010-01
風が吹くためには、空気が運動するためのエネルギーが必要である。熱(エネルギー)が、それだ。だが、空気を一様(どこでも同じ温度になるよう)に加熱しても、風は生じないのである。

010-02
確かに、温度が上がれば、気体分子の運動は活発になる。だが、その運動方向は、バラバラだ。これでは、全体が膨張したり、気圧が高まったりはしても、風にはならない。

010-03
風は、気体分子の運動方向(の時間的平均)が揃った現象である。このように、熱(エネルギー)だけでは風は吹かないのだ。微視的な現象(分子運動)と巨視的な現象(流体、風)とを混同してはならない。

010-04
無数の気体分子が、方向(の時間的平均)を揃えて運動する(=風になる)ためには、『温度差』と『重力』とが必要なのである。そのメカニズムは、以下の通りである。

010-05
まずは、抽象的な説明から。温度差があると、空気に密度の差が生じる。重力が働く地球上では、それは重さの差となる。そして、軽い空気は上に、重い空気は下に、それぞれ移動することになる。

010-06
こうして、空気(大気)の循環が生じる。この循環の一部が、風として人間に認識されるのである。次に、この循環が生じるメカニズムを、もう少し細かく具体的に解説していくことにする。

010-07
風が吹くためには、温度差が必要となる。そこで、温度差が存在する例として、まずは、空気よりも地面(または水面)の方が高温になっている所のことを考えてみることにする。

010-08
そこでは、空気が下から温められる。温められた(下部の)空気は、分子運動が活発になるため、膨張し、密度が小さくなる。それ故、重力が働く地球上では、重さが軽くなることになる。

010-09
こうして周りの空気よりも軽くなった(下部の)空気は、浮力により、上昇する。いわゆる上昇気流の発生である。(余談だが、これも広義には風と言える。高さ方向に吹く風だ。)

010-10
と同時に、軽くない周りの空気が、軽くなった(下部の)空気の下に潜り込むように流れ込んでくる。実は、この周りの空気の潜り込みが、軽くなった空気を浮上・上昇させるのである。

010-11
軽くない周りの空気が流れ込んでくるのは、その領域(の空気)の上に存在する空気が軽いために、上から掛かる圧力が小さく、故に、気圧が低くなっているからである。

010-12
それはともかく、このように周りの空気が流れ込む現象は、まさしく一般的な意味での風が生じる現象(の一つ)である。低気圧の中心に向かって吹く風は、その一例である。

010-13
一方、軽くなって上昇していった空気は、密度(重さ)が周りの空気と等しくなる高度に達すると、浮力は働かなくなるので、上昇はしなくなる。が、後から上昇してくる空気に押され、気圧が高まる。

010-14
このため、上昇し切った空気は、そこからは、外側に広がっていくように運動する。つまり、上空では、地上(海上)付近とは逆に、空気が周りに流れ出る(湧き出す)ように風が吹くのである。

010-15
次に、逆の温度差の例、すなわち、空気よりも地面(または水面)の方が低温になっている所のことを考えてみることにする。そこでは、空気が下から冷やされる。

010-16
冷やされた(下部の)空気は、分子運動が鈍るため、体積が収縮し、密度が大きくなる。それ故、重力が働く地球上では、重くなることになる。

010-17
重い空気は、下に沈む。故に、冷やされた(下部の)空気は、下に潰れるように体積が収縮することになる。すると、その上空では、空気が薄くなるので、気圧が下がることになる。

010-18
気圧が下がると、そこ(上空)に周りの空気が流れ込む。冷やされ重くなった(下部の)空気は、この流れ込んできた空気の重さにより上から押されて気圧が高まり、周りに広がろうとする。

010-19
一方、周りの領域では、上空の空気が流れ込んでいった分、上からの圧力が小さくなるため、(下部の)空気は浮き上がりやすくなる。それ故、冷やされ重くなった空気が下に潜り込みやすくなる。

010-20
以上のような理由で、冷やされ重くなった空気は、周りに広がっていく。そして、上から新たに空気が降りてきて、また冷やされる…ということが繰り返され、下降気流が生じることになる。

010-21
また、上空では周りの空気が吸い込まれるように、そして、地面(または海面)付近では空気が周りに流れ出る(湧き出す)ように、それぞれ風が吹く。高気圧(の風)は、その一例である。

010-22
以上、温度差の例を二つだけ挙げたが、この二つが存在すれば、「対流」すなわち「循環」が起こることがわかるだろう。そして、その一部のことを人間は「風」と呼んでいるわけである。

