007-01
まず知っておかなければならないのは、風の実体である空気が有する能力である。そのうち、ここで特に重要になってくるのが、熱を『吸収』し『保持』し『放出』するという三つの能力である。

007-02
一番目の能力(熱の吸収)は、他から熱を奪う(∴他を冷やす)能力である。これは、他よりも空気の方が低温(空気よりも他の方が高温)である場合に発揮される能力である。

007-03
二番目の能力(熱の保持)は、自身の内部エネルギー状態を保ち続けることが出来るという能力である。この能力があるからこそ、空気は、熱(高低温)を運ぶ媒体となり得るのである。

007-04
三番目の能力(熱の放出)は、他に熱を与える(∴他を温める)能力である。これは、他よりも空気の方が高温(空気よりも他の方が低温)である場合に発揮される能力である。

007-05
余談だが、一番目(熱吸収)と三番目(熱放出)は、全く逆の能力である。このように、物質というものは、条件(この場合は温度関係)によって、能力や働きが違ってくるものなのである。

007-06
さて、空気は、風(気流)となって運動し、温度の異なる領域(地上または海上)間を移動することにより、三つの能力(熱の吸収・保持・放出)を発揮して、熱交換を実現する。以下に、その様を示す。

007-07
空気が(自身よりも)高温の領域に移動すると、一番目の能力(熱吸収)により、その領域は冷やされ、高温が緩和される。一方、空気自身は温められる。

007-08
温められた空気が、二番目の能力によって高温(熱)を保ちながら運動し、(自身よりも)低温の領域に移動すると、今度は三番目の能力(熱放出)が発揮される。

007-09
すると、その領域は温められ、低温は緩和される。こうして、高温領域の熱(高温)が、その領域(低温領域)に運ばれ、両領域の温度差が緩和されるのである。一方、空気自身は冷やされる。

007-10
冷やされた空気が、二番目の能力によって低温を保ちながら運動し、高温領域に移動すると、一番目の能力(熱吸収)が発揮される。すると、その領域は冷やされ、高温は緩和される。(007-07参照。)

007-11
こうして、低温領域の低温が、高温領域に運ばれ、やはり、両者の温度差が緩和されるのである。以上が、空気の運動(=風)による熱交換の様である。

007-12
ところで、この熱交換の際、もう一つの重要な現象が起きている。それは、換気である。空気がある領域に移動すると、その領域に存在していた空気を追い出してしまうのである。

007-13
つまり、空気が入れ替わってしまうわけだ。これは、気温を直接的に変えてしまう現象である。冷たい北風や、暖かい南風などの影響が、その実例だ。これも無視できぬ重要な現象である。

007-14
以上の話から、空気が風となって運動することで、熱(高低温)を運び、熱交換を行って、温度差を緩和してくれることが、おわかりいただけたと思う。次に、参考までに、水との比較をしてみたい。

戻る