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 N┃→          仮想力線電磁気学
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●第82回 第4章・遠隔作用と疑似近接作用(その12)

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当メールマガジンを御購読いただき、誠にありがとうございます。
相変わらず発行間隔が長くて、すみません。

さて、今回も遠隔作用と関連のある話です。
具体的には、前回の続きで、エネルギー配分が不平等になる話についてです。

なお、このメルマガは等幅フォントで御覧下さい。

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47.作用を受ける側自身が関与
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前回説明したように、動的な電磁気現象、すなわち、誘導によって生じる電磁気
作用には、エネルギーがかかわってきます。
つまり、『作用を及ぼすもの』が、相手となるものに作用を及ぼして仕事をする
と、エネルギーが失われ、そのために相手に及ぼす作用の強さが変化(減少)し
てしまうのです。
そこで重要になってくるのが、作用を受けるものの関与です。

『作用を及ぼすもの』はエネルギーを失いますが、そのエネルギーを受け取るこ
とになるのが、相手となるもの、すなわち、『作用をうけるもの』です。
つまり、『作用を受けるもの』が、エネルギーを奪うわけです。

さて、『作用を受けるもの』によるエネルギーの奪い方が変われば、『作用を及
ぼすもの』のエネルギーの失われ方も変わります。
そうなれば、作用の変化(減少)の仕方も変わります。
このことから、『作用を受けるもの』が、作用にかかわってくることがわかると
思います。
もうおわかりのように、これは重力やクーロン力にはない特徴です。

こういう例として、『作用を受けるもの』の数が多くなると、個々のものに働く
作用が弱くなってしまうというのがあります。
これは、前々回にお話しました。
つまり、逆に言うと、『作用を受けるもの』の数が少なくなると、個々のものに
働く作用が強くなるわけです。
ですから、『作用を受けるもの』が2個の場合よりも、1個の場合の方が、作用
は強くなります。

それでは、『作用を受けるもの』が0個の場合はどうでしょうか?
「『作用を受けるもの』がない場合など考えても意味がないのでは?」と思われ
るかもしれませんが、そうではありません。

『作用を受けるもの』が1個でも存在すれば、作用は時間とともに減少していき
ます。
これに対し、『作用を受けるもの』が0個の場合、エネルギーを奪うものがあり
ません。
したがって、『作用を及ぼすもの』は、エネルギーを失わない(奪われない)こ
とになるのです。
このため、作用を及ぼす能力は維持されることになります。
別の言い方をすると、
「もし『作用を受けるもの』が存在することになれば及ぼすことになるであろう
作用の強さが、初期の(高い)値を保ったままになる(=減少しない)」
ということになります。
『作用を受けるもの』が、存在しない(0個の)場合と、存在する(1個以上)
の場合とでは、大変な違いがあることがわかるでしょう。

以上の話から、『作用を受けるもの』が、実は、『作用に影響を及ぼすもの』に
なっていることがわかると思います。
つまり、『作用を受けるもの』自身が、作用にかかわってくるのです。
このため、作用について考える時は、『作用を及ぼすもの』のことだけを考えて
いても駄目で、『作用を受けるもの』のことも考えなければならないのです。

このように、『作用を受けるもの』は、作用に影響を及ぼすのです。

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48.場の理論で考えると…
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それでは、このことを、今度は『場の理論』の立場から考えてみましょう。

『場の理論』では、作用は、空間である『場』から受けることになっています。
ですから、作用の強さは、『場』の強さと関係してくることになります。
実際、単位電荷(磁荷)あたりに働く作用の強さは、『場』の強さに等しくなり
ます。
したがって、(『作用を受けるもの』の電荷(磁荷)が一定ならば、)「作用が
変化する」ということは、「『場』が変化する」ということになるわけです。
このことから、「作用への影響」は、「『場』への影響」と説明されることが、
おわかりいただけると思います。

となれば、「『作用を受けるもの』が作用に影響を及ぼす」ということが、『場
の理論』ではどう説明されるか、もうおわかりでしょう。
それは、「『作用を受けるもの』が『場』に影響を及ぼす」ということになるの
です。

