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●第81回 第4章・遠隔作用と疑似近接作用(その11)

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当メールマガジンを御購読いただき、誠にありがとうございます。
相変わらず発行間隔が長くて、すみません。

さて、今回も遠隔作用と関連のある話です。
具体的には、前回の続きで、エネルギー配分が不平等になる話についてです。

なお、このメルマガは等幅フォントで御覧下さい。

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44.全く別の問題
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動的な電磁気現象、すなわち、誘導によって生じる電磁気作用は、重力やクーロ
ン力などとはかなり性質が異なることが、第77回〜前回(第80回)までの話
で御理解いただけたと思います。
そこで、この相違について、さらに詳しく調べていこうと思います。

まず、話の都合上、前回も示した三つの図を示そうと思います。

[図1]
        B
        ○
   ○
   A                 ○
                     C

[図2]
        B
        ○
   ○
   A


[図3]

   ○
   A                 ○
                     C

さて、前回の話では、図3の場合と図1の場合とでは、物体Cが物体Aから受け
る作用の強さが異なること(図3>図1)を示しました。
これは、重力やクーロン力の問題で言えば、物体Aの質量・電荷・磁荷が異なる
ことに相当します。
このことから、図3の問題と、図1の問題とは、全く別の問題であることがわか
ると思います。

また、前々回までの話で、図3の場合と図1の場合とでは、物体Cが物体Aから
受ける作用が働く時間が異なること(図3>図1)を示しました。
重力やクーロン力の問題でも、作用を受ける時間が異なるとなれば、条件が異な
る全く別の問題ということになるでしょう。
このことからも、図3の問題と、図1の問題とは、全く別の問題であることがわ
かると思います。

同じことが物体Bについても言えます。
つまり、図2の場合と図1の場合とでは、物体Bが物体Aから受ける作用が働く
時間も、作用の強さも、ともに異なります(図2>図1)。
ですから、図2の問題と、図1の問題とは、全く別の問題である、ということに
なるわけです。

これは、一見、当たり前のことのように思えるかもしれませんが、実はここに、
ある重要な問題が隠されているのです。
それは、『重ね合わせ』という問題です。

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45.重ね合わせが不可能
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上で述べたように、図3の問題と、図1の問題とは、全く別の問題です。
また、図2の問題と、図1の問題とは、これまた全く別の問題です。
ということは、
『図3と図2とを重ね合わせても、図1の状態にはならない』
ということになりますね。
つまり、これは、
『(電磁波のような)動的な電磁気現象では、重ね合わせの理が成り立たない』
ということを意味しているのです。
別の言い方をしますと、
『図1の問題を、図2と図3とに分けて考えることができない』
ということになります。

これは、重力やクーロン力には見られない特徴です。
重力やクーロン力では、重ね合わせが可能です。
物体B(C)が存在しようがしまいが、物体C(B)が物体Aから受ける作用に
違いはありません。
ですから、図3と図1、あるいは、図2と図1は、(物体Aとの相互作用という
ことに関しては)同じ問題なのです。
それ故、図3と図2を重ね合わせ、図1の問題とすることができるわけです。
これは逆に言うと、図1の問題を、図2と図3とに分けて考えることができると
いうことです。
つまり、図2と図3の二つの問題を各々別々に解き、それらを重ね合わせること
で、図1の問題を解くことができる、というわけです。

ところが、動的な電磁気現象では、すでに述べたように、重ね合わせの理が成り
立たちません。
このため、図1を図2と図3とに分けて考えるということはできないのです。

このように、動的な電磁気現象では、重ね合わせの理が成り立たちません。
その理由は、既に説明したように、第三者の影響で、作用の強さや、作用が働く
時間が変わってしまうからです。
このため、第74回で述べた『一対一思想』、すなわち、考察の対象を二者に限
定してしまうやり方は通用しないのです。
動的な電磁気現象では、嫌でも多体問題になってしまうのです。

そう言われると、あることと同じであることに気付くでしょう。
そう、これは遠隔作用の特徴と同じです。
このことから、少なくとも動的な電磁気現象は、遠隔作用として扱わなければな
らないことがわかると思います。
静的な電磁気現象(クーロン力)も遠隔作用で説明できる現象です。
となれば、近接作用に固執しなければならない義務は、どこにもないはずです。

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46.エネルギーと重ね合わせ
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ところで、動的な電磁気現象では、どうして(第三者の影響で)重ね合わせの理
が成り立たなくなってしまうのでしょうか?
それは、作用にエネルギーが関係しているからです。

動的な電磁気現象、すなわち、誘導によって生じる電磁気作用の発生には、運動
がかかわってきます。
運動が無ければ、誘導によって生じる電磁気作用は発生しません。

一方、運動があれば、運動エネルギーがあることになります。
このことから、誘導によって生じる電磁気作用には、作用を及ぼすものの運動エ
ネルギーが関係していることがわかるでしょう。

厄介なことに、(運動)エネルギーというものは、相手に作用を及ぼして仕事を
すると、失われてしまいます。
つまり、変化してしまうのです。
このため、誘導によって生じる電磁気作用も変化してしまうものなのです。

さて、作用を受けるもの(仕事をされるもの)の数が違ってくると、作用を及ぼ
すものの(運動)エネルギー(の変化の仕方)も違ってきます。
その結果、個々のものに働く作用が違ってくることになるのです。

図1の場合も、図3や図2の場合にくらべて、作用を受ける物体の数が多い(違
っている)ので、個々の物体に働く作用が違ってきてしまうのです。
これでは、「図3+図2=図1」にはなりません。
重ね合わせの理が成り立たなくなるのは、こういうわけなのです。

ちなみに、重力やクーロン力では、その発生に運動がかかわってきません。
ですから、作用に(運動)エネルギーはかかわってはきません。
このため、作用を受けるものの数が違っても、個々のものに働く作用は違っては
こず、同じであり、それ故、重ね合わせの理が成り立つのです。

こうしてみると、作用に運動エネルギーがかかわってくるか否かが、大きなポイ
ントであることがわかるでしょう。

一般に、エネルギーがかかわってくる(現象の)問題では、重ね合わせの理は成
り立ちません。
これは知っておいて損はないと思います。

とにかく、作用に運動エネルギーがかかわってくるということが、動的な電磁気
現象の特徴を把握する上で、非常に重要なポイントとなりますので、しっかりと
マスターしておいて下さい。

それはともかく、マックスウェル電磁気学では、動的な電磁気現象でも、重ね合
わせの理が成り立つとしています。
これは全くいただけない話です。
そのために事実との矛盾を起こし、量子論のような周転円的理論が必要になって
きてしまうのです。
では、マックスウェル電磁気学では、なぜ、重ね合わせを可能としているのでし
ょうか?
重ね合わせを可能にしている根拠とは、一体、何なのでしょうか?
それは、近接作用では極めて有意義なものであり、遠隔作用では意義がないもの
です。
それについては、近いうちに明らかになりますので、それまでもう少々お待ち下
さい。

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