031-01
吸収委託放出説は、吸収説を改良した(つもりになっている)説であ
る。もっとも、その説明の図は、むしろ、ガス反射説のそれに似て
いると言えるのかもしれない。

031-02
なぜなら、それは、ガスを含む大気が(地表からの)赤外線を乱反射
しているかのように見える図だからだ。『ガスを含む大気が赤外線
を吸収し放出する』とする説なので、そのような図になるわけだ。

031-03
それはともかく、この図の説明によると、ガスを含む大気からの赤
外線の放出は、全方向にされることになっている。したがって、放
出された赤外線の一部は、地表方向へも向かうことになる。

031-04
つまり、この(ガスを含む大気からの)地表方向への赤外線放出によ
って温室効果が生じるのだとしているわけである。しかも、放出の
メカニズムというのが、これまた凝っているのだ。

031-05
というのは、(地表からの赤外線を吸収する)ガスが赤外線を放出す
るのではなく、(地表からの赤外線を吸収しない)大気の主成分であ
る窒素や酸素が赤外線を放出するとしているからである。

031-06
つまり、ガスが(地表からの赤外線を吸収することにより得た)エネ
ルギーを窒素や酸素に受け渡し、赤外線の放出をそれらに“委託”
する形をとっているのである。

031-07
だが、赤外線放出なら、ガスからでも可能なはずである。わざわざ
窒素や酸素に“委託”する必要など無い。実は、この“委託”メカ
ニズムは、都合の悪いことを隠蔽するためのトリックなのである。

031-08
もし(赤外線が)ガスから放出されることにしてしまうと、地表方向
への放出はまず起こらないことが容易にバレてしまう。なぜなら、
エネルギーは高い方から低い方にしか流れないからだ。

031-09
地表が赤外線を放出しガスがそれを吸収する現象が起こるのは、ガ
スよりも地表の方が高エネルギーだからだ。したがって、ガスから
地表方向への赤外線放出は、まず起こり得ないのである。

031-10
ガスからの赤外線放出が起こりやすいのは、むしろ、宇宙へ向かう
方向である。宇宙は、地表よりはもちろん、ガスよりも低エネルギ
ーである。故に、大部分は宇宙へ放出されることになるのだ。

031-11
そうなれば、ますますもって地表方向には放出され得ないことにな
り、期待されるような温室効果は生じ得ないことになる。こうした
ことに気付かれにくくするための“委託”メカニズムなのだ。

031-12
複雑なメカニズムを示されると、多くの人たちは、そちらに関心が
行ってしまう。こうした誘導により、都合の悪いことから人々の関
心を逸らすことを可能にしているのである。

031-13
それにしても嘆かわしいのは、あまりに多くの人が「物質から電磁
波が(非人為的に)放出される時は、どの方向にも等しく放出される
ものなのだ」と思い込んでしまっていることである。

031-14
もし彼らの思い込み通りなら、『光(電磁波)の粒子性』という考え
方は成立し得ない。なぜなら、それは『粒子という微小領域にしか
電磁波の実体は無い』ということを意味する概念だからだ。

031-15
つまり、広がりを否定する概念なのである。したがって、電磁波は
粒子が放出された方向にしか放出されなかったことになるのだ。こ
れでは、「どの方向にも等しく放出され」たことにはならない。

031-16
このように、『光(電磁波)の粒子性』という概念は、『電磁波放出
の度合いが、方向により異なる場合がある』ということを(も)示し
ている概念なのである。

031-17
こうしたことと、エネルギーの流れの方向性(高→低のみ)とを考え
るならば、(温室効果)ガスからの赤外線放出が宇宙へ向かう方向に
大きく偏ることになるということも理解できると思う。

031-18
余談だが、近接作用説を絶対の原理とする現代の物理学のパラダイ
ムにおいては、ミクロの世界の現象には『光(電磁波)の粒子性』と
いう概念無しでは説明できない現象が少なくない。

031-19
それ故、「(電磁波は)どの方向にも等しく放出される」としてしま
うと、それらの現象は説明できないことになってしまうのだ。さら
には、光量子仮説も量子力学も成り立たなくなってしまう。

031-20
実は、電磁波が「どの方向にも等しく放出される」ためには、電磁
波を放出する物体の周囲の状態がどの方向も同じであることが条件
になるのだ。

031-21
ちなみに、ミクロの世界で電磁波放出の方向による偏り(=粒子性)
がよく観測されるのは、この条件を満たさない場合が多いからなの
だが、これは何もミクロの世界に限ったことではないのである。

031-22
つまり、マクロ(のスケール)の世界でも、この条件を満たさない場
合には、電磁波放出の方向による偏りが生じるのである。そこで、
温室効果ガス分子の周囲の状態のことを考えてみて欲しい。

031-23
大気中の温室効果ガス分子の下方は高エネルギーな地表であり、上
方は低エネルギーな宇宙である。よって、この条件は満たされず、
電磁波放出は(宇宙に向かう方向に)偏ることになるのである。

