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●第78回 第4章・遠隔作用と疑似近接作用(その8)

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当メールマガジンを御購読いただき、誠にありがとうございます。
発行が長期にわたって中断してしまって、すみません。

さて、今回は前回の続きで、やはり遠隔作用と関連のある話です。
第1章と重複するところがありますが、重要な部分ですので、復習を兼ねてお読
み下さい。

なお、このメルマガは等幅フォントで御覧下さい。

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29.前回の問題
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ここで、まず、前回の復習をしたいと思います。

前回は、エネルギーの配分が不平等になる要因の一つとして、距離のことを取り
上げました。
電磁気作用の大きさには、距離が関係してくるからです。

そこで、一つの物体(A)が、二つの物体(BとC)に作用を及ぼし仕事をする
ことで、エネルギーの授受が起こる問題を考えました。
物体Aからの距離が物体Bと物体Cとで異なっており、それ故、物体Aから受け
る作用の大きさが異なるような問題です。
具体的に図で示すと、たとえば下図のような問題です。

[図1]
        B
        ○
   ○
   A                 ○
                     C

ここで、ちょっと前回の訂正…というか補遺があります。(すみません。)
この問題における「作用」には、動的な電磁気現象による作用を考えます。
ちなみに、電磁波(光)も、動的な電磁気現象(による作用)の一種です。

さて、物体Cの方が、物体Bよりも遠くにあるので、作用が小さくなります。
それ故、物体Cの方が、物体Bよりも少ないエネルギーしか得ることができない
はずです。

ところが、
「たとえ遠くにあるために作用が弱くても、作用を受ける(仕事をされる)時間
 が長ければ、多くのエネルギーを得ることが可能なはず。よって、遠くにあっ
 ても、同じ大きさのエネルギーを得ることができるはずだ!」
というイッチャモンがついて、躓(つまず)いてしまったのですね。

では、このイッチャモンに反論するためには、何を指摘すれば良いのでしょう
か?

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30.イッチャモンの論理
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そのためには、まず、イッチャモンの論理を詳しく知る必要があります。
イッチャモンでは、図1の問題を、以下のような二つの問題に分解しています。

[図2]
        B
        ○
   ○
   A


[図3]

   ○
   A                 ○
                     C


そして、その上で、図2と図3とを比較して論じているのです。

つまり、こうです。
たとえ(距離が遠いために)受ける作用が小さくても、作用を受ける(仕事をさ
れる)時間が長くなれば、大きなエネルギーを得ることができる。
したがって、図3における物体Cも、十分長い時間作用を受け続ければ、図2に
おける物体Bと同じ大きさのエネルギーを得ることができるはずだ…
これが、イッチャモンの論理なのです。

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31.時間の制限
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さて、イッチャモンの論理がわかったところで、少しずつ反論していくことにし
ましょう。

イッチャモンで、物体Cが、受ける作用が小さいにもかかわらず、大きなエネル
ギーを得ることができることになってしまう原因は、長い時間、作用を受けるか
らです。
ですから、物体Cが大きなエネルギーを得られないようにするためには、長い時
間、作用を受けられないようにすればいいわけです。
つまり、言い換えれば、物体Cが作用を受けられる時間に、制限があることにす
れば良いわけです。
つまり、『時間(の制限)』こそ、イッチャモンを崩すポイントなのです。

また、このことから、エネルギーの配分を不平等にする要因として、作用を受け
る(または、及ぼす)『時間』が深くかかわっていることが、おわかりいただけ
ると思います。

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32.時間を制限するものは?
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それでは、物体Cが作用を受けられる時間を制限する原因となるのは、一体、何
でしょうか?

一つには、物体Aが他に与えられるエネルギーが有限である、ということが挙げ
られます。

物体Aが他に作用を及ぼし仕事をすれば、物体Aが有するエネルギーは減少しま
す。
そして、エネルギーが無くなってしまえば、もう他に仕事をする(エネルギーを
与える)ことが出来なくなります。
つまり、作用を及ぼすことが出来なくなります。

一方、物体Aが有するエネルギーは有限です。
よって、物体Aが作用を及ぼすことができる時間も有限(制限つき)ということ
になるわけです。

これは、言われてみれば(言われなくても)、当たり前のことです。
ところが、これが意外と気付きにくいことなのです。
すでに述べたように、電磁波は動的な電磁気現象(による作用)の一種ですが、
一方、電磁波のような波動の問題では、『強制力』の存在を前提とする問題が多
いのです。
『強制力』の存在を前提とする問題では、時間の制限はありません。
このため、時間が有限であることに気付きにくいのです。
ここで取り上げている問題は、『強制力』の存在を前提とする問題ではありませ
んので、混同しないよう御注意願います。

さて、物体Aが作用を及ぼす時間に制限があることはわかりました。
しかし残念ながら、これだけでは不十分です。
その理由は、こうです。
図3では、図2に比べて、物体Aから受ける作用は小さい。
ということは、物体Aが受ける反作用も小さい。
したがって、物体Aが単位時間あたりに失うエネルギーも少ない。
ということは、それだけ長い時間、相手に作用を及ぼし続けることができること
になる。
このため、物体Cは長い時間、作用を受け続けることが可能になり、大きなエネ
ルギーを得ることができることになってしまう…
またまた、躓(つまず)いてしまいましたね。

この状況を打開するためには、物体Cが長い時間、作用を受けることを出来なく
するものが、さらに必要になってきます。
では、それは何でしょうか?
ヒントは、図1にあって、図3には無いものです。
もう、おわかりですね。
正解は次回、説明いたします。

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