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●第9回 概要(その9)

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前回に引き続き、疑似近接作用の入門的な説明をします。

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31.誘電率と透磁率
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空間が電磁気作用に及ぼす影響を示すのが、誘電率εと透磁率μです。
遠隔作用では、空間自体は、電磁気作用に影響を及ぼしませんが、そこに存在す
る物質は影響を及ぼします。
このため、遠隔作用でも、誘電率εや透磁率μという概念が存在するのです。

そもそも、誘電率εや透磁率μは、(電磁気)力から定義されたものです。
たとえば、二つの電荷間に働く電気力(クーロン力 F)を例にあげるならば、

 F = - (q1・q2) / (4・π・ε・r^2)

から、

 ε = - (q1・q2) / (F・4・π・r^2)

となります。
透磁率μも同様です。
遠隔作用では、この基本に戻って、誘電率や透磁率を定義します。

ここで思い出してほしいのですが、近接作用では、作用を及ぼす物体と及ぼされ
る物体の途中の空間しか作用に影響を及ぼさないのに対し、遠隔作用では、全空
間の全物質が作用に影響を及ぼします。
つまり、見た目は単純な二体問題でも、実際には複雑な多体問題なのです。
このため、その問題を扱っている人間が注目する物体(作用を及ぼす物体と及ぼ
される物体)以外の物体が、作用に干渉してくるのです。
遠隔作用では、こうした『人間が注目していない物体』の干渉を表す係数が、誘
電率・透磁率とされるのです。

つまり、『人間が注目していない物体』の干渉を、誘電率や透磁率という係数に
まとめることによって、複雑な多体問題を、単純な二体問題に置き換えるわけで
す。

具体的な例として、上で述べたクーロン力について述べましょう。
まず、q1からq2に働く見かけ上の力を求めます。
この力は、q1から直接q2に働く作用(力)と、全空間の全物質の干渉による作用
(力)との合計のはずです。
この見かけ上の力から、上で述べた定義にしたがって、誘電率εを求めるわけで
す。
透磁率μも同様の方法で求めます。

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32.疑似近接作用の場合
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上の説明からわかると思うのですが、遠隔作用の場合、誘電率や透磁率を求める
には、全空間の全物質との間の作用を、全て考慮しなければなりません。
このため、近接作用より、解析ははるかに複雑になります。
近接作用では、ある場所(微小領域)の誘電率・透磁率は、その場所(微小領域
)の物質の分布がわかれば求まるのに比べると、えらい違いです。

ちなみに、遠隔作用では、『ある場所(微小領域)の誘電率・透磁率』というも
のは定義できません。
なぜなら、遠隔作用では、空間自体は何の役割も果たしませんし、何より、全空
間の全物質について考えなくてはならないのですから、そんなものを定義しても
意味がないわけです。

とはいえ、仮想エーテルによる近似によって、疑似近接作用として扱える問題に
ついては、それを定義することが可能です。
この場合、途中の空間に疑似エーテルがあると仮想して、その干渉度を表すこと
になります。
もっとも、忘れてはならないのは、こうした仮想された疑似エーテル(仮想エー
テル)は、本当は実在しないものだ、ということです。
このことさえ正しく理解していれば、厄介な遠隔作用の多体問題も、比較的容易
な近接作用問題に置き換えることが出来るわけです。

上で述べた誘電率や透磁率の考え方もそうですが、遠隔作用理論である仮想力線
電磁気学では、多体問題を単純化するために、こうした置き換えがよく用いられ
ます。

                * * *

さて、疑似近接作用の入門的説明は、今回でとりあえず終わりにしようと思いま
す。
次回からは、『場』の実在性の問題について、説明する予定です。

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