017-01
よく教科書等に描かれている『風帯が緯線に平行で一定な図』を無批判に見ていると、低緯度・高緯度間の熱交換が、あたかも、スムーズかつ一定・均一に行われているかのように思えてきてしまう。

017-02
そして、そのことから、風帯で(風として)流れている空気の温度や量は一定であるかのように思えてきてしまう。もちろん、こうした思い込みは、いい加減な図が招く錯覚・誤認にすぎない。

017-03
実際には、風帯は蛇行・変動しており、熱交換はスムーズでも一定でも均一でもなく、風帯で流れている空気の温度や量は一定してはいないのである。

017-04
それ故、温度が、平均値よりも、かなり低(高)い空気が流れることがあるわけである。一方、空気は熱を伝えにくいため、こうした空気が低(高)緯度へ流れていっても、すぐには温まら(冷え)ない。

017-05
このため、緯度に不似合いな低(高)温の空気の塊が、かなりの低(高)緯度にまで流れてくることがあるわけである。これが、ここでのテーマとなる『寒(暖)気が乱入する現象』である。

017-06
寒気が低緯度に乱入する現象については、御存知ない方が多いかもしれない。だが、暖気が高緯度に乱入する現象については、多くの方が御存知のはずである。たとえば、台風が、その代表例である。

017-07
台風は、低緯度から暖気の塊が(激しく渦巻きながら)乱入してくる現象なのだ。つまり、低緯度の熱エネルギーが高緯度へ放出される、低緯度・高緯度間の熱交換現象の一種なのである。

017-08
台風は、『低緯度・高緯度間の熱交換が、アナログ的(連続的で滑らか)にではなく、デジタル的(不連続で断続的)に行われることがある』という自然の実態を教えてくれる気象現象なのである。

017-09
さて、(台風のように)暖気の塊が高緯度に乱入することがあるのなら、逆に、寒気の塊が低緯度に乱入することがあっても良さそうなものだろう。実際、それは頻繁に起こっているのである。

017-10
「どれぐらい頻繁にか?」というと、毎日である。台風とは比較にならない頻度だ。これは、考えてみれば当たり前のことで、地球の自転などの影響により温度分布が大きく変化するからである。

017-11
もっとも、寒気の塊の低緯度への乱入は、台風の場合と違って、非常に認識されにくい。その最大の理由は、台風の場合のような派手な気象現象(いわゆる天災)が起こらないからだ。

017-12
低緯度に乱入する寒気の塊は、(台風とは全く対照的に)黒幕的に、極めて重大な影響を気象に及ぼす。その影響とは、上昇気流を発生させたり、その勢いを強めたりすることである。

017-13
低緯度に乱入する寒気(の塊)は、行く手に存在する空気を上昇させる。なぜなら、寒気の方が重いからである。また、寒気自身が海(比熱大)に温められるなどして上昇することもある。

017-14
こうして、低緯度に乱入した寒気の塊は、上昇気流を発生させたり、勢いづけたりするのである。このため、まず、低気圧の発生・発達に強く関与することになる。

017-15
実は、台風も、これにより発生するのだ。単に高温なだけでは、暖気の塊たる台風は発生しない。要するに、低緯度に乱入する寒気の塊が、暖気を塊の形で低緯度から弾き出す格好になるのである。

017-16
あまり良いたとえとは言えないかもしれないが、これは、水(→低緯度)に石(→寒気の塊)を投げ込むと水しぶき(→台風のような暖気の塊)が上がる様に似ていなくもない。

017-17
さて、低緯度に乱入する寒気の塊は、さらに、赤道付近での上昇気流を勢いづけることもする。すると、貿易風が強まり、ラニーニャという地球規模的な気象現象が引き起こされることになるのだ。

017-18
ラニーニャは、南米などでは低温の原因となるが、(東)アジアでは(冬以外の季節では)高温の原因となる。それ故、「(地球)温暖化の影響」と誤解されやすい気象現象をもたらすことになる。

017-19
太平洋の赤道付近では、貿易風により、海水が西へと流される。ラニーニャになる(貿易風が強まる)と、この海流(暖流)の勢いが強まる。すると、様々な『疑似』温暖化現象が起きるのだ。

