014-01
水の蒸発には、風が強く関与している。ところが、少なからぬ人たちが、これとは全く逆に、「水蒸気が風を発生させる」などと思っている。これでは、因果関係が逆様だ。

014-02
こうした誤った因果関係の知識を人々に植え付けているのが、以前批判した「水蒸気のエネルギー」論なのである。そこで、まずは、この疑似科学的教義にトドメを刺す話から始めてみたいと思う。

014-03
「水蒸気のエネルギー」論では、海面から立ち上る水蒸気が、台風(ハリケーン)の風力の源であるとされている。つまり、「高海水温→水蒸発→水蒸気上昇→風力エネルギー」と説くのである。

014-04
だが、台風には、この教義に反する部分が存在する。それは、目の部分である。台風の目では、天気がよい。つまり、目の部分だけが、水蒸気の上昇が活発ではない状態になっているのだ。

014-05
これは看過できない問題である。「水蒸気のエネルギー」論によれば、水蒸気の上昇が活発でないためには、水蒸気のエネルギーが低くなければならず、そのためには海水温が低くなければならない。

014-06
だが、『目』のような極めて限定された特定の領域でだけ海水温が低くなるなどというのは、自然現象では到底実現し得ないことである。となれば、台風に目など出来ないことになるはずだろう。

014-07
ついでに言うと、台風の目には、海水温が高まる条件さえ存在するのだ。たとえば、雲が無いために太陽光により温められる。また、台風は低気圧ゆえ、暖かい海水が吹き寄せられてくる。

014-08
このように、台風の目の部分だけが低海水温になることは、あり得ないのだ。したがって、もし「水蒸気のエネルギー」論が正しいのであれば、(周囲と同様に)水蒸気の上昇が活発なはずなのだ。

014-09
なのに、実際には全く不活発なのである。水蒸気のエネルギーが低くはならないはずなのに。このように、台風の目は、「水蒸気のエネルギー」論を反証するものなのである。

014-10
ちなみに、「水蒸気のエネルギー」論が嘘なら、台風などの異変を、地球温暖化のせいには出来なくなる。つまり、地球温暖化説は、空想疑似科学理論により、パニックを煽っていたことになるのだ。

014-11
水蒸気が風力を生み出すのではない。むしろ、風が、水の蒸発や水蒸気の上昇を活発にするのである。「水蒸気のエネルギー」論は、水蒸気を気象の根源とする原理主義思想に他ならない。

014-12
間違った因果関係を信じ込ませる原因となるものを、もう一つだけ示しておこう。それは、蒸気機関とのイメージ的混同である。すなわち、「蒸気の圧力→風圧→風発生」という思い込みだ。

014-13
蒸気機関は、沸点のような極めて高い温度のもとで、水(液相)が水蒸気(気相)に相転移する際に、体積が急激に膨張しようとすることによって生じる圧力を、動力に利用する機関である。

014-14
だが、海水温は、いくらなんでも、そこまで高くはならない。また、圧力は正圧(>大気圧)になるのだから、低気圧どころか、これでは高気圧になってしまう。蒸気機関との違いは明白だろう。

014-15
このように、蒸気機関とのイメージ的混同は、全く感覚的で浅はかな連想の産物にすぎないのである。「水蒸気のエネルギー」論の論拠となるものは、やはり存在しないのだ。

014-16
そもそも、(上昇気流の影響が無い場合の)水蒸気の上昇速度は、台風の風速よりも、遥かに遅いのだ。やはり、水蒸気が風を吹かせるのではなく、風が水の蒸発や水蒸気の上昇を活発にするのである。

014-17
風が水の蒸発を促すことは、経験的にも知ることのできることである。風が吹くと、たとえば洗濯物等がよく乾く。これは、風が水の蒸発を促しているのである。

014-18
一方、上向きに吹く風、すなわち、上昇気流は、水蒸気を上方へ運ぶ。つまり、水蒸気の上昇を勢いづけるのである。このように、風が「主」で、水蒸気は「従」というのが、実態なのである。

