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●第79回 第4章・遠隔作用と疑似近接作用(その9)

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当メールマガジンを御購読いただき、誠にありがとうございます。
発行周期が非常に長くなってしまって、すみません。

さて、今回も遠隔作用と関連のある話です。
具体的には、前々回からの続きで、エネルギー配分が不平等になる理由を考えま
す。

なお、このメルマガは等幅フォントで御覧下さい。

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33.違いは何か?
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まず、前回の三つの図を再度、示しましょう。

[図1]
        B
        ○
   ○
   A                 ○
                     C


[図2]
        B
        ○
   ○
   A



[図3]

   ○
   A                 ○
                     C


さて、前回の課題のヒントである『図1にあって、図3にないもの』とは、何で
しょうか?
答えは、もうおわかりのように、物体Bです。
つまり、図1における物体Bこそが、『物体Cが長い時間、作用を受けることを
出来なくするもの』なのです。

次に、その理由について考えてみましょう。

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34.受け手が増えると時間も減る
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図3では、物体Aから作用を受けるのは、物体Cだけです。
ですから、物体Aが放出するエネルギー全てを、物体Cが受け取ることになりま
す。
このため、物体Cは長い時間、作用を受けることができるわけです。

これに対し、図1では、物体Cの他に、物体Bも物体Aから作用を受けます。
ですから、物体Bもエネルギーを受け取るのです。

これは、物体Aの立場から言えば、物体Cだけでなく、物体Bにも仕事をしなけ
ればならない、ということになります。
つまり、物体Bにもエネルギーを与えなければならない、ということです。

すると、その分だけ、物体Aが単位時間あたりに失うエネルギーも大きくなるこ
とになります。
このため、それだけ早く物体Aのエネルギーが失われることになります。

一方、物体Aが放出するエネルギーは有限です。
よって、物体Aが仕事をすることができる時間、すなわち、作用を及ぼすことが
できる時間は短くなります。

以上のようなわけで、物体Cが物体Aから作用を受けられる時間が(物体Bが存
在しない図3の場合より)短くなってしまうのです。

作用を受ける時間が短くなってしまうと、受け取るエネルギーは少なくなってし
まいます。
こうして、物体Cは、物体Bのせいで、少ないエネルギーしか受け取れなくなっ
てしまうのです。

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35.距離の違いが生みだす不平等
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図1における物体Cが、図3における物体Cよりも少ないエネルギーしか受け取
れないことは、わかりました。
同様に、図2における物体Bよりも少ないエネルギーしか受け取れないことも、
おわかりいただけると思います。
それでは、同じ図1における物体Bとくらべると、どうでしょうか?

ここで、問題を単純化するために、物体Cと物体Bは、質量や電荷が等しい、と
します。

すると、物体Aから受ける作用の強さは、物体Aからの距離の違いから、

 物体C < 物体B

となります。
ですから、単位時間あたりに受け取るエネルギーも、

 物体C < 物体B

となります。

一方、物体Cと物体Bは、ともに物体Aという同じ相手から作用を受けるのです
から、両者が作用を受けられる時間、すなわち、エネルギーを受け取れる時間の
長さは同じです。
このため、単位時間あたりに受け取るエネルギーが大きい方が、沢山のエネルギ
ーを受け取れることになります。
よって、各物体が受け取るエネルギーは、

 物体C < 物体B

となるわけです。

以上で、前々回以来取り上げてきた問題、すなわち、距離の違いによってエネル
ギー配分が不平等になる理由が、ようやく説明できました。

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36.隠された重要問題
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さて、前々回以来取り上げてきた『距離の違いによってエネルギー配分が不平等
になる』という話は、定性的な結論だけを見ると、ごく当たり前のこと、今更取
り上げるまでもないことのように思えるかもしれません。
しかし、実は、そうではないのです。
そこには、極めて重要な問題が隠されているのです。
具体的に言うと、

 (1) 動的な電磁気現象(による作用)と、クーロン力や重力との違い

 (2) 遠隔作用と近接作用との違い

という問題です。
そして、これらは、従来、量子論によってしか説明できなかったことが、電磁気
現象として説明できるための重要なカギとなるものなのです。

定性的な結論よりも、話の過程に注目してください。
何度もつまずきましたね。
その理由は、『距離の違い→作用の強さの違い→受け取るエネルギーの違い』と
いう単純な論理が通用しなかったからです。
この問題では、『距離』の他に、さらに二つの概念がかかわってきました。
一つは、『時間』という概念。
もう一つは、『他者(によるエネルギーの横取り)』という概念です。
そして、これらの概念こそが、上で述べた(1)と(2)の問題に深く関係してくるも
のなのです。

実を言うと、定量的なことに注目すると、結論だけでも重要な問題を含んでいる
ことに気付きます。
それは、エネルギー配分の不平等が、単純に距離の違いからイメージされる程度
よりもひどくなることです。

というわけで、次回からは、こうした極めて重要な問題について説明していきた
いと思います。

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