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 N┃→          仮想力線電磁気学
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●第90回 第4章・遠隔作用と疑似近接作用(その20)

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当メールマガジンを御購読いただき、誠にありがとうございます。

さて、今回も遠隔作用と関連のある話です。
前回の続きで、エネルギー配分が偏る話についてです。
より具体的には、マックスウェル電磁気学におけるエネルギーの授受に関する解
法のトリックについてです。

なお、このメルマガは等幅フォントで御覧下さい。

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80.相手がいなくてもいいの?
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ある物体が、他の物体に作用を及ぼして仕事をしエネルギーを与える問題を解く
ためには、相手の物体のことがわからないと解けません。
これが力学における常識です。
ちなみに、遠隔作用では、この常識が満たされています。

ところが、近接作用では、この常識が満たされていません。
マックスウェル電磁気学のような『場の理論』では、相手のことなど知る必要は
ないことになっています。
これは力学の常識に反する教義です。

もっとも、近接作用の側にも言い分はあります。
それは、近接作用では、エネルギーは空間を介して伝わることになっているため
に、空間のことさえわかればいいのであって、故に、相手のことはわからなくて
いいのだ、というものです。

これは一見もっともらしく聞える理屈です。
しかし、どんなにうまく問題点をごまかしたつもりでも、必ずどこかにそのしわ
寄せがくるものです。
つまり、本質的な矛盾点は隠せないものなのです。

「相手のことなど知る必要はない」とすることによる論理の歪みは、まさに『場
のエネルギー』という考え方の中に見出すことができるのです。
今回は、この『場のエネルギー』という概念に潜むトリックを指摘したいと思い
ます。

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81.バネをのばすには?
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ここで、バネをのばす実験を考えてみて下さい。
バネをのばすには、どうしたらいいでしょうか?
答えは簡単で、バネの両端を引っ張ればいいのですよね。

当たり前すぎることですが、実はここに極めて重要なポイントが隠されているの
です。
それは、バネをのばすには、少なくとも二カ所に二方向へ力を加えなければなら
ない、ということです。

もし、バネの一端(片方)だけを引っ張ったら、どうでしょうか?
非常に速い速度で引っ張った場合はともかく、そうでなければ、片側だけを引っ
張っても、バネ全体が引きずられて移動するだけで、バネは伸びませんよね。
ですから、やはり、バネの両端を引っ張らなくてはならないわけです。

もっとも、バネの一端(片方)を何かに固定すれば、もう片方(の一端)だけを
引っ張っても、バネをのばすことはできます。
しかし、ここで忘れてはならないことは、バネは、固定したものからも引っ張ら
れている(力を受けている)という事実です。
ですから、この場合でも、バネは両端から引っ張られていることになるのです。

このように、バネがのびるためには、両端に反対方向の力が働かなくてはならな
いのです。
つまり、バネを変形させるには、少なくとも二カ所に二方向へ力を加えなければ
ならないのです。

さて、このことは、バネに限ったことではありません。
弾性体を変形させるには、複数の箇所に複数方向へ力を加えなければならないの
です。

  ←□→ 変形する(のびる)    □→ 右へ加速されるだけ

この当たり前のことが、実は意外と忘れられやすいことなのです。
そして、逆に、このことに気付くと、『場の理論』のトリックを見破ることが可
能になるのです。

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82.相手がいなければ絶対に無理
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『場のエネルギー』という概念は、空間を一種の弾性体のようなものとみなすこ
とによって導かれたものです。(いわゆる電磁弾性体。)
つまり、弾性体が応力を受けて変形させられることによって蓄えられるエネルギ
ーこそが、『場のエネルギー』の考え方のモデルになっているのです。

ということは、その弾性体には、少なくとも二カ所に二方向の応力が加わってい
なければならないことになりますね。
ですから、弾性体に応力を及ぼすものが、少なくとも二つは存在しなければなら
ないことになるはずです。

以上のことから、『場のエネルギー』というものが存在するためには、電磁弾性
体を変形させようとするものが、少なくとも二つは存在しなければならない、と
いうことになります。
その二つとは、要するに、『作用を及ぼすもの』と『作用を受けるもの』です。
この二つが存在しなければ、電磁弾性体は変形できないはずであり、故に『場の
エネルギー』も有り得ないことになるのです。