014-19
考えてもみて欲しい。雲は、水の沸点よりも遥かに温度の低い冬の北の海上でも発生・発達するのである。風が「主」でなければ、こんなことが起こるはずがない。

014-20
単に高温になっても雲の発生・発達が起こらないことは、2007年の夏の猛暑・酷暑で経験済みだ。この時、日本の近海では、台風はおろか、低気圧さえ発生・発達しなかった。

014-21
珊瑚が白化して死んでしまうほどに海水温が高くなったというのに…だ。このように、雲の発生・発達の主要因は、やはり風(空気の運動)なのであり、それを発生させるための温度差なのである。

014-22
ちなみに、夏の晴れた日の昼間に、海水温が最も高くなるのは、岸辺近くの海域である。温められやすいのだ。にもかかわらず、台風の多発海域にはなっていない。

014-23
確かに、水蒸気には、上昇気流を勢いづかせる性質もあるのだが、その逆の性質もあるのだ。これについては、010-31〜010-36(2007/10/07〜2007/10/12号)を復習して欲しい。

014-24
ついでに言うと、水蒸気の成れの果てである雨や雪などは、(重力の影響により)下向きに運動する。つまり、空気を、上昇させるどころか、逆に、下降させようとする向きに運動するのだ。

014-25
また、空気が含むことの出来る水蒸気量は、無限ではなく有限である。それ故、ある量(飽和)を越えてしまうと水(滴)になってしまい、自力での上昇は(重力の影響により)出来なくなってしまう。

014-26
このように、水蒸気原理主義思想である「水蒸気のエネルギー」論は間違いなのであり、「温度差→風(空気の運動)→水蒸発・水蒸気上昇活発化→雲発生・発達」という因果関係が正しいのである。

014-27
さて、風が雲の発生・発達に深くかかわっていることが理解できると、風力発電が降雨や降雪などにおける異変をもたらすことになる人間活動であることも理解できるようになるだろう。

014-28
風すなわち空気の運動が阻害されると、水の蒸発や水蒸気の上昇が鈍る。すると、雲の発生・発達も鈍るので、少雨・少雪という気候変動を招くことになる。

014-29
陸の方から来る乾いた空気(風)は、海での水の蒸発を大いに活性化させる働きをする。困ったことに、風力発電機は、そうした重要な空気の運動を阻害する位置に建設されているケースが多いのだ。

014-30
内陸部での雨の水源は海である場合がほとんどである。このことからも、風力発電が内陸部での乾燥等の気候異変の原因となり得ることがわかるだろう。

014-31
ちなみに、水は蒸発する際に(他から)気化熱を奪い温度を下げる働きをする。風力発電は、(風によって活性化される)この重要な働きをも阻害する。それ故、海水温上昇の原因にもなり得るのだ。

014-32
一方、風力発電は(以前説明したように)、大きな温度差を生み出し、強い風を吹かせる原因に(も)なり得る。そして、こうした風は、猛烈な勢いの水蒸発と水蒸気上昇を引き起こす。

014-33
活発な水蒸発と水蒸気上昇は、(集中)豪雨や豪雪等の原因になる。つまり、(たとえば)異常気象の一例としてよくネタにされる「バケツをひっくり返したような雨」等の原因になるのだ。

014-34
このように、風力発電は、雨や雪(さらには雹や雷など)の異常の原因にもなり得るのだ。雲とは、『空気の運動』(=風)の支配下にあるものなのである。

014-35
水の蒸発、水蒸気の移動・上昇、そして、雲の移動…これらは、全て、空気の運動、すなわち、風に支配された現象である。空気の運動(=風)が、降雨・降雪といった現象を司っているのだ。

014-36
となれば、風(=空気の運動)に異変をもたらす風力発電が、雨や雪(さらには雹や雷など)における異変をもたらすことになるのは、当然のことであろう。「環境にやさしい」というのは大嘘なのだ。

014-37
さて、次回からは、陸での降雨・降雪現象について取り上げたいと思う。なぜなら、その水源は(ほとんどが)海であり、故に、空気の運動(=風)の関与無しでは起こり得ない現象であるからだ。

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