017-20
赤道付近を西進してきた暖流は、東南アジアの半島や島々に行く手を阻まれる。このため、この暖流の勢いが強まると、まず、東南アジア付近の海域の海水温が上昇することになる。

017-21
すると、同海域(赤道付近)での上昇気流の勢いが増す。この上昇気流は、高緯度へ向い、緯度=30度付近で(「全部が」ではないが)下降する。それ故、この下降気流の勢いが強まることになる。

017-22
この下降気流は、いわゆる中緯度(亜熱帯)高圧帯の一部を成し、(相対的に)高温の風となって地表(海も含む)に吹き出す。つまり、この温風が強まるわけである。

017-23
温風が強まれば、気温も海水温も上昇する。こうして、『疑似』温暖化が実現するわけである。ちなみに、夏には、この温風が吹き出すあたりに、太平洋(小笠原)高気圧が発達する。

017-24
太平洋高気圧からは、夏の(暑さの原因となる)季節風が吹き出す。それ故、ラニーニャになると、この季節風が強まることになり、猛暑・酷暑になるのである。2007年の夏などは、そのよい例である。

017-25
夏のラニーニャは、さらに、全世界に衝撃を与えるような『疑似』温暖化現象を引き起こす。それは、北極海氷を著しく減少させることである。そのメカニズムは、以下の通りである。

017-26
太平洋の赤道付近を西進してきた暖流は、(以前も説明したように)東南アジアの半島や島々によって行く手を阻まれるが、その一部は、アジア大陸(の海岸線)に沿うように(向きを変え)北上する。

017-27
この流れの延長(の一部)が、黒潮(日本海流)である。それ故、ラニーニャになる(貿易風が強まる)と、黒潮の勢いが増す。そして、黒潮の延長である北太平洋海流の勢いが増すことになる。

017-28
すると、太平洋の(相対的に)暖かい海水が、ベーリング海峡から北極海に押し込まれるようになる。そして、暖かい海水は、北極海氷を解かしてしまう。

017-29
こうして、北極海氷は、ベーリング海峡側から扇状に、みるみる(直接的に)解かされ減っていくことになるのである。2007年の北極海氷史上最小騒ぎも、実は、これによるものだったのだ。

017-30
問題の写真をよく見て欲しい。北極海氷は、均一にではなく、ベーリング海峡側から扇状に解けている。これは、温暖化が原因ではなく、ラニーニャ(による温海水流入)が原因である証拠だ。

017-31
ちなみに、暖かい海水の流入は、北極圏の気温上昇の原因にもなる。このように、ラニーニャは、様々な形で、北極圏の『疑似』温暖化現象を引き起こすのである。

017-32
北極圏の例からもわかるように、ラニーニャは地球規模の『疑似』温暖化現象を引き起こすのである。そして、忘れてはならないのは、ラニーニャの原因が、低緯度への寒気の塊の乱入であることだ。

017-33
つまり、低緯度へ乱入する寒気(の塊)が、低緯度に豊富に存在する熱エネルギーを(温風や暖流などの形で)高緯度へ放出させることで、地球規模の『疑似』温暖化が起こるのである。

017-34
そこで、思い出して欲しいことが二つある。一つは、低緯度への寒気の塊の乱入が、(グローバルな熱交換を行う風系である)風帯の蛇行・変動と深く関係していることである。

017-35
そして、もう一つは、ローカルな風(による熱交換→温度差緩和)が、風帯の蛇行・変動を抑えていることである。以上のことから、風力発電の『疑似』温暖化への関与が見えてくるだろう。

017-36
ローカルな風を風力発電に利用してしまうと、風帯の蛇行・変動が酷くなり、低緯度への寒気の塊の乱入→ラニーニャ→『疑似』温暖化が起こりやすくなるのである。

017-37
また、グローバルな風の風力発電利用は、直接的に、風帯を蛇行させることになる。風力発電機は、陸または海岸近くに存在し、陸(と海)の分布以上に、不均一に分布しているからだ。

017-38
このため、(風力発電機が存在しない)海洋部で、寒気の塊が低緯度に乱入しやすくなるような状況を作り出すことになる。こうして、『疑似』温暖化が起こりやすくなるのである。

