016-01
風は、熱や水などを運ぶことにより、温度や水分の分布を左右し、気象や気候に影響を与える。問題は、『その影響が、どれぐらいの(広さの)範囲に及ぶのか?』ということである。

016-02
陸海間に吹く風の場合、多くの人たちは、その影響が及ぶ範囲を「局所的」と思っている。だが、それは全くの誤りなのである。陸海間に吹く風の影響は、実は、地球規模の範囲で及ぶものなのだ。

016-03
その理由は、(説明は長くなるが)陸と海の分布のあり方にある。世界地図または地球儀などを見て欲しい。陸と海は、均一には分布していないのだ。

016-04
経度的にも、緯度的にも、陸と海の分布は、大きく偏っている。陸ばかりの所もあれば、海ばかりの所もある。「…大陸」とか「…洋」という概念は、こうした分布の偏りの大きさを示すものだ。

016-05
陸と海の分布の偏りが大きいと、温度分布の偏りも大きくなる。なぜなら、空気は熱を伝えにくいからだ。陸と海とでは、比熱などの物性が異なるため、日照量が同じでも、温度は違ってくる。

016-06
一方、陸と海の分布の偏りが大きいということは、それだけ海(陸)から遠い陸(海)の部分が多いということだ。つまり、相手から離れているために、温度が同じになりにくい(∴分布が偏る)のである。
016-07
こうした陸と海の分布の偏りから来る温度分布の偏りは、地球規模の風系に重大な影響を及ぼすことになる。なぜなら、同じ緯度でも、温度が異なってくることになるからだ。

016-08
地球規模の風系と言えば、(低緯度側から)貿易風・偏西風・極偏東風のトリオがある。これらが、バケツ・リレーのように、低緯度の熱を高緯度へ運ぶために、高・低緯度間の温度差が緩和される。

016-09
貿易風帯・偏西風帯・極偏東風帯は、しばしば、緯線に平行な帯状の形に描かれている。だが、これは、あなりに単純化しすぎた大雑把すぎる不正確な図なのだ。

016-10
実際の風帯は、もっと複雑に曲がりくねっている。しかも、時間の経過とともに、その形状が変化するのだ。そして、その主たる原因となるのが、陸と海の分布の偏りなのである。

016-11
風帯が緯線に平行になるためには、同緯度での風の吹き方が同じにならなければならない。そして、そのためには、同緯度での温度分布が同じにならなければならない。

016-12
同緯度での温度分布が同じになるためには、同緯度での物質の分布(もいくは物性)が同じでなければならない。したがって、最低限、同緯度での陸や海の分布が同じでなければならない。

016-13
ところが、実際の陸と海の分布は、大きく偏っている。このため、同緯度での温度分布(→風の吹き方)は等しくならず、故に、風帯は蛇行し、なおかつ、変動するのである。

016-14
気象や気候は、風帯の影響を受ける。一方、風帯は、地球規模の風系である。それ故、風帯の蛇行・変動が気象や気候に与える影響は、地球規模のものとなるのだ。

016-15
もっとも、自然界には、風帯の蛇行・変動を抑えてくれる働きがある。それが、陸海間に吹く風なのである。熱交換により陸海間の温度差を緩和し、風帯の蛇行・変動を最小限に抑制してくれるのだ。
016-16
それ故、陸海間に吹く風を(風力)発電などに利用してしまうと、風帯の蛇行・変動が抑制されなくなるため、気象や気候に地球規模の異常・異変が生じやすくなってしまうのだ。

016-17
このように、地球規模の風帯をなす風のような『グローバルな風』でも、陸海間に吹く風のような『ローカルな風』の影響を受けてしまうのである。そして、その理由が非常に重要なのだ。

016-18
その理由とは、いかなる風も地表(海も含む)の温度が関係していることだ。ジェット気流のような遥か上空で吹く風でさえ、地表の温度とは無関係ではいられないのである。

016-19
風は、空気が加熱・冷却される(→密度変化→浮沈する)ことで生じる。一方、空気を最も加熱・冷却するは、地表である。となれば、地表の温度が関係してくるのは当然のことだろう。

016-20
余談だが、空気が地表に加熱・冷却されるためには、空気と地表との間に温度差がなければならない。同じ温度では、加熱・冷却は出来ない。風の大本の原因は、やはり、温度差なのである。

016-21
話を、風と地表の温度との関係に戻す。いかなる風も地表の温度とは無関係ではいられない以上、風を区別(分類)して別々に扱う(考える)のはナンセンスである。

016-22
つまり、『グローバルな風・ローカルな風』とか『上空の風・低空の風』というふうに分けて考えるのは、政治の世界の流儀(例:国・地方)なのであって、自然科学の考え方ではないのだ。

016-23
このように“政治流”に風を区別すると、風力発電の影響が及ぶ範囲を「極めて局所的なものにすぎない」と限定し、その悪弊を「無視できるほど小さい」などと矮小化することが出来てしまう。

016-24
だからこそ、環境詐欺師たちは、“政治流”に風を区別したがるのである。「地球(規模)」などという言葉を振り回すような連中に限って、自分に都合の悪いことは“局所化”したがるものなのだ。

016-25
風は、各々独立して吹いているのではない。相互に関係し合っているのである。よく「地球は一つ」というが、ならば、大気も一つである(∴風は独立ではない)ことを認識すべきであろう。

016-26
海陸間に吹く風の重要性の話はこれぐらいにして、次に、風帯の蛇行・変動が気象や気候に与える意外な影響について説明する。それは、低緯度に寒気が乱入する現象(について)である。

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