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●第95回 第4章・遠隔作用と疑似近接作用(その25)

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当メールマガジンを御購読いただき、誠にありがとうございます。
またまた発行が大幅に遅れてすみません。

さて、今回も遠隔作用と関連のある話です。
前回の続きで、エネルギー配分が偏る話についてです。

古典的な近接作用の理論であるマックスウェル電磁気学では、エネルギーが極端
に偏って配分される現象は説明できません。
そのため、量子論というトリックが必要になるわけです。
今回は、その説明の第二回目です。(全部で三回の予定です。)

なお、このメルマガは等幅フォントで御覧下さい。

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103.確率というテクニック
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前回、エネルギーが一つの粒子の形で存在すると考えると、エネルギーが集中し
て配分される現象が説明できることを示しました。
しかし、その一方で、重大な問題点が三つほどあることもわかりました。
一つは、粒子が放出される方向(または、粒子が存在する位置)の問題。
そして、残りの二つは、まとめて言うと、複数の物体にエネルギーが配分される
現象が説明できないという問題です。
こうした問題点を解決してくれるのが、(存在)確率という考え方なのです。
そこで、確率という考え方により、上記の問題点がどのように解決されるのか、
順に説明したいと思います。

なお、ここで二つほどお断りしておきたいことがあります。

一つは、前回示した下記のイメージ図(図94・α)についてです。

[図94・α]
 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
 ■■■■■■B■■■■■■■■■■■■■■■■■■
 ■■■■■■○■■■■■■■■■■■■■■■■■■
 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
 ■■■■○■■■■■■■■■■■■■■■■■○■■
 ■■■■A■■■■■■■■■■■■■■■■■C■■
 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

A・B・Cの文字が記された部分にも■があると考えて下さい。

二つ目は、「物体Aから放出される(エネルギーの)粒子」という表現について
です。
『場の理論』の考え方からすると、粒子は、物体A自体から放出されるというよ
りも、物体Aのすぐ周りの空間領域から生じるとする方が、より適切だと言えま
す。
ですから、正確には、「物体Aによって放出される粒子」と表現すべきなのかも
しれません。
このため、厳密さにこだわる方は、そのように読み替えて下さい。

以上のことを十分御理解下さった上で、以下の内容をお読み下さい。

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104.方向の問題
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さて、それではまず、粒子が放出される方向(または、粒子が存在する位置)の
問題が、どう解決されるのかを見てみましょう。

物体Aから物体Bに粒子が到達するためには、物体Bが存在する方向に粒子を放
出しなければなりません。
ところが、物体Aは、物体Bの存在する方向を知りません。
ですから、(エネルギーの)粒子を、どの方向へ放出すればよいのか、わからな
いのです。

そこで、この問題を解決するために、かなり強引ですが、あらゆる方向に粒子が
放出されたことにしてしまいましょう。
それは、前述のイメージ図で示せば、下記のようになります。

[図95・α・1]
 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
 ■■■□□□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
 ■■□■■■◎■■■■■■■■■■■■■■■■■■
 ■□■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■
 ■□■■○■■□■■■■■■■■■■■■■■○■■
 ■□■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■
 ■■□■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■
 ■■■□□□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

この図は、以前示した図94・α・2と(一カ所を除いて)同じです。
ただ、物体Bに粒子が到達したことを明白に示すために、○を◎に変更してあり
ます。(本当は□と○を重ねて描けばよいのですが、テキスト・アートでは不可
能ですので、このように記してあります。)

とにかく、「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」ではありませんが、このように、あ
らゆる方向に粒子が放出されたことにしてしまえば、そのうちのどれか一つは物
体Bに到達することができるでしょう。(◎で描かれている粒子。)
そして、その他の粒子、すなわち、物体Bに到達しない粒子については、実は存
在しなかったことにすればいいわけです。(□で描かれている粒子。)
こうすれば、粒子が放出される方向など気にしなくても済むようになるわけです
が…

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105.実在ではない存在
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とはいえ、後になってから、不要な粒子(□で描かれている粒子)を「実は存在
しなかったことに」するというのは、あまりにも御都合主義的ですよね。

また、粒子は一つしかないことにしているはずなのに、あらゆる方向に放出され
たことにするというのは、おかしいなことですよね。
これでは、一つの粒子が同時に複数の位置に存在することになってしまいます。
これはいくらなんでもいただけません。

そこで、この問題を解決してくれるのが、(存在)確率という考え方なのです。
つまり、物体Bに到達するまで、粒子は、実在するのではなく、確率的に存在す
ることにするのです。
つまり、どこどこの位置(正確には「領域」)に〜%の確率で存在する、とする
わけです。

こうすれば、一つの粒子が存在しうる位置が複数箇所になっても構わないでしょ
う。
それ故、一つの粒子があらゆる方向に放出されたことにすることが可能になるわ
けです。
また、実在しているわけではないのですから、不要になった粒子(□で描かれて
いる粒子)を「実は存在しなかったことに」することも可能になるわけです。

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106.複数の粒子というアイデア
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粒子が放出される方向(または、粒子が存在する位置)の問題は、解決されまし
た。
次に、複数の物体にエネルギーが配分される現象が説明できない問題が、どう解
決されるのかを見てみましょう。

これまでは、エネルギーの粒子の数を「一つ」としてきました。
つまり、放出された全エネルギーが一カ所にまとまって存在している、と考えた
わけです。
ですから、たとえ(存在)確率という考え方を用いたとしても、エネルギーを受
け取れる物体の数は、あくまで一つだけです。
これでは、複数の物体にエネルギーが配分される現象は説明できませんね。

そこで、エネルギーは、一つの粒子としてではなく、複数の粒子という形で存在
している、と考え方を変えてみましょう。

すると、粒子一つあたりのエネルギーの値は小さくなりますね。
それはともかく、こうすれば、複数の物体にエネルギーが配分される現象が説明
できるようになるでしょう。

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107.粒子の個数とエネルギー配分
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個々の物体に配分されるエネルギーの大きさは、(到達する)粒子の数が関係し
てきます。
粒子の数が多く(少なく)なるほど、配分されるエネルギーの値は大きく(小さ
く)なります。
ですから、より多く(少なく)エネルギーを受け取ることになる物体が存在する
位置で、粒子の存在確率が高い(低い)ことにすればいいのです。
また、二つの物体が同じ大きさのエネルギーを受け取るようにしたければ、二物
体が存在する位置における粒子の存在確率が等しくなるようにすればいいわけで
す。

そこで、物体Aの近く(遠く)ほど、粒子の存在確率が高い(低い)ことにして
みましょう。
つまり、物体Aからの距離によって、粒子の存在確率が決まることにするわけで
す。

こうすると、物体Aの近く(遠く)に存在する物体ほど、多くの(少ない)エネ
ルギーを受け取ることになりますね。

また、物体Aからの距離が等しい位置に存在する二物体が受け取るエネルギーは
等しくなるでしょう。
なぜなら、二物体の位置における粒子の存在確率が等しいからです。
ですから、物体Bと物体Cが、物体Aから同じ距離の位置にある問題では、両者
の受け取るエネルギーは等しくなるでしょう。
かくして、前回示した「第三の欠陥」は解決されました。

では、残る「第二の欠陥」については、どうでしょうか?
一見、うまく解決されそうに思えますが、実は意外な問題が潜んでいるのです。
これについては、次回、詳しくお話しいたします。

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