006-01
ここからは、再び、風の役割についての話をする。まずは復習を兼ねた話から。風は、天然の海水淡水化上水道システムの一部をなすものである。

006-02
太陽光が海水を熱し、水(分)を蒸発・分離させる(淡水化)。それを陸まで運ぶのが、風の役割だ。風は、このシステムにおける配水、すなわち、ポンプと水道管の役割を果たしているのだ。

006-03
ポンプや水道管が駄目になると、水道の水は届かない。風力発電は、自然界における断水トラブルの原因となり得る。そして、その結果と言えるのが、内陸部の砂漠化であり、気候の極端化である。

006-04
このように、陸では、風が吹かなければ、水の恵みは受けられないのだ。そこで気付いて欲しいのが、水という物質が、気温変化幅を抑制する働きを(も)しているという事実である。

006-05
たとえば、雲。昼間は、太陽光を遮ることで、日照りによる温度上昇を抑える。また、夜は、宇宙への放熱を妨げ、温度低下を抑える。陸がこうした恩恵を受けられるのも、風が吹けばこそである。

006-06
しかし、水には、もっと直接的に温度変化幅を抑える働きがある。それは、比熱の大きさ(熱しにくく冷めにくい)による温度変化幅抑制効果である。これについては、多くの人が知っているようだ。

006-07
だが、この効果には、大きな盲点がある。それは、陸(特に内陸部)では、この効果が、ほとんど期待できないことである。多くの人が、この極めて重大な問題点を見落している。

006-08
陸には、この効果が期待できるほどの量の水は存在しない。一方、海には十分な量の水が存在するが、空気は熱を伝えにくいために、その影響は、せいぜい沿岸部ぐらいにまでしか及ばない。

006-09
陸の温度変化幅を抑えてくれているのが海水(の比熱の大きさ)であることは事実だ。だが、海に水があるだけでは不十分なのだ。その効果を陸にまでもたらしてくれる「何か」が必要なのである。

006-10
実は、それが「風」なのである。風が、陸における温度変化幅を、海におけるそれに近付けてくれているのである。風が、陸と海との間の熱交換をしてくれているのだ。

006-11
陸の極端な高(低)温が、風により、すなわち、移動する空気を媒体として、海上に運び出される。空気の極端な高(低)温は、海水により緩和される。その空気が、風となって、再び陸へ移動する。

006-12
こうした大気循環システムをなす風の働きにより、陸の極端な高(低)温は緩和されるのである。このように、風がなければ、陸は、(海)水のいかなる恩恵も受けることはできないのだ。

006-13
風力発電は、原理的に、こうした風による温度調整の働きを悪くするものである。つまり、温度の面でも、気候(さらには、いずれ説明するが、気象)の極端化を来すものになるのである。

006-14
さて、陸海間の熱交換の話から、風には熱(高低温)を運ぶ能力があることがわかったと思う。つまり、風には、以前話した『水を運ぶ役割』のほかに、『熱(高低温)を運ぶ役割』もあるわけである。

006-15
実は、この『熱(高低温)を運ぶ』という役割は、『水を運ぶ』という役割以上に、気象や気候に大きな影響を及ぼすものなのである。そこで、次回からは、この役割について詳説することにする。

戻る