========================================================================
 ━┓→
 N┃→          仮想力線電磁気学
 ━┛→
========================================================================
------------------------------------------------------------------------

●第88回 第4章・遠隔作用と疑似近接作用(その18)

------------------------------------------------------------------------

当メールマガジンを御購読いただき、誠にありがとうございます。
発行が遅れてすみません。

さて、今回も遠隔作用と関連のある話です。
前回の続きで、エネルギー配分が偏る話についてです。
近接作用におけるエネルギーの授受に関する解法のトリックを、複数回にわたっ
て説明したいと思います。

なお、このメルマガは等幅フォントで御覧下さい。

****************************************
74.力学を前提にしておきながら…
****************************************

近接作用という考え方は、離れていても作用が及ぶ電磁気現象を、力学的なイメ
ージでとらえようとする考え方です。
したがって、近接作用という考え方は、力学を前提としたものと言えます。

一方、近接作用では、エネルギーが空間を伝わっていくことになります。
つまり、空間がエネルギーの授受にかかわってくるのです。
『物体→空間』、『空間→空間』、『空間→物体』、…というふうに。
したがって、空間は、エネルギーを有することができるものでなければなりませ
ん。

ところが、空間(真空)の質量はゼロです。
よって、力学的には、空間のエネルギーは、常にゼロになってしまいます。
これでは、空間は『エネルギーを有することができるもの』ではなくなってしま
い、それ故、近接作用の考え方は成り立たなくなってしまうのです。

このように、近接作用という考え方は、力学を前提としながら、力学に反する教
義を平気で展開しているのです。
このままでは、いただけません。

ここで話は少し逸れますが、そういう意味では、エーテルというものの存在が、
いかに有り難いものだったと言えるか、よくわかると思います。
もしエーテルが質量を有するものだとすれば、上記のような問題は生じないので
すから。
もちろん、マイケルソン・モーレーの実験結果などのような別の問題は残ります
が、エネルギーの授受という力学的な問題の解決に関しては、極めて有効なもの
だったと言えます。
古い見方に立てば、エーテルこそ、近接作用が成り立つための条件であり、その
前提となるものだったと言えるでしょう。

余談ですが、アインシュタインは、物理学、特に力学の成績がすこぶる悪かった
そうですから、こういう力学上の問題は気にならなかったのかもしれません。
だからこそ、近接作用の前提だったエーテルを否定できたのでしょう。
そういえば、彼は、ローレンツ圧縮(変換)についても、その前提であるエーテ
ルの存在を否定しましたね。
前提となるものを否定もしくは批判することで革新性を装い、それでいて、先人
たちの権威をちゃっかり利用する…
これが相対論や量子論などにおける彼の論法の特徴なのですが、実は、これは、
マルクス主義の特徴でもあるのです。(例:空想的社会主義)
近接作用への固執をはじめ、アインシュタインの(科学)思想には、マルクス主
義との共通点や類似性を数多く見出すことができます。
これについては、いずれ明らかにしたいと思います。

話が逸れたついでに、もう一つ。
今日では、『場の理論』は量子化され、電磁気現象においては、光子が作用やエ
ネルギーを伝えることになっています。
しかし、これもまた、エネルギーの授受に関して、同じ問題を抱えています。
なぜなら、光子の質量はゼロとされているからです。
もちろん、光子に質量があるとする考え方もあるのですが、そうなると別の問題
が生じてきます。
それは相対論との矛盾です。
相対論では、質量あるものは亜光速でしか運動できないはずであり、これは光子
の速度が光速度であることに矛盾します。
結局、どうやっても力学との矛盾は解決できないのです。

****************************************
75.だからエネルギーを定義する
****************************************

話をもとに戻しましょう。
上で述べたように、力学的な考え方では、空間はエネルギーを有することができ
ません。
このままでは、近接作用の考え方は成り立ちません。

そこで、近接作用(場の理論)では、空間のエネルギーという概念を、無理矢理、
定義する(でっち上げる)わけです。
こうすれば、空間はエネルギーを有することになります。
すると、空間はエネルギーを有することができるものである、とすることが可能
になり、力学との矛盾も解決できるというわけです。

例として、マックスウェル電磁気学の考え方を取り上げてみましょう。

『場の理論』であるマックスウェル電磁気学では、『場』は実在性あるものとさ
れています。
そこで、『場のエネルギー』なる概念を定義するわけです。

『場』とは、空間の緊張状態とでも言えるものです。
つまり、空間を弾性体のようなものとみなすわけです。
これにより、電磁気作用が生じると考えるわけですね。
さて、そうなると、「縮んだ」もしくは「伸びた」バネがエネルギーを蓄えるよ
うに、空間もエネルギーを蓄えていると考えることができるというわけです。
これが、『場のエネルギー』というわけです。

ちなみに、『場のエネルギー』は、『場の強さ』と、誘電率や透磁率などの『空
間の特徴を表す状態量』とから求まることになっています。

以上のような理屈で、空間にエネルギーが存在することにしているわけです。

****************************************
76.空間が受け取るエネルギー
****************************************

ならば、具体的な例として、『物体→空間』というエネルギーの授受が起きる現
象の問題について、マックスウェル電磁気ではどのようにして解くのか?、その
考え方を見ていくことにしましょう。

ここで取り上げるのは、物体が空間にエネルギーを与える現象の問題です。
当たり前のことですが、空間は物体からエネルギーを得、その分、物体はエネル
ギーを失うことになります。
では、空間が物体から得るエネルギーは、どのようにして求まるのでしょうか?

空間が物体から得るエネルギーは、物体によって生じた(電磁)場のエネルギー
になります。
ならば、物体によって生じた(電磁)場のエネルギーはどうやって求まるのかと
いうと、上で述べたように、物体によって生じた(電磁)場の強さと、誘電率や
透磁率などの『空間の特徴を表す状態量』とから求まるのです。

では、物体によって生じた(電磁)場の強さはどのようにして求まるのかという
と、こちらはマックスウェル方程式により求まることになっています。
つまり、マックスウェル方程式に、電荷や電流、位置…などといった諸情報を代
入することで求まるわけです。

こういうわけで、空間が物体から得るエネルギーを求めることができる、として
いるのです。
以上が、マックスウェル電磁気学における解法の考え方です。

こうしてみると、マックスウェル電磁気学の解法は、一見、もっともらしく見え
ます。
ですが、よ〜く調べてみると、実は単なる都合のいい仮説に基づいた理屈にすぎ
ないことがわかるのです。
しかも、ある部分においては、相変わらず力学的な問題を無視しているところが
あるのです。
次回からは、こうした問題点について、詳しく説明していきたいと思います。

========================================================================

バックナンバーに戻る