031-24
ここで、是非とも知っておかなければならないことがある。それは
『電磁波の電磁場の場合、静電磁場の場合とは違って、周囲のエネ
ルギー状態(高低)が関係してくる』ということである。

031-25
静電磁場は、電荷や一定の電流等が存在するだけで発生し得る。だ
が、電磁波の電磁場は、誘導により生じる電磁場なので、それらが
存在するだけでは発生しない。

031-26
それらに加えて、エネルギーも必要なのである。このことを理解す
るには、たとえば、磁石と導線(コイル)を用いた電磁誘導の実験の
ことを思い出すと良いだろう。

031-27
この実験では、導線(コイル)が磁石に対して相対運動すると、誘導
により電場(→起電力)が生じる。つまり、相対運動が無ければ、こ
の電場は生じないのだ。たとえ磁石がどんなに強力なものでも。

031-28
一方、運動があれ(無けれ)ば、運動エネルギーもある(無い)ことに
なる。従って、以上のことから、『エネルギーが無ければ、この電
場は生じない』と言うことが出来ることになるのである。

031-29
しかも、この電場が生じるために必要な(運動)エネルギーは、相対
運動におけるエネルギーである。それ故、磁石に運動エネルギーが
あっても、この電場が生じるとは限らないのだ。

031-30
事実、導線(コイル)が磁石と同じ速度で運動する場合は、この電場
は生じない。そして、ここで気付いて欲しいのは、この場合は導線
(コイル)にも運動エネルギーがあることになるということである。

031-31
ここで、話を分かりやすくするために、磁石と導線(コイル)は同じ
一方向にしか運動できず、しかも両者の質量が同じである場合を考
えてみることにする。

031-32
すると、この電場は、導線(コイル)の運動エネルギーが磁石の運動
エネルギーと等しい場合には生じず、等しくない(高低差がある)場
合に生じることになる。

031-33
それ故、「この電場の発生には、導線(コイル)のエネルギー状態が
関係してくる」と言うことが出来ることになるのである。そして、
導線(コイル)は、磁石の「周囲」にあるもの(の一つ)である。

031-34
それ故、「この電場の発生には、周囲のエネルギー状態が関係して
くる」と言うことが出来ることになるのである。そして、「この電
場」は、「誘導によって生じる電場」である。

031-35
以上の話から分かるように、磁石と導線(コイル)を用いた電磁誘導
の実験は、『誘導によって生じる電(磁)場には、周囲のエネルギー
状態が関係してくる』ということを(も)教えてくれるのだ。

031-36
そして、こうした例から、大気中に含まれる(温室効果)ガスから放
出される赤外線の電磁場の場合もまた、周囲のエネルギー状態が関
係してくるのだということが、お分かりいただけると思う。

031-37
一方、磁石と導線(コイル)を用いた電磁誘導の実験では、『磁石と
導線(コイル)』というように、能動側・受動側の区別は固定的であ
った。だが、赤外線放出の場合は、そうではない。

031-38
たとえば二つの物体AとBとがあった場合、Aが能動(電磁場を発
生させる)側でBが受動(電磁場から作用を受ける)側となることも
あれば、Bが能動側でAが受動側となることもあるわけだ。

031-39
つまり、Aも、Bも、『磁石と導線(コイル)を用いた電磁誘導の実
験』における「磁石」に相当する能力と「導線(コイル)」に相当す
る能力を両方とも持ち合わせていることになるわけである。

031-40
一方、エネルギーは高→低にしか流れないのだから、高エネルギー
側が能動側になり、低エネルギー側は受動側になる。つまり、赤外
線の電磁場は、高エネルギー側が発生させることになるのである。

031-41
これは、ちょうど、赤外線が高エネルギー側から低エネルギー側へ
放出されることに対応している。そこで次に、今度は、物体が三つ
ある場合を考えてみたい。

031-42
もし三つの物体A・B・Cがこの順番で並んでおり、なおかつ、エ
ネルギー関係が『A>B>C』ならば、赤外線の放出のされ方は、
これまでの話から、『A→B→C』となるはずである。

031-43
以上のことがわかれば、地表からの赤外線がどうなるのかもわかる
と思う。すなわち、A(に相当するの)が地表、Bが大気中に含まれ
る(温室効果ガスと呼ばれる)ガス、Cが宇宙である。

031-44
つまり、ガスは、地表から宇宙への赤外線放出の中継点ぐらいの存
在でしかないことになるのだ。これでは、温室効果は生じないこと
になってしまう。

031-45
そこで吸収委託放出説では、赤外線がガスから放出されないように
するために、ガスがエネルギーを窒素や酸素に受け渡して赤外線放
出の役を委託するメカニズムをでっち上げたのである。

031-46
もちろん、赤外線放出を他の物質にやらせることにしたところで、
放出方向の問題が解決するわけでもない。だが、世間の関心をこの
問題から逸らすことは出来るのである。

031-47
さらに、吸収委託放出説では、世間の関心逸らしをより確実なもの
にするために、『(分子の)内部のエネルギー』なる概念をでっち上
げている。

031-48
これは、「ガスに吸収された赤外線のエネルギーが、どのような形
態の運動のエネルギーに変換されてガスのものになるのか?」とい
うことを説明しようとするものである。

