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 N┃→          仮想力線電磁気学
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●第75回 第4章・遠隔作用と疑似近接作用(その5)

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当メールマガジンを御購読いただき、誠にありがとうございます。

今回も、遠隔作用の特徴について解説します。
第1章と重複するところがありますが、重要な部分ですので、復習を兼ねてお読
み下さい。

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19.選民思想は通用しない
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前回に述べた『一対一思想』は、注目する対象を限定するという点で、『選民思
想』によく似ていると言えます。

映画、TVドラマ、アニメ、漫画、小説、…といった造りモノの世界では、主役
たちばかりが注目され、それ以外の人たちは軽視されます。
中には、主役たちさえ救われれば、それ以外の人たちがどうなろうと、知ったこ
とではない…といった作品さえあります。
こういうのも、広義の選民思想と言えるでしょう。
そして、それは単純明快ゆえ、非常にウケがよく、また、人々を熱狂させます。

物質を人にたとえるならば、近接作用の考え方は、まさに、この選民思想に通じ
るところがあると言えます。
近接作用では、作用を及ぼしあう相手を限定してしまいます。
また、作用にかかわってくる領域をも限定してしまうのです。
余談ですが、ひょっとしたら、近接作用のウケがいい理由も、こんなところにあ
るのかもしれません。

これに対し、遠隔作用では、このような選民思想的な考え方は通用しません。

作用を及ぼすものは、作用を受けるもの(相手)を選ぶことができません。
それ故、無数のもの(相手)に作用を及ぼすことになります。

同様に、作用を受けるものは、作用を及ぼしてくるもの(相手)を選ぶことがで
きません。
それ故、無数のもの(相手)から作用を受けることになります。

また、こうしたことから、作用にかかわってくる領域を限定することはできない
ことになるのです。

このように、遠隔作用では、選民思想的な考え方が通用しないのです。
選民思想的な考え方は、確かに、問題を単純化してくれますが、それが通用しな
い以上、それを持ち込むことは許されません。
遠隔作用のことを正しく理解するためには、近接作用では常識となっている選民
思想的な考え方を捨て去る必要があります。

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20.第三者たちの干渉のせいで…
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さて、遠隔作用では、作用を及ぼしあう相手を選べないので、『かかわってきて
ほしくないものまでが、かかわってくる』ことになります。

たとえば、二つの物体(AとB)に働く作用について考えてみましょう。
すると、物体Aは、物体Bに作用を及ぼしますが、実際には、物体B以外の物体
にも作用を及ぼすことになります。
同様に、物体Bは、物体Aから作用を受けますが、実際には、物体A以外の物体
からも作用を受けることになります。
このため、無数の第三者がかかわってくることになるのです。

問題は、この無数の第三者たちが、どのようなかかわり方をしてくるか?、とい
うことです。

もし、第三者たちのかかわり方が無視できるほど小さければ、物体Aから物体B
への作用の仕方は、遠隔作用的なものになるでしょう。
しかし、無視できるほど小さくない場合は、話が違ってきます。

たとえば、第三者たちが、物体Aから物体Bへの作用を打ち消すような作用を物
体Bに及ぼしたとしたら…
それは、物体Aから物体Bへの作用は遮蔽されてしまったのと同じことになるで
しょう。
このように、遠隔作用でも、遮蔽という現象は起こるのです。
ですから、「バリアの向こうにいる敵に攻撃を加える」といった、相手を限定し
て作用を及ぼすようなことは、不可能なのです。
これは、多くの人が遠隔作用に対して抱くイメージとは、かけ離れたものでしょ
う。

一方、第三者たちが、物体Aからの作用を、バケツ・リレーのごとく、次々と伝
えて行き、そしてついには、物体Bに伝えてしまったとしたら…
物体Aからの作用は、時間をかけて、物体Bに伝わることになりますね。
これは、物体Aから物体Bへ、近接作用的に作用が空間を伝わるのと同じように
見えるでしょう。
そう、これが『疑似近接作用』という現象です。
これなどは、多くの人が遠隔作用に対して抱くイメージとは、全く正反対のもの
でしょう。

このように、遠隔作用では、相手を選べない(ゆえに限定できない)ために、無
数の第三者たちがかかわってきて、思いもよらない現象が起こるのです。

人間社会でも同じですよね。
かかわってきてほしくない人たちがごちゃごちゃとかかわってくるために、たと
えば、
「自分の言いたいことが相手に伝わらない(邪魔される)」
とか、
「知られたくないことが相手や世間に知れわたってしまった」
といったことが起こったりします。
こうしたことを『たとえ』にしていただければ、遠隔作用の多様性も、理解しや
すくなるのではないかと思います。

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21.幾何光学的思考は通用しない
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ところで、作用を受けるもの(相手)を選べないというとは、作用を及ぼすもの
から見て、特定の方角に位置するものだけに作用を及ぼすことができない、とい
うことでもあります。
つまり、これは、あらゆる方角(に位置するもの)に対して作用を及ぼす、とい
うことです。

また、作用を及ぼしてくるもの(相手)を選べないというとは、作用を受けるも
のから見て、特定の方角に位置するものだけから作用を受けることができない、
ということでもあります。
つまり、これは、あらゆる方角(に位置するもの)から作用を受ける、というこ
とです。

こうしたことから、(作用に)かかわってくる第三者たちは、作用を及ぼすもの
から見て、特定の方角に位置するものだけではないことになります。
また、かかわってくる第三者たちは、作用を受けるものから見て、特定の方角に
位置するものだけではないことになります。
つまり、かかわってくる第三者たちは、全空間の全物質ということになるわけで
す。

さて、このことから、遠隔作用の極めて重要な特徴の一つがわかります。
それは、光(電磁波)に影響を与えるもの(=第三者)についてです。

近接作用では、光(電磁波)に影響を与えるのは、光源と受光体とを結ぶ線分上
の領域(正確には、線分の近傍)だけ、と考えます。

 ☆━━━━━□   ☆光源 □受光体

興味深いことに、この考え方は、幾何光学の考え方と同じです。
それはそうと、電磁波(光)という現象も電磁気作用によるものですから、この
ことから、次のようなことが言えることになります。
光源は、(電磁気)作用を及ぼすものになるわけですから、(作用に)かかわっ
てくる第三者たちは、作用を及ぼす物体から見て、特定の方角に位置するものだ
け(上図で言えば━━━━━の部分だけ)、ということになります。

 ☆━…<この方角だけ>

また、受光体は、作用を受けるものになるわけですから、かかわってくる第三者
たちは、作用を受ける物体から見て、特定の方角に位置するものだけ(同上)、
ということになります。

 <この方角だけ>…━□

以上が、近接作用(や幾何光学)の考え方になります。

こうした考え方が、遠隔作用の考え方とは全く相容れないものであることは、も
うおわかりでしょう。
これは、すなわち、遠隔作用では、幾何光学的なものの考え方は通用しない、と
いうことを意味します。
つまり、遠隔作用では、光(電磁波)に影響を与えるのは、光源と受光体とを結
ぶ線分上の領域だけではなく、それを含めた全空間(の全物質)となるのです。

このことから、遠隔作用では、誘電率や透磁率や屈折率の考え方が、近接作用の
場合とは全然違ってきます。

また、こうした特徴から、遠隔作用では、近接作用では相対論によらなければ説
明できないような現象が、相対論なしに電磁気現象として説明できるのです。
具体的に言うと、

 ・太陽などの天体の近くを通る光線の曲がり(重力による光線の曲がり)

 ・赤方偏移

 ・(光速度に関する)引きずり効果

などが、そうです。
これらについては、この第4章で説明する予定です。

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