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 N┃→          仮想力線電磁気学
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●第73回 第4章・遠隔作用と疑似近接作用(その3)

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前回に引き続き『第4章』のイントロ的な話として、第1章では割愛した近接作
用の問題点について述べようと思います。

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10.近接作用の制約
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近接作用において、物体が直接関係することができるのは、その物体と接してい
るものに対してだけです。
したがって、物体が相手方のことについて直接知ることができるのも、その物体
と接しているものについてだけ、となります。
速度についても、例外ではありません。
相手方の物体が離れている(接していない)場合、その速度を直接知ることはで
きないのです。

この場合、相手方の物体の速度を知るためには、たとえば力線のような『相手方
の速度を知らせてくれるもの』が必要になります。
そういうもの無しでは、相手方の物体の速度を知ることはできず、それ故に、速
度が現象にかかわってくることはできなくなるのです。

相対論や量子論では、こうした致命的な欠陥をごまかすために、座標(系)を乱
用するトリックを用いている、ということを、前回、お話ししました。

要するに、近接作用では、自分と接しているもののことしかわからないために、
こうしたトリックが必要になってくるわけです。

少し話が異なりますが、量子論(量子力学)に出てくる『位置の定まらない確率
的な存在』とか『波のような広がりをもつ存在』という概念も、実は、そうした
近接作用の欠陥をごまかすために考案されたアイデアなのです。
もっとも、こちらについては、『相手方の物体の速度』といったことまでは知ら
せてはくれず、たとえば、『相手方のスリットの開閉』といったような単純なこ
としか知らせてはくれないのですが…。

とにかく、近接作用では、自分と接しているもののことしかわからないという制
約があるために、力線のような『相手方の速度を知らせてくれるもの』が必要に
なったり、そうでなければ、座標(系)を乱用するトリックが必要になったりす
るわけです。
この制約は、近接作用が抱える致命的な欠点と言えます。

それならば、そんな制約を持たない理論を採用すればいいのです。
後で述べるように、遠隔作用には、そのような制約はありません。
このことから、遠隔作用を採用するのが最も合理的と言えましょう。

もう聞き飽きたかもしれませんが、仮想力線電磁気学は、遠隔作用の理論です。

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11.エーテルの有難味?
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その前に、近接作用でも、座標(系)を乱用するトリックを用いなくてもすむ可
能性がないかどうか探ってみましょう。

既に示したように、力線という概念は、トリックを不要にしてくれます。
その他には何か考えられないでしょうか?
あるとすれば、それはおそらく、アインシュタインが否定した、運動を考える実
在としての『エーテル』でしょう。

今、物体Aがエーテルに対して静止しており、物体Bが物体Aに対して速度vで
運動している問題を考えます。
すると、物体Bの立場から見ると、エーテルが速度−vで運動していくのがわか
ります。(エーテルは、物体Bのあるあたりにも存在するため。)
物体Aはエーテルと同じ系にあるわけですから、物体Bは、エーテルの速度から
物体Aの速度も−vであることがわかることになります。
こうして、物体Bは、離れている(接していない)物体Aの速度を知ることがで
きるわけです。
この場合、エーテルが、相手方の速度を知らせてくれるものの役割を果たしてい
る、と言えましょう。

このように、エーテルの存在を認めれば、近接作用でも、座標(系)を乱用する
トリックを用いずに、相手方の速度を知ることが可能になる場合があるのです。
近接作用にとって、エーテルが如何に有り難い存在であるかが、これでおわかり
いただけると思います。

とはいえ、こうしたエーテルによる説明にも問題点はあります。

エーテルの運動から物体Bは物体Aの速度を知ることができますが、物体Aは物
体Bの速度を知ることはできません。
なぜなら、相手方の速度を知らせてくれるものであるエーテルは、物体Bの運動
状態に関係なく、物体Aに対して静止しているからです。
これは大問題です。

この他にも、
「物体Aがエーテルに対して静止していない場合は、どうするのか?」
とか、あるいは、
「そもそも、物体Aがエーテルに対して静止している(物体Aがエーテルとと
 もに運動している)といったことを、物体Bはどうやって知ることができる
 のか?」
といった問題があります。

やはり、エーテルによる説明にも、問題が多いようです。

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12.実在性のある力線の問題点
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こうしてみると、相手方の速度を知らせるものとしては、エーテルよりも力線の
方が勝っていることがおわかりいただけると思います。
力線は、物体Aと物体Bの双方から、それぞれのびています。
そして、物体Aからのびた力線は物体Aとともに、また、物体Bからのびた力線
は物体Bとともに、それぞれ運動します。
このため、二つの物体は、お互いに相手の速度がわかるわけです。

さて、これだけの長所をもつ力線ですが、これが実際に存在してくれないことに
は、何にもなりません。
残念ながら、力線が実在することを示す証拠はありません。
それに、二つの物体からそれぞれのびた力線というものを考えると、互いに交錯
したり、すり抜けたり、といったことが起こることになります。
これは、実在性のあるものとしては、かなり問題があると言えます。

こうしたことから、力線は、実在性のあるものではなく、仮想的なものとする方
が合理的であると言えましょう。
仮想的なものならば、互いに交錯したり、すり抜けたりしても、一向にかまわな
いからです。
ただ、そうなると、力線は、もはや、相手方の物体の速度を知らせてくれるもの
の役割を果たせなくなります。
したがって、そういうものを必要としない理論、すなわち、遠隔作用を採用する
ことになるわけです。

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13.遠隔作用と仮想力線
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遠隔作用では、離れている(接していない)ものも直接関係してきます。
このため、離れている(接していない)ものについても、知ることができます。
ですから、離れている(接していない)物体の速度も、直接知ることができるわ
けです。
つまり、遠隔作用では、近接作用のような『自分と接しているもののことしかわ
からない』といった制約が無いのです。

こういうわけで、相手方の物体の速度を知らせてくれるものは不要なのです。
よって、力線は、実在性のあるものである必要はなくなり、仮想的なものでよい
ことになるわけです。

最後に重要なことを一つ。
遠隔作用では、相手方の物体の速度を知らせてくれるものは不要なのですから、
そのことだけを考えれば、力線は不要なはずです。
しかし、電磁気作用の法則を記述したり、問題を考えたりする上で、力線は非常
に便利な道具(概念)です。
そこで、仮想力線電磁気学では、遠隔作用の理論でありながら、力線を仮想的な
ものとして活用しているわけです。

ちなみに、座標(系)というものも、仮想的なものであって、実在するものでは
ありません。

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