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 N┃→          仮想力線電磁気学
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●第8回 概要(その8)

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前回に引き続き、疑似近接作用の入門的な説明をします。

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28.相手を選べない
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前回、遠隔作用では、全空間の全物質が関わってくるという話をしました。
そこで、前回示した図1をもう一度、ご覧下さい。

     o         I
     F      H  o
            o
   o   ○  o    ○        <図1>
   E   A  C    B    o
                    D

            oG

電荷Aから電荷Bへの作用には、電荷C〜Iの全てが関わってくることになりま
す。
ですが、
「なぜ、EやDといった関係なさそうな電荷まで、関わってくるのだ?」
と疑問に思われた方も、ひょっとするといらっしゃったのではないでしょうか?

ここで気付いてほしいのは、
『電磁気作用は相手や方向・位置を選べない』
という事実です。

電荷Aは電荷Bに作用を及ぼそうとしますが、同時に電荷Eなど、他のあらゆる
電荷にも、作用を及ぼしてしまうのです。
つまり、電荷Aは、『電荷Bだけ』とか、『電荷Bのある方向・位置だけ』とい
う具合に、作用を及ぼす相手や方向・位置を選択することができないのです。

同様に、電荷Bは電荷Aから作用を受けますが、同時に電荷Dなど、他のあらゆ
る電荷からも作用を受けるのです。
つまり、電荷Bは、『電荷Aだけから』とか、『電荷Aのある方向・位置だけか
ら』という具合に、作用を受ける相手や方向・位置を選択することができないの
です。

こうしたことから、一見関係なさそうな電荷からも、干渉を受けるのです。
復習になりますが、遠隔作用では、作用を及ぼすものと、受けるものとの間の空
間以外の空間に存在する物質の影響をも受けるのです。
これが、マックスウェル電磁気学のような近接作用理論との大きな違いの一つで
す。
疑似エーテルについて考察するときは、全空間の全物質について考えなければな
らない理由が、これでおわかりになったと思います。

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29.主役も脇役もない
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さて、上で述べたことは、AやB以外の電荷にも言えます。

たとえば、電荷Fについて考えると、電荷A以外の全て電荷からも作用を受けま
す。
また、電荷B以外の全ての電荷にも作用を及ぼします。
同様のことが、図中の電荷はもちろん、全空間の全電荷に言えるのです。

このように、全空間の全電荷は、互いに作用を及ぼし合っているのです。

さて、このことから言えるのは、『媒体(誘電体、磁性体)』という概念は、相
対的なものにすぎないということです。
なぜなら、媒体となる物質(を構成している電荷)も、作用を受けたり、及ぼし
たりしているからです。

言い忘れましたが、電荷Aは電荷Bからも反作用という形で作用を受けます。
つまり、電荷Bは、電荷Aから作用を受けるだけでなく、作用を及ぼすこともし
ているのです。
よくよく考えてみれば、『作用』『反作用』の区別は相対的なものです。
つまり、
『どの立場から見るか?』
で決まるもので、絶対的なものではありません。
一方から見れば『作用(反作用)』であるものは、もう一方の側から見れば『反
作用(作用)』なのです。

このように、遠隔作用の世界では、『作用を及ぼすもの』『作用を受けるもの』
『媒体となるもの』の区別は、相対的なものにすぎないのです。

電磁波の場合で言うと、『光源』と『受光体(電磁波を受信するもの)』と『媒
体』の区別は、あくまで相対的なものにすぎないということです。

語学の分野にたとえますと、これは『人称』の区別に相当します。
一人称(私)、二人称(あなた)、三人称(彼・彼女)という区別は、相対的な
ものです。
ある人にとって自分は『私』ですが、相手から見れば『あなた』であり、他人か
ら見れば『彼・彼女』なのです。

もう一度、整理していうと、仮想力線電磁気学では、
 1.作用を及ぼすもの
 2.作用を受けるもの
 3.疑似エーテル
の区別は、あくまで相対的なものとなります。
これも、近接作用理論であるマックスウェル電磁気学などと異なる部分です。

さて、以上のような理由から、遠隔作用では全ての物質(電荷)を平等に扱わな
くてはならなくなります。
したがって、従来なら『観測者』と言われた『光を感知するもの(作用を受ける
もの)』を、『観測者』と呼ぶわけにはいきません。
なぜなら、全ての物質(電荷)を、
『光(作用)を受けるものであると同時に、光を発する(作用を及ぼす)もの』
として扱わなければならないのですから。
遠隔作用では、『観測者』は、『その問題を扱っている人間』を意味します。
この点に気をつけて下さい。

もっとも、仮想エーテルにより、疑似近接作用的に問題が扱える場合は、『観測
者』という言葉を、従来どおりの意味で使うことがありますが…。

『受光体』という聞き慣れない言葉を使うのは、こういう理由からです。

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30.関わる度合いは不平等
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全空間の全物質が作用に関わってくるといっても、全ての物質が同じ度合いで関
わってくるわけではありません。
極めて大雑把な言い方をするならば、作用を及ぼす物体や、作用を受ける物体に
近い物質ほど、関わり方が強くなります。
また、作用を及ぼす物体と受ける物体を結ぶ線分に近い物体ほど、関わり方が強
くなります。
これらから遠ざかれば遠ざかるほど、関わり合いは弱くなります。

これは、電磁気作用の大きさが、距離に依存していることと関連があります。
つまり、近いほど作用が大きく、遠いほど小さいということです。

さて、ついでにもう一つ述べておくと、作用を及ぼすものと受けるものとの距離
が近くなるほど、遠隔作用性が強くなります。
その理由は、こうです。
距離が近くなれば作用が強くなり、その分、その他の電荷との間に働く作用が相
対的に弱くなります。
このため、疑似エーテルとなる電荷の関わる度合いが弱まります。
これは疑似エーテルの関与が弱まることであり、その結果、疑似近接作用性が弱
まることになります。
こうして、遠隔作用性が強まるわけです。

それはそうと、これは、ある種の問題とよく似ていることに気付くでしょう。
それは、量子論的な問題です。
距離が近づくほど、つまり小さなスケールの問題ほど、量子論的な性格が強まり
ますね。
すでに述べたように、仮想力線電磁気学は、巨視的な問題も、微視的な(量子論
的な)問題も、統一的に説明できます。
しかも、両者は極めてスムーズにつながります。
実は、その秘密は、ここにあったのです。
詳しいことは、第4章で説明します。(かなり先の話ですが…)

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