ところが、マックスウェル電磁気学などの『場の理論』では、『作用を受けエネ
ルギーを受け取るもの』が存在しない状態でも『場のエネルギー』を定義してい
るのです。
また、だからこそ、「相手のことなど知る必要はない」という教義を説くことが
可能になるわけです。
これは弾性体が変形する原因を完全に無視した暴論でしょう。

これが『場のエネルギー』という概念に潜むトリックの正体なのです。
少なくとも、力学的常識を完全に無視しています。

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83.シートは凹まない
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近接作用すなわち『場の理論』は、そもそも力学的常識を前提とした理論だった
はずです。
ところが、上で述べたように、実際には、力学的常識を完全に無視しているので
す。
これは全く一貫性のない論理です。
逆に、こんな力学的常識を無視するようなことが許されるのなら、もはや近接作
用に固執する必要も無いでしょう。

ちなみに、上の話は、凹んだシートのたとえを用いると、よりハッキリします。
シートに重い物体をのせるとシートが凹む…というのが、このたとえの言い分で
したよね。


     ●
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  →   ̄\   / ̄
                \●/
                  ̄

でも、本当にそうなのでしょうか?
もしシートが固定されていなかったとしたら、重い物体が触れた途端に、シート
は動いてしまうでしょう。


     ●
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  →     ●
               ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

このため、シートは(ほとんど)凹まないのです。

ですから、シートが凹むためには、シートが何かに固定されていなければならな
いのです。
つまり、下図のようにシートに力(↑)が加わっていなければならないのです。

  ↑     ↑
   ̄\   / ̄
    \●/
      ̄
この力(↑)の存在を、人間は意図も簡単に忘れてしまうのです。
そして、そのことが、『場の理論』のトリックに気付かない原因になっているの
です。

言うまでもなく、この力(↑)をもたらすものが存在しなければ、凹んだシート
のたとえは成り立たないことになります。
そして、実際に、そんなものは存在しません。(つまり疑似科学ということ。)

ベッドの上にのると、ベッドのシーツが凹むのも、シーツがベッドからも力を受
けているからです。
大学卒業前に恋人を妊娠させてしまった若き天才物理学者も、このことには死ぬ
まで気付かなかったようです。

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84.極性
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さて、こうしてみると、『場の理論』の教義が、いかに支離滅裂なものであるか
がわかるでしょう。
『場の理論』の考え方の通りならば、バネの一端だけに力を加えることで、バネ
をのばすことができることになってしまうでしょう。
また、(固定されていない)シートの一カ所に力を加えるだけで、シートを凹ま
せることができることになってしまうでしょう。

そもそも、電磁気作用について考えるのに、相手のことを無視して話を進めよう
とすること自体がおかしなことなのです。
なぜなら、電磁気作用には『極性』という概念があるからです。
電磁気作用は、極性によって、向きが正反対に変わります。
しかも、自分自身の符号だけでは向きは決まらず、相手が同符号なのか異符号な
のかで向きが決まります。
つまり、相手との組み合わせが問題になるのです。
ということは、相手のことがわからないと話が進まない、ということでしょう。

もちろん、『場』に『向き』という概念を考えればよいのではないか?、という
意見もあるかもしれません。
しかし、よくよく考えてみれば、『極性』または『場と極性』の組み合わせによ
って力の向きが違ってくるということ自体、力学的なモデルでは説明できないこ
となのです。
となれば、やはり、力学的常識を逸脱しているということになるでしょう。

要するに、電磁気現象は力学的モデルでは説明のできない現象なのです。
ですから、力学的モデルに固執すること自体が誤りなのです。

となれば、もはや近接作用にこだわらなければならない義務はどこにもないはず
です。
まして、遠隔作用の方が、より多くの現象を合理的に説明できるとなれば、なお
さらでしょう。

いずれにせよ、力学的常識を前提にしているようなふりをして、実は力学的常識
を完全に無視した論理を展開する『場の理論』の論法は、力学に対する信用を悪
用した『詐欺の手口』としか言いようがありません。

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