017-39
さて、ここで説明した『疑似』温暖化現象に対する理解を最も妨げているのが、教科書などに載っている『風帯が緯線に平行で一定な図』であることは、言うまでもない。

017-40
あのあまりに理想化・平均化された図を頭に刷り込まれてしまうと、寒(暖)気の塊という形での熱交換現象が、全く受け入れられなくなってしまう。教育上、あまりに問題がありすぎる図だ。

017-41
ちなみに、低緯度に乱入する寒気の塊は、気象の専門家たちの間では、「極地移動性高気圧(AMP)」と呼ばれている。そして、この呼び方が、また、理解を妨げる原因となるのである。

017-42
低緯度に乱入する寒気の塊は、行く手に存在する空気を上昇させ、その気圧を低下させる。このため、寒気の塊自身は、相対的に気圧が高くなる。だから、「高気圧」というわけだ。

017-43
だが、「高気圧」では、寒気の塊というイメージがわきにくい。また、「極地移動性」は、極地から(低緯度へ)移動してくるというよりは、極地のあたりを移動するというイメージになってしまう。

017-44
このように、「極地移動性高気圧(AMP)」という、あまりにも専門分野向け的な呼び方は、(少なくとも一般の人たちにとっては)理解を妨げる呼び方になってしまうのである。

017-45
ちなみに、気象の専門家たちが「…高気圧」という呼び方をする(好む)のは、彼らが『気圧で議論したがる人たち』だからだ。そして、そのせいか、気圧原理主義者が少なくないのである。

017-46
気圧原理主義者には、とかく物理学から乖離しがちな傾向がある。「気圧」は、決して根元的なものではない。空気の運動等によって生じる、むしろ結果的(産物的)なもの(正確には「状態」)だ。

017-47
つまり、「気圧」は、せいぜい、中間生成物的なものにすぎないのである。そんなものを「根元的なもの」とみなしていたのでは、本当のメカニズムなど見えてくるはずがない。

017-48
気圧原理主義は、半可通の思想である。実際、信者たちは、風が吹く本当の原因(温度差と重力)を知らない。「気圧の差が原因」としか知らない。だから、風力発電の弊害も全く理解できない。

017-49
そして、気圧原理主義と同レベルの半可通思想が、ここでその問題性を指摘した「風帯=均一(緯線に平行)&一定」思想なのである。これが、地球規模の熱交換の真の姿への理解を妨げているのだ。

017-50
均一・一定などというのは、理想化・平均化の産物であって、自然の実際の姿ではない。低・高緯度間の熱交換も、均一・一定ではない。寒(暖)気の塊という形で行われることさえ珍しくないのだ。

017-51
均一・一定などという理想像や統計計算産物に固執するから、地球規模の熱交換の実態が正しく理解できず、そのために『疑似』温暖化のことを「温暖化」と勘違いしてしまうのである。

017-52
余談だが、均一・一定への固執傾向は、マルクス主義の悪平等思想を彷彿とさせる。実際、風力利用推進論者にはマルキストが多いのである。この実態については、いずれ改めてお話しする。

017-53
ちなみに、地理の教科書等では、風帯が緯線に平行には描かれていない場合が、比較的多いようである。地学(理科)は地理(社会科)よりも非科学的(現実逃避的)な科目ということか。

017-54
ところで、環境ペテン師たちは、北極海氷の減少(最小化)の原因を、地球温暖化のせいにしている。北極海氷が、地球温暖化により一部が解けて、回転できるようになったことが原因だ…というのだ。

017-55
北極海氷の回転が、ポンプの働きをし、暖かい海水を引き込むのだ…と彼らは説く。だが、回転で生じるのは遠心力である。遠心力が働く状況で、外側(太平洋側)から海水を引き込めるわけがない。

017-56
こうしてみると、「温暖化→北極海氷回転ポンプ化」説は全くの疑似科学であることが分かるだろう。要するに、彼らは、(直接の)原因がラニーニャである事実を認めたくないのだ。

017-57
以上で、ラニーニャによる『疑似』温暖化についての説明は終わりにする。次に、その逆の現象=エルニーニョによる『疑似』温暖化について説明したいと思う。

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