031-49
それによると、吸収された赤外線のエネルギーは、ガスを構成する
原子の多様な運動のエネルギーに変換されることになっている。そ
の結果、ガスから赤外線が放出されることはなくなるというのだ。

031-50
だが、原子は、他の原子との結合子役となる電子を放出しているの
で、電気的に中性ではなく、故に、運動すると電磁波(赤外線)の放
出現象が(やはり)起きてしまうのである。

031-51
そもそも、原子が運動しても赤外線が放出されないのなら、ガスか
らエネルギーを受け渡され赤外線放出を委託された窒素や酸素だっ
て、赤外線を放出しない(できない)はずだ。

031-52
それに、この『内部のエネルギー』論では、『原子よりも質量が桁
違いに小さい(結合子役の)電子が電磁波(赤外線)のエネルギーを吸
収してしまう』という重大な問題を無視している。

031-53
この問題については、以前、027-20〜50で指摘した通りである。つ
まり、赤外線のエネルギーは、電子がその大半を分捕って分子外に
放出してしまうため、原子にはほとんど吸収されないのだ。

031-54
これでは、原子が(多様な)運動をするために必要なエネルギーを十
分に得ることは、とても出来ない。これは、『内部のエネルギー』
論にとって非常に都合の悪いことのはずである。

031-55
ここで、ちょっと脱線。結合子役の電子が赤外線を吸収すれば、そ
のエネルギー状態が変化するため、結合子の状態が変化することに
なり、その影響で、原子の運動状態が変化することになる。

031-56
なぜなら、原子は(絶対零度でもない限り)もともと運動するもので
あり、一方、結合子は原子を束縛しようとするものだからである。
『内部のエネルギー』論は、こうした事情をすり替えているのだ。

031-57
つまり、『赤外線吸収→結合子状態変化→原子運動状態変化』であ
ることを、『原子が赤外線を吸収して(多様な)運動をするようにな
る』とすり替えているのである。

031-58
そもそも、『内部のエネルギー』論の言うような原子の運動へのエ
ネルギー変換の様など、小さすぎて観測・検証・確証できるわけが
ない。所詮は、理論による想像の産物にすぎないのだ。

031-59
要するに、『内部のエネルギー』論は、『全く御都合主義的にでっ
ち上げられた、エネルギーに関するダブル・スタンダードな二つの
不可逆変換』のうちの一つに関する教義だったわけである。

031-60
ちなみに、ここで言う二つの不可逆変換とは、CO2に関する『赤外
線→原子の運動』と、窒素や酸素に関する『原子の運動→赤外線』
のことである。

031-61
確かに、窒素や酸素では『赤外線→原子の運動』という変換はCO2
のようには起こらない。だが、それは、CO2で『原子の運動→赤外
線』という変換が起こらないことを証明する証拠とは言えない。

031-62
ここで、訂正とお詫びをしておきたい。031-60と031-61の「CO2」
は、どれも「(温室効果ガスと呼ばれている)ガス」とするのが適切
である。CO2だけが「温室効果ガス」というわけではないで。

031-63
話を「二つの不可逆変換」に戻そう。二つ目の不可逆変換(窒素や
酸素に関する『原子の運動→赤外線』)にも、「原子はどうして運
動エネルギーを得ることが出来るのか?」という疑問がある。

031-64
窒素や酸素は(温室効果)ガスのようには赤外線を吸収したりはしな
い(∴原子は運動するために必要なエネルギーを得ない)ことになっ
ているのだから、これは重大問題のはずである。

031-65
この問題について吸収委託放出説は『気体分子の熱運動による分子
どうしの衝突により、(温室効果)ガスからエネルギーが受け渡され
る』と釈明しているが、これは相当無理のある理屈である。

031-66
なぜなら、受け渡されることになっているエネルギーが、(温室効
果)ガスの分子の運動のエネルギーではなく、分子における原子の
運動のエネルギー(すなわち『内部のエネルギー』)だからだ。

031-67
衝突という一瞬の、しかも接触した所でしか作用が生じない現象に
よって、そのような形態のエネルギーを受け渡すことは、ほとんど
不可能である。

031-68
しかも、エネルギーは、窒素や酸素の分子にではなく、原子に受け
渡されなければならない。そんな器用な芸当は、分子どうしの衝突
では、まず出来ない。

031-69
これが固体の混合物での話とかいうのなら、まだ望みはあったのか
もしれない。固体なら、分子はかすかに振動する程度にしか動かな
いし、分子どうしは近接しているからだ。

031-70
だが、気体の場合は、分子は自由に飛び回るのだから、望みはまず
無い。このように、吸収委託放出説はインチキだらけのニセ科学な
のである。かくして、温室効果説は全滅ということになるのだ。

031-71
なぜ『クライメートゲート事件』で暴露されたような不正をしでか
すのか? それは、温室効果説を証明するデータが得られないから
である。理論がインチキなら、そうなるのは当然であろう。

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