奮し、熱中す
 る!
 ドラマチックで、ウケがいい…。

 そんなわけで、科学への関心を引こうとする科学関連のメディアは、二元論
 的な取り上げ方をしたがるのです。

 しかしながら、前回も述べたように、『二元論的宣伝術』には、それら以外
 の説が見えなくなる(思いつかなくなる)という、大きな大きな盲点がある
 ことを忘れてはなりません。

 「興奮する方がいい」というのなら、科学なんかよりも、アダルト・ビデオ
 の方がいい、と思うのですが…

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<日本と欧米の違い>

 二元論の中で最も有名なのは、『神 vs 悪魔』という組み合わせでしょう。
 ですから、宗教、特にキリスト教の影響力の強い国では『二元論的宣伝術』
 は極めて効果的だろうと考えられます。

 こうした宗教の影響力というものは、決して無視できない問題です。
 多くの日本人は、欧米における宗教の影響力をほとんど認識できていないよ
 うに、私には思えます。

 欧米における宗教の影響力は、誠に絶大なものがあります。
 政治家も、演説で、「神」という言葉を平気で使いますよね。
 こんなことは、日本では考えられないことです。
 もし日本の首相が、「神」なんて言葉を使ってごらんなさい。
 たちまち、大問題ですよ。
 でも、欧米では、むしろ立派なことのようにされるのです。
 それぐらい、欧米では宗教の影響力が(未だに)強力なのです。

 ヒトラーが政治演説で「神」という言葉を用いていたのを、御存知ですか?

 とにかく、欧米では宗教の影響力が強いので、『創造論』が非常に支持を得
 やすいのです。
 ですから、科学の側としては、これに対抗しうる強力な候補(=学説)が必
 要になってくるわけです。
 そして、そこで選ばれるのが『ダーウィン進化論』というわけです。
 というより、いくつもの説が乱立する状態では、宗教に対抗できないという
 事情があるわけです。
 そんなわけで、最も知名度の高い『ダーウィン進化論』一本にしぼられてし
 まう…というわけです。

 そこへいくと、日本は科学にとって恵まれた国と言えるでしょう。
 なにしろ、宗教の影響力が弱い。
 だから、『創造論』人気も、それほど盛り上がらない。

 そういえば、日本の神様は、生物の創造に、あまり関わっていないのでは?
 仏教に至っては、ほとんど全くと言っていいほど…。
 もともと、日本は、創造論に関心がない国だったのかもしれませんね。

 したがって、何も無理して『ダーウィン進化論』一本だけに候補をしぼる必
 要は無いのです。
 もっと自由な発想で、様々な可能性を追求して良いのです。
 宗教の影響力が弱いという点において、日本の科学界は、欧米の科学界とは
 比較にならぬほど恵まれた環境にあるのです。
 日本の科学界が、無理に候補を一つにしぼらなければならない理由は、どこ
 にも無いはずです。

 ところが、ほとんどの日本人は、欧米の猿真似ばかりやっています。
 事情(の違い)もろくに考えずに…。
 自分たちの恵まれた条件を活かせないとは情けない…。

 欧米への追従や追随だけ…というのなら、科学は、政治の世界と同じですよ
 ね。

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<『始まり』にこだわるのは…>

 ところで、『種の起源』の中の『起源』という言葉ですが、これは要するに
 『始まり』を意味する概念と言えます。
 で、『始まり』にこだわるのは、実は、西洋思想の特徴なのです。
 つまり、いま存在するものとの『関わり』よりも、遠〜い過去の『原点』に
 こだわるところがあるのです。

 これに対し、東洋思想では、たとえば『輪廻』にみるように、あまり『始ま
 り』にはこだわっていません。
 こういうところをみると、やはり科学は、思想や哲学などと決して無関係で
 はないことがおわかりいただけると思います。

 余談ですが、残念ながら、東洋思想というと、とかく神秘主義的なものと受
 けとめられがちです。
 しかしながら、東洋思想は、元来、極めて現実志向の強いものです。
 それが神秘主義的なものになってしまったのは、西洋人が東洋に侵攻して東
 洋文明を破壊し、そのために東洋思想はオカルト的な形でしか存続できなか
 ったからです。
 加えて、東洋思想を西洋に紹介した西洋人たちが、神秘主義志向のある人た
 ちだったことも悲劇の一つです。
 そんなこんなで、東洋思想のイメージは非常に悪いわけですが、それは偏見
 であり、何より東洋思想を正しく理解していない証拠だと、私は思います。

 別に、私は、東洋思想を持ち上げているのではありません。
 また、東洋思想を武器に、ダーウィン進化論を攻撃する気は、毛頭ありませ
 ん。
 ただ、科学と思想との関係の深さというものを知っていただきたかっただけ
 です。

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発行者   : media
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