022-01
さて、ここからは、再び(更に)、陸で発生する寒気に関する話をする。まずは、当たり前すぎることであるにもかかわず、多くの人がその重要性を理解していないことからお話ししたい。

022-02
寒気(空気)の質量は、無限大ではない。むしろ、非常に小さい。これは、寒気というものが、位置や運動状態が非常に変わりやすいものであることを意味する。

022-03
また、寒気団は、剛体ではない。気体の集まりである。これは、寒気団というものが、形が非常に変わりやすいものであることを意味する。

022-04
以上二つのことから、陸で発生した寒気の分布状態(位置や移動速度や分布形態など)は非常に変わりやすいものであるということが分かる。そして、このことが、予測不可能性に関係してくるのだ。

022-05
寒気は低温(∴低内部エネルギー)ゆえ、「冷ます」とか「(物質の運動を)抑える」といったイメージが強い。だが、自然は、そんなイメージだけで説明出来るような単純な世界ではないのだ。

022-06
前にも説明したように、寒気には、自分よりも高温のものと出合うと、相手が有している熱エネルギー(の一部)を運動エネルギー(風力エネルギー)に変換する能力がある。

022-07
つまり、寒気自身は低エネルギーだが、自分よりも高エネルギーである他者の(内部)エネルギーを放出させることで、運動エネルギーを生じさせるのである。

022-08
ここで、地面に空いた穴のことを考えてみて欲しい。低地でも、穴に落ちると、(落下の)運動エネルギーが生じるはずだ。穴(の底)は位置エネルギーが地面よりも低いにもかかわらず。

022-09
(運動方向が逆の例ではあるが)このように、低エネルギーなものは、他者のエネルギーを利用して、運動エネルギーを生じさせることが出来るのである。寒気もそうで、空気を動かす能力があるのだ。

022-10
しかも、広い範囲を覆ってしまう極地の寒気よりも、小さいがゆえに他者と接しやすい移動性の寒気団の方が、空気を動かす能力が大きい。陸で発生する寒気が重要なのは、そういうわけである。

022-11
寒気は、空気を動かす原因となるものである。それでいて、(既に述べたように)質量無限大の剛体ではなく、分布状態が非常に変わりやすい性質のものでもある。この点に注目していただきたい。

022-12
運動の原因となるものの状態が変わってしまうと、作用→加速度→速度→位置と、その先の全てが変わってしまう。それ故、速度や位置の予測計算をやり直さなければならなくなる。

022-13
よって、『運動の原因となるもの』が『状態の変わりやすいもの』である場合は、速度や位置の予測計算を無限回やり直さなければならなくなる。だが、現実的には、そんなことは不可能である。

022-14
したがって、速度や位置は予測不可能ということになる。以上のようなわけで、陸で発生した寒気が原因で生じる空気の運動(の速度や位置)は、予測不可能になるのである。

022-15
一方、空気(大気)の運動は、気象を大きく左右する。このため、空気の運動が予測不可能なら、気象も予測不可能になる。こういうわけで、陸で発生する寒気は予測不可能性をもたらすのである。

022-16
さらに、陸で発生する移動性の寒気が起こす空気の運動は、地表にいる人間にとっては、かなり突発的に起きる現象となるため、天気を突然ガラリと変えてしまうものとなる。

022-17
このため、天気は変わりやすく不安定なものとなり、しかも、その変化は極端なものとなる。このように、陸で発生する寒気は、気象の予測不可能性や不安定さや極端化の原因となるのである。

022-18
もうお気づきのように、これら(気象の予測不可能性や不安定さや極端化)は、世間では「地球温暖化(人為的CO2温室効果)の影響による異常気象」と誤解されていることである。

022-19
これら(気象の予測不可能性や不安定さや極端化)は、季節の変わり目に起きるのなら、別に「異常」なことではない。むしろ、季節が移り変わるために必要なことであるとさえ言える。

022-20
化学反応が活性(遷移)状態を経て進むように、季節の移り変わりもまた、大気の状態が不安定な活性状態を経て進む。そうした活性状態を実現するのが、陸で発生する寒気なのである。