010-23
また、以上の話から、風の吹く原因が、高温ではなく、温度差と重力であることがわかるだろう。そもそも、高温が風の吹く原因なら、真冬の寒冷地で風が吹くことなど、あり得ないはずだ。

010-24
それに、熱エネルギー(だけ)が風の吹く原因なら、絶対零度にでもならない限り、凪(無風状態)などという状態には、なり得ないはずだ。猛暑・酷暑の日でも、風の無い時は、ある。

010-25
空気の場合に限らず、対流(循環)という現象は、温度差が無くては起こらないのだ。コンロ等にかけられたヤカンや鍋等の中の水が対流を起こすのも、実は温度差があるからなのである。

010-26
底の部分(下部)は加熱されて非常に高温になり、他の部分(特に上部)は(逆に)放熱により冷まされる。こうして生じる温度差により、(水の)対流が起きるのである。

010-27
巨大ハリケーンの説明によく用いられる「水蒸気のエネルギー」という表現も、実は、温度差の関与という事実を隠蔽するための疑似科学的表現なのである。

010-28
海水も大気も高温だと、温度差(→密度差→重量差)が大きくならないので、上昇気流は活発化しない。事実、そういう領域である低緯度では、ハリケーンは(それほど)発達はしないのだ。

010-29
ハリケーンが発達するのは、もう少し高緯度。すなわち、大気(特に上空)に比べて海水が極端に高温になっている特殊な領域である。つまり、上と下とで大きな温度差がある領域なのだ。

010-30
ちなみに(理由はいずれ説明するが)、こうした領域では水の蒸発も盛んになる。地球温暖化論者たちは、それをいいことに「水蒸気のエネルギー」という紛らわしい疑似科学的教義を説くのである。

010-31
確かに、水蒸気は、凝結して水(滴)になる際(気相→液相)に、熱を放出する(∴空気を暖め、軽くし、その上昇を勢いづかせる)。だが、水が気化して水蒸気になる時は、全く逆のことが起きるのだ。

010-32
水蒸気が発生する時、すなわち、水が蒸発する時(液相→気相)には、凝結する時とは逆に、(気化)熱を奪うのである(∴空気の上昇の勢いを弱めてしまう)。

010-33
これでは、(水蒸気は)空気の上昇の勢いを強めることにはならない。エネルギー保存則を考慮すれば、これは当たり前のことだ。(水蒸気が関与しようがしまいが、太陽からのエネルギーは同じ。)

010-34
ついでに指摘しておくと、空気は、水蒸気を含むと、重くなるので、かえって上昇しにくくなってしまうことになる。これでは、逆効果だ。

010-35
また、水蒸気が凝結すると、雲を形成し、太陽光線を遮るので、海水の高温化を妨げ、空気の上昇の勢いを弱めてしまう。これまた、逆効果だ。

010-36
こうしてみると、「水蒸気(→上昇気流→風力)のエネルギー」論は、プラス面ばかり宣伝して、マイナス面には一切触れない、(金融)詐欺の話術と同次元のものであることに気付くだろう。

010-37
「水蒸気(→上昇気流→風力)のエネルギー」論は、実質、「水蒸気には反重力効果がある」と説く教義である。そんな馬鹿げた教義には、狂信的なUFO(超常現象)信者でも、ついてはいけないだろう。

010-38
それほどまでに「水蒸気」にこだわりたいのであれば、せめて「水蒸気をも巻き込む温度差(によって生じる)エネルギー(の猛威)」といったような言い方をすべきである。

010-39
話は逸れるが、ハリケーンが発達する領域の(上下の)温度差は、温室効果では説明のつかないものだ。(上空の大気に対する)海水温の異常な高さは、別の原因によるものである。(いずれ説明する。)

010-40
話を温度差に戻そう。物質が運動エネルギーを得るには、何かの差が必要なのである。たとえば、位置エネルギーから運動エネルギーを得るには、高さ(がある)だけでは駄目で、高さの差が必要だ。

010-41
熱エネルギーから運動エネルギーを得る場合も同様である。温度の高さ(がある)だけでは駄目で、高さの差すなわち温度差が必要なのだ。だからこそ、低温でも温度差があれば風は吹くのである。

010-42
そもそも、対流とは(物質の)上下運動が元になっている現象であり、それは重さの差があって生じるものだ。風は空気の対流の一部だが、温度差が重さの差を生む原因となっているのである。

010-43
このように、風とは、温度差(と重力)によって吹くものなのである。そこで、次に、風と異常気象・気候変動との関係を明らかにしてみたい。ポイントは、風の役割(と発生原因)との関係である。

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