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 N┃→          仮想力線電磁気学
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●第80回 第4章・遠隔作用と疑似近接作用(その10)

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当メールマガジンを御購読いただき、誠にありがとうございます。
相変わらず発行間隔が長くて、すみません。

さて、今回も遠隔作用と関連のある話です。
具体的には、前回の続きで、エネルギー配分が不平等になる話についてです。

なお、このメルマガは等幅フォントで御覧下さい。

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37.作用が弱まる
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まず、話の都合上、前回も示した三つの図を示そうと思います。

[図1]
        B
        ○
   ○
   A                 ○
                     C

[図2]
        B
        ○
   ○
   A


[図3]

   ○
   A                 ○
                     C

さて、前回までの話で、物体Cに作用が働く時間は、図3の場合にくらべて図1
の場合の方が短くなってしまうこと、そして、そのせいで、物体Cが受け取るエ
ネルギーが少なくなってしまうことを説明いたしました。
今回は、物体Cに働く作用の強さもまた、図3の場合にくらべて図1の場合の方
が弱くなってしまうことを説明しようと思います。
これは非常に重要なことで、クーロン力や重力には無い特徴ですから、しっかり
と身につけて下さい。

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38.なぜ時間に制限があるのか?
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まず、前回までの話の復習です。
どうして物体Cが受け取るエネルギーは、図1の方が図3よりも少なくなってし
まうのでしょうか?
それは、作用を受ける時間が短いからでした。
物体Aが作用を及ぼせる時間には制限があります。
図1では、物体Bのために、その制限時間が、図3よりも短くなってしまうので
した。

それでは、なぜ、物体Aが作用を及ぼせる時間に制限があるのでしょうか?
それは、物体Aが放出するエネルギーが有限だからでしたね。
物体Aが有する(運動)エネルギーは有限なのですから、当たり前です。

これが、もし、物体Aに強制力が働いている場合は、話が違ってきます。
物体Aは強制力により無限のエネルギーを得ることができ、それ故、時間無制限
に他に作用を及ぼし続けることができます。
電磁波のような波動の問題の場合、こうした強制力の存在を前提としたものが多
いのですが、ここで取り上げている問題はそうではありませんので、注意して下
さい。

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39.なぜ作用が生じるのか?
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さて、それでは、なぜ、物体Aが(運動)エネルギーを失うと、作用を及ぼすこ
とができなくなってしまうのでしょうか?
それは、「動的な電磁気現象による作用が、どのようにして生じるか?」という
ことを考えればわかることです。

動的な電磁気現象による作用は、誘導によって生じます。
『電磁誘導』や『磁電誘導』が、そうです。
これらの現象は、力線の運動によって説明されましたね。
力線の運動は、そのもとになる物体(電荷)の運動によって生じるものです。
つまり、動的な電磁気現象による作用は、運動によって生じるものなのです。

そして、運動を表す状態量(の一つ)が、速度です。
電磁誘導や磁電誘導の式には、速度の項( vb, vd )が存在します。

 {E} = -{vb}×{B}

 {H} = {vd}×{D}

一方、運動エネルギー E は、質量を m 、速度を v とすれば、

 E = ( 1 / 2 )・m・( v ^ 2 )

で表されます。
ですから、運動エネルギーがゼロになるということは、速度がゼロになるという
ことになるのです。

ここまで来れば、もうおわかりでしょう。
物体Aが運動エネルギーを失えば、運動エネルギーはゼロになり、速度はゼロ、
故に、電磁誘導も磁電誘導も起こらず、物体Cに働く(電磁気)作用はゼロにな
ってしまうわけです。
これが、物体Aが(運動)エネルギーを失うと、作用を及ぼすことができなくな
ってしまう理由です。

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40.作用が弱くなる理由
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そこで、再び、図1と図3を比較してみましょう。
物体Bがエネルギーを奪い取る分、図1の方が図3よりも、物体Aのエネルギー
の失い方が大きいことは、おわかりいただけると思います。
ということは、図1の方が図3よりも、物体Aの運動エネルギーが早く低い状態
になることになりますね。
つまり、作用を及ぼし始めてからの時間が同じであれば、図1の方が図3よりも
物体Aの運動エネルギーが低いことになります。
ということは、物体Aの速度もまた、図1の方が図3よりも小さいことになりま
す。
速度が小さければ、電磁誘導や磁電誘導によって生じる電磁気作用は弱くなりま
す。
こういうわけで、図1では図3よりも、物体Cに働く作用が弱くなってしまうわ
けです。

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41.第三者の作用の強さへの影響
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このように、動的な電磁気現象による作用では、第三者の存在によって、作用の
強さが弱くなってしまうのです。
つまり、第三者である物体Bによって、物体Cが物体Aから直接受ける作用の強
さが弱くなってしまうのです。
これは、重力やクーロン力には無い特徴です。
極めて重要な違いです!