022-21
安定していたのでは、(季節の移り変わりのような)大きな変化は起こりにくいものだ。不安定になることにより、大きな変化が起こりやすくなるのである。

022-22
地球上には、水という『温度の変化を抑制する(温度を安定させる)物質』が豊富に存在する。それ故、日照時間や光量が少々変化したぐらいでは、季節のハッキリとした移り変わりは起きない。

022-23
そんな水による安定状態を『空気を動かす能力』により打ち破り、さらには、それ自体の温度分布により大きな温度変化をもたらすのが、陸で発生する寒気なのである。

022-24
ここで復習しておくと、陸で発生する寒気は、その発生時間の長さの変化により、移動先を冷やす時間の長さを変化させることになり、それにより気温(季節)の変化をもたらすことになるのである。

022-25
それ故、陸での寒気の発生時間の傾向の年変化を知っておく必要がある。そこで、まず、わかりやすいように、雲(水蒸気)の影響などを無視した単純化されたモデルで考えてみることにする。

022-26
陸(地表)の温度は、太陽光線による加熱が起こらない時間帯、すなわち、熱エネルギーが宇宙に逃げるだけである時間帯である『夜間』に、大きく低下する。

022-27
一方、寒気は、空気が陸(地表)に冷やされることにより発生する。したがって、夜の時間が長(短)くなると、空気が冷やされる時間も長(短)くなるので、寒気の発生時間も長(短)くなることになる。

022-28
すると、一日あたりの寒気の発生量が多く(少な)くなり、発生する寒気団のサイズが大き(小さ)くなるので、移動先を冷やす時間が長(短)くなる。

022-29
冷やされる時間が長(短)くなれば、一日の平均気温は下(上)がる。以上のようなわけで、夜の時間が長(短)くなってくると、気温が低(高)くなっていくことになるのである。

022-30
このように、季節の移り変わりというものは、陸で発生する寒気の変化により起きるのである。だからこそ、気温などが急に変化したり、天気が荒れたりするのである。

022-31
たとえば、「女(男)心」にたとえられる「秋の空」は、まさしく、陸で発生した寒気(団)が次々と移動して来ては去っていくことにより、天気がめまぐるしく、しかも極端に変わる現象である。

022-32
ところが困ったことに、気圧原理主義が支配している天気予報の世界では、陸で発生した寒気のことは一切触れられず、代わりに「移動性の高気圧」という表現が用いられるのである。

022-33
これでは、陸で発生する寒気の重要な働きが全く見えてこない。また、それ故に、「秋の空」が、夏から冬へ移り変わるために必要な過程であるということの重要性も、全く見えてこない。

022-34
単に太陽から受けるエネルギー量が変化するだけなら、「秋の空」などという過程は不要なはずである。現に、日変化には、「秋の空」のような過程は(一般的には)存在しない。

022-35
それどころか、太陽から受けるエネルギー量が変化する時間帯には、「夕なぎ(さらには、朝なぎ)」という、「秋の空」とは対照的な過程が存在する場合が少なくない。

022-36
このように、太陽から受けるエネルギー量の変化だけでは、「秋の空」という過程は説明できないのだ。そこで関心をもっていただきたいのが、「夕なぎ」・「朝なぎ」ではない時間帯である。

022-37
そうした時間帯には、陸風または海風が吹く。これらは、海と陸との間の比熱(冷えにくさ・温まりにくさ)の違いにより生じる温度差によって起こる空気の運動である。

022-38
これら二種類の風のうち、ここで特に関心をもっていただきたいのが、陸風である。これは、地表の温度分布が陸低海高となる夜間に、陸から海へ吹く風である。

022-39
陸風が吹く時、陸では下降気流(海では上昇気流)が生じている。つまり、陸で空気が冷やされ、寒気が発生し、それが海の方へ流れ込み、行く手を冷やしていくのである。

022-40
もっとも、海(水)は比熱が大きく冷えにくいので、寒気は温められて上昇する。すると気圧が下がるので、陸から海へ寒気が次々と流れ込むようになる。こうして、陸風が吹くわけである。

022-41
『陸風』は夜が明けてしまうと吹き止んでしまうが、これとよく似た『冬の季節風』は、これを空間的(地理的)にスケールアップした現象であると考えて良い。

022-42
『冬の季節風』の場合の寒気の発生場所は、『陸風』の場合と比べると、もっと海から遠い、より内陸部となる。その方が、海からの影響を受けにくく、寒気が発生し(続け)やすくなるからだ。