実は、このことが、『場の理論』にとって、極めて重大な問題となるのです。

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49.場の理論での矛盾
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というのは、『場の理論』では、『作用を受けるもの』が『場』に影響を及ぼす
ことを禁じているからです。
もし、そんなことを許せば、『場の理論』はたちまちのうちに矛盾を起こし、崩
壊してしまいます。

その最もわかりやすい説明の例が、第32回で述べた『シートを凹ませているの
は誰?』という話です。
『凹んだシート』のたとえ話は、もともと重力場に関するものですが、そこで生
じる矛盾や問題点は、そのまま電磁場にも言えることです。

さて、『(凹んだ)シート』(の様)は、『場』に相当します。
たとえば、物体A(○)が物体B(●)から重力を受ける問題では、下図のよう
なシートの凹みを考えます。

  __         __
    \      ○/
     \     /
      \   /
       \●/
         ̄

このように、物体Bだけが凹みを作る状態を考えるからこそ、物体Aが物体Bに
引き寄せられる現象が説明できるわけです。
つまり、作用を受ける物体Aの場への影響を禁じているから良いわけです。

これが、作用を受ける物体Aの場への影響を認めてしまったら、どうなるでしょ
うか?
下図がそれです。

  __            __
    \          /
     \        /
      \      /
       \●/\○/
         ̄   ̄

御覧のように、物体Aは、自分自身によって生じたシートの凹みに埋もれてしま
い、身動きがとれません。
これでは、物体Aが物体Bに引き寄せられる現象が説明できません。
つまり、重力が説明できないことになるのです。

このように、『作用を受ける物体』の『場』への影響を考えることは、絶対に許
されないのです。
そんなこと許したら、『場の理論』は崩壊してしまいます。
ですから、『作用を受ける物体』が『場』に影響を及ぼすような現象は、『場の
理論』では許されないのです。

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50.場の実在性を否定
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ところが、動的な電磁気現象、すなわち、誘導によって生じる電磁気作用では、
『作用を受ける物体』が『場』に影響を及ぼすとしなければならないのです。
これは矛盾です。
このように、『場の理論』では、『作用を受ける物体』が作用に影響を及ぼす現
象は、正しく説明できないのです。
ですから、そうした現象では、『凹んだシート』のようなものは考えることはで
きないことがわかるでしょう。

ということは、『場』は実在しない、ということです。
つまり、『作用を受ける物体』が作用に影響を及ぼす現象では、『場』というも
のは『実在性のないもの』としなければならないのです。
となれば、もはや近接作用という考え方は通用せず、遠隔作用という考え方でな
ければならないことがおわかりいただけると思います。

ちなみに、『場』が実在性のないものだということは、『場』に対しエネルギー
を定義するのは無意味だということになります。
よって、真空の空間がエネルギーを有することも有り得ないことになります。
これは遠隔作用を正しく理解する上で極めて重要なことなので、しっかりとマス
ターしておいて下さい。

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51.場の理論と近接作用の崩壊
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重力やクーロン力において、近接作用という考え方が通用したのは、『場』とい
う考え方が通用したからです。
そして、『場の理論』が通用したのは、重力やクーロン力では、『作用を受ける
もの』が作用に影響を及ぼさないからです。
だからこそ、重力やクーロン力では『近接作用』とか『場の理論』が可能だった
わけです。

ところが、電磁気現象には、それでは説明できない現象が存在するのです。
困ったことに、マックスウェル電磁気学では、そのような現象まで『近接作用』
や『場の理論』で処理しようとするのです。
これでは、矛盾が生じて当たり前でしょう。
そんなことをしているから、それをごまかすために、量子論が必要になってくる
のです。

しつこいようですが、遠隔作用でも重力やクーロン力は説明できます。
というより、『接していなければ作用は伝わらない』という前提こそが、人間の
鈍い感覚が生み出した迷信なのです。
つまり、人間の感覚を過信した、人間の傲りの産物なのです。
となれば、もはや、『近接作用』や『場の理論』に固執しなければならない義務
はどこにも無いはずです。

               * * *

次回も引き続き『場の理論』の問題点に関する話をします。

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