ここで注意して欲しいのは、ここで議論している作用が、「物体Aから『直接』
受ける作用」であることです。
重力やクーロン力でも、物体Bからの作用で、物体Cが受ける作用が変わること
はあります。
特にクーロン力の場合は、符号が物体Aと物体Bで逆の場合、物体Aからの作用
が弱められるように見える場合があります。
しかし、それは、あくまで見かけ上のことです。
つまり、それは、物体Aからの作用と、物体Bからの作用の和、すなわち、重ね
合わせの結果であって、物体Aからの直接の作用の強さが変わる(弱くなる)わ
けではありません。

これに対し、動的な電磁気現象による作用では、物体Aからの直接の作用の強さ
が変わって(弱くなって)しまうのです。
こんなことは、重力やクーロン力では起こりません。
このあたりを混同しないように十分注意してください。

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42.距離の違いで大差
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さて、第三者の存在によって、作用の強さが弱くなってしまうことは、物体Bに
とっても言えることです。
つまり、物体Bが物体Aから受ける作用の強さは、図2よりも図1の方が、物体
Cのせいで、弱くなるのです。

ただし、違いもあります。
それは、弱まり方が、物体Cにおける弱まり方よりも少ないことです。
これについて、説明しましょう。

第三者の存在によって、作用の強さが弱くなってしまうのは、上の話からわかる
ように、第三者が物体Aの(運動)エネルギーを奪うからです。
したがって、第三者のエネルギーの奪い方が大きいと、作用の弱まり方も大きく
なります。
逆に、第三者のエネルギーの奪い方が小さいと、作用の弱まり方も小さくなりま
す。

そこで、物体Bと物体Cについて、それぞれ考えてみましょう。

まず、物体Bが受ける作用を弱らせる第三者となるものは、物体Cです。
物体Cは、物体Aからの距離が(物体Bよりも)遠いことから、受ける作用も小
さく、される仕事も小さい。
故に、奪うエネルギーも小さい。
このため、物体Bの作用の弱まり方は小さいわけです。
つまり、物体Bの受ける作用は、(図2とくらべて図1では)それほど弱まらな
いわけです。

これに対し、物体Cが受ける作用を弱らせる第三者となるものは、物体Bです。
物体Bは、物体Aからの距離が(物体Cよりも)近いことから、受ける作用も大
きく、される仕事も大きい。
故に、奪うエネルギーも大きい。
このため、物体Cの作用の弱まり方は大きいわけです。
つまり、物体Cの受ける作用は、(図3とくらべて図1では)大幅に弱まること
になるわけです。

以上のことから、作用の強さの差が広がることがわかるでしょう。
もともと、物体Aからの距離の差から、物体Cの方が物体Bよりも作用の強さが
弱いわけですが、第三者による作用の弱まり方が物体Cでは大きいため、作用の
強さの差がさらに拡大してしまうわけです。
このため、図1において物体Bと物体Cがそれぞれ受ける作用の強さの差が、単
純に距離の違いからイメージされる程度よりも大きくなってしまうわけです。
これは、重力やクーロン力では見られない特徴です。

さて、前回までの話からわかるように、物体Bと物体Cに関して、受ける作用の
強さに差があれば、受け取るエネルギーも差が出てきます。
そして、受ける作用の強さの差が広がれば、当然、受け取るエネルギーの差も大
きくなります。
つまり、エネルギー配分の不平等が、より一層ひどくなる、ということです。

このように、動的な電磁気現象による作用の問題では、距離の違いによって、極
端なエネルギーの偏在が起こるのです。
これは、重力やクーロン力の問題では見られない特徴です。

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43.アナロジーは通用せず
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以上の話から、動的な電磁気現象による作用の問題では、静電(磁)場の問題の
解法が通用しない(アナロジーが通用しない)ことがわかるでしょう。
ところが困ったことに、マックスウェル電磁気学では、電磁波(光)のような動
的な電磁気現象の問題で、静電(磁)場の問題の解法を、ほとんどそのままの形
で流用している(アナロジーを乱用している)のです。
このため、事実との矛盾が起こり、その穴埋めのために、量子論が必要になって
くるのです。

実は、このあたりに、仮想力線電磁気学が量子論的な効果を説明できる秘密が隠
されているのです。
詳しいことは、次回以降、少しずつ明らかにしていきたいと思います。

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