022-43
それ故、大陸のような面積の大きい陸地が必要となる。現に、『冬の季節風』の実体である寒気は、シベリアのような大陸の内陸部で発生する。

022-44
さて、ここで、『陸での寒気の発生を止めてしまう原因となるもの』について考えてみたい。なぜなら、『冬の季節風』は、寒気が途切れずに発生し続けなければ実現しない現象だからだ。

022-45
原因となるもののトップは、日光である。陸地を温めてしまうからだ。そして、日光が照りつけるのは、昼間である。したがって、まず、『昼の時間の長さ』のことが重要になってくる。

022-46
秋、昼の時間が短くなっていくにつれて、陸での寒気の発生が途切れる時間も短くなっていく。そして、冬至に最短になる。高緯度ほど短くなり、極地では(ほぼ)ゼロになる。

022-47
さらに、昼の時間が短くなると重要な働きをし始めるようになるのが、地表を被(おお)い始める雪・氷である。これ(ら)は、日光を反射し、地表が温まるのを阻害する。

022-48
すると、昼間でも寒気の発生が途切れなくなる。すなわち、連続して寒気が発生するようになる。こうして、寒気の発生形態は、塊(気団)状から風状(すなわち、冬の季節風)へと変化していく。

022-49
また、冬至が過ぎて昼の時間が長くなり始めても、地表が雪・氷で被われている間は、寒気の発生は途切れないので、寒気は風状の発生のし方をする。(すなわち、冬の季節風が吹き続ける。)

022-50
やがて、地表を被う雪・氷が解けて消え始めると、再び、寒気の発生が途切れるようになる。こうして、寒気の発生形態は、風状から塊(気団)へと変化してゆき、冷たい季節風が吹く季節は終わる。

022-51
いわゆる春の到来である。地表を被う雪・氷が完全に無くなり、昼の時間が長くなっていくと、寒気の発生が途切れる時間も長くなっていく。このため、発生する寒気団の大きさは小さくなっていく。

022-52
すると、(寒気団の)行く手を冷やす能力が低くなっていくため、気温や海水温が上昇していく。と同時に、温度差の生じ方が小規模化していくため、天候が安定するようになっていく。

022-53
こうして、陸で発生する寒気団は、夏至に最小となり、その影響力も最小となる。ただし、日本では、梅雨の時期となるため、このことが実感しづらい。

022-54
余談だが、日本の梅雨には、オホーツク海で発生する寒気がかかわっている(021-03〜05参照)。季節の変化に富む日本の気候は、周辺で発生・変動する複数種の寒気により形成されているのだ。

022-55
さて、夏至を過ぎると、夜の時間が長くなっていくので、陸で発生する寒気団の影響が(即)大きくなっていきそうだが、海との兼ね合いがあるため、事はそう単純には運ばない。

022-56
海は陸よりも比熱が大きいため、温まるのが遅い。一方、昼の時間がまだ長いため、陸は熱エネルギーを多く蓄える。このため、陸は夜でも海と比べて必ずしも低温とは言えない状況となる。

022-57
こうなると、夜間に陸により冷やされた空気は、必ずしも「寒気」と呼べるほどのものではなくなってしまう。それ故、陸で発生する寒気の影響が極めて小さい時期が(その間)続くことになる。

022-58
その後、(真夏の日差しにより)ようやく海が温まってくると、陸で発生する寒気団の影響が出始めるようになる。この頃あたりから台風の発生が盛んになるのも、その影響によるものである。

022-59
さて、昼の時間が短くなってくると、陸で発生する寒気団の大きさ(と強さ)が増してくる。このため、その影響が強まり、雷が発生しやすくなる。かくして、夏は終わり、秋となる。

022-60
以降は、022-46〜59の繰り返しである。このように、“夜(昼)の時間変化”と“地表を被う雪・氷”とによる『陸で発生する寒気の形態変化』が、気温等の大きな年変化の主要因となるのだ。

022-61
ところが、天気予報などの気圧原理主義の世界では、それを移動性高気圧(秋・春)とシベリア高気圧(冬)によって説明するため、こうした自然のメカニズムが見えてこないのである。

022-62
さて、もし地表から宇宙への熱エネルギーの放出を阻害するものが存在しないのなら、陸では毎日必ず夜が来る度に寒気が発生することになるはずである。

022-63
そして、その規則的な発生(と中断)のし方ゆえに、『夜の時間の長さ』と『発生する寒気団の大きさ』との間に“単純で美しい相関関係”が存在することになるはずである。

022-64
だが、実際には、そうはならない。なぜなら、熱エネルギー放出を阻害する『雲』というものが存在することがあるからだ。これが、寒気の発生を阻害し、その規則性を破壊してしまう。

022-65
このため、実際の『夜の時間の長さ』と『発生する寒気団の大きさ』との間の相関関係(夜の時間:長(短)→発生する寒気団:大(小))は、統計的なものとなるのである。

022-66
もっとも、雲は、寒気の発生を阻害するだけではない。冬、雲が降らせた雪が地表を被うと、日光による陸の加熱を阻害するため、(雲が去った後は)逆に、昼間の寒気の発生までをも可能にする。

022-67
雲は、その他、よく知られているように、昼間、日光を遮ったり、降らせた雨が気化熱を奪う形で、地表の加熱を抑える働きもする。このように、雲の影響(働き)は、多種多様で複雑である。

022-68
とはいえ、地表の温度の変化(変動)を抑えるという点では共通している。それ故、夜間の寒気発生を抑えたり、冬の昼間の寒気発生中断を防いだりする。

022-69
つまり、塊(気団)状の寒気を発生しにくくするのである。ちなみに、冬は、寒気を常時(季節)風状に発生させることで、寒気が塊(気団)状に発生することを防ぐわけである。

022-70
つまり、(陸の上方に位置する)雲は、陸の働きを海のそれに近付けるのである。ちなみに、冬に(雲がもたらす)地表を被う雪・氷は、水面に張る氷に相当するものと言える。

022-71
以上のようなわけで、内陸部で雲が(内陸部としては)十分に多いと、気候は安定するのである。また、そのおかげで、季節感もハッキリとしたものになる。

022-72
逆に、内陸部で雲が少なくなると、気候は不安定になる。気温の乱高下などが起こりやすくなり、季節感がハッキリしなくなってくる。ちなみに、これは、まさしく、近年の気候の傾向である。

022-73
また、内陸部で雲が少なくなると、降雨(雪)が少なくなるので、(内陸部は)乾燥する。これもまた、近年見られる傾向である。乾燥は、氷河の縮小の原因にもなる。

022-74
また、雲が少なくなると、日照の時間や光量が増えるので、永久凍土や氷などが解けやすくなる。これらもまた、近年見られる傾向である。

022-75
こうしてみると、今日、地球温暖化(温室効果ガス)のせいにされている異常や異変は、実は、陸(特に、大陸の内陸部)で雲が少なくなったことが原因で起きていることが分かるだろう。

022-76
では、なぜ、陸(特に、大陸の内陸部)で雲が少なくなったのだろうか? それは、(陸で雲が存在するために必要な)十分な量のH20が海から運ばれてこなくなったからである。

022-77
では、なぜ、十分な量のH20が海から(陸の方に)運ばれてこなくなったのだろうか? それには、大きく分けて二種類の原因が考えられる。

022-78
一つは、H20を運ぶものの能力が落ちたという可能性である。それは、すなわち、風(気流)の“弱まり”や“乱れ”のことだ。風力発電は、直接的にも間接的にも、そ(れら)の原因となり得る。

022-79
もう一つの可能性は、海から運ばれてくる途中で雨等になって落ちてしまうH2Oの量が増えてしまったという可能性である。H2Oを失った乾いた空気では、雲が存在できる状況にはならない。

022-80
この二つ目の可能性については、風力発電は全く間接的にしか関与しない。その主役、すなわち、直接的な主要因となるのは、太陽活動低下などによる宇宙線の増加である。

022-81
宇宙線の増加による影響は、当メルマガのテーマではないが、気象や気候(特に擬似温暖化)について知るのには、大いに役立つ題材である。そこで、次回からは、これの話をすることにする。

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