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●第7回 概要(その7)

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前回に引き続き、疑似近接作用の入門的な説明をします。

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25.到達距離は無限大
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前回、遠隔作用でも、複数の第三者(電荷)によって、連鎖反応が起こり、電磁
波という近接作用的な現象が生じるという話をしました。
では、作用を及ぼす物体と、及ぼされる物体の途中の空間が真空だったら、どう
なるのでしょう。
第三者がいなくなるわけですから、やはり、電磁波のような近接作用的な現象は
説明できないのでしょうか?

そこで、次のような問いを発してみましょう。
「はたして、電磁気作用の到達範囲はどれだけか?」
答えは、無限大です。
つまり、電磁気作用は無限遠まで届くのです。
それも、遠隔作用の場合、瞬間的に、です。
もちろん、遠くなればなるほど、強さは弱くなりますが、決してゼロにはなりま
せん。
したがって、無限遠に存在する物質にまで作用が及ぶことになります。

一方、これは見方を変えると、無限遠に存在する物質からも作用を受ける、とい
うことにもなります。

つまり、まとめていうと、全空間に存在する全ての物質と、互いに作用を及ぼし
合う、ということになります。

さて、ここで思い出してほしいのですが、遠隔作用を近接作用的にしてしまうの
は、(複数の)第三者である電荷の干渉でした。
一方、電磁気作用は、上で述べたように、無限遠にまで及びます。
ということは、全空間に存在する全物質が、作用に干渉してくるということにな
ります。

ここまで来ると、真空の問題における第三者(疑似エーテル)が何ものかがわか
るでしょう。
それは、全空間における全物質(を構成する荷電粒子)なのです。

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26.非局所性
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こうしてみると、遠隔作用では、近接作用とは全く異なった考え方が必要である
ことがわかると思います。
近接作用では、作用を及ぼす物体と、及ぼされる物体の途中の空間のことしか考
えません。
これに対し、遠隔作用では、全空間の全物質のことを考えなくてはならないので
す。

たとえば、下図のような問題の場合、電荷Aから電荷Bへの作用に(直接)関わ
ってくるのは、どの電荷でしょうか?

     o         I
     F      H  o
            o
   o   ○  o    ○        <図1>
   E   A  C    B    o
                    D

            oG

近接作用の場合は、電荷Cだけか、それにせいぜい電荷Hぐらいですね。
これに対し、遠隔作用の場合は、電荷C〜I全部が関わってくるのです。
スペースの関係上、電荷AとBにごく近いものしか記述できませんでしたが、実
際には、この図の外にある無数の電荷も関わってくるのです。
つまり、周囲にある全空間の全電荷が、疑似エーテルとして働くということにな
るのです。

このため、遠隔作用では、下図のような単純な『二体問題』でも、実際には『多
体問題』になるのです。


   ○     ○        <図2>
   A     B

このように、途中の空間が真空でも、全空間の全物質(を構成する荷電粒子)が
疑似エーテルとなることで、電磁波という近接作用的な現象が生じるのです。
途中の空間が真空でも、遠隔作用で近接作用的な現象が説明できることが、これ
でおわかりになったと思います。

ついでにいうならば、全空間の全物質が作用に関わってくるということから、マ
ックスウェル電磁気学では説明できない現象、つまり相対論や量子論を用いなけ
れば説明できない現象も、説明できるのです。
このことは後に詳しく説明しますが、今、とりあえず知っておいてほしいのは、
遠隔作用では、作用の及び方が非局所的だということです。

さて、ここまでくると、前回もヒントとして述べたように、『スケールを変え
て見てみる』ことの重要性に気付かれたと思います。

たとえば、図2の例でも、図をそのまま眺めているだけでは、電荷Aと電荷B、
そして、その途中の空間にしか見えてきませんね。
でも、より大きなスケールで見ると、その周りに無数の物質(を構成する電荷)
があることに気付きます。

前にも述べたように、人間の目には、小さい方にも、大きい方にも限界がありま
す。
後者の場合、視界や視野の外は見えません。
ですが、より大きなスケールで見ると、視界や視野が広がり、それまで見えなか
ったものが見えてくるのです。
異なる様々なスケールで物事を見ることの重要性が、ここでも認識できたと思い
ます。

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27.仮想エーテル
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遠隔作用では、全空間の全物質のことを考えなくてはなりません。
図2の例のような、見た目は単純な『二体問題』も、実際には複雑な『多体問題
』になってしまうのです。
多体問題は、扱いが非常に厄介です。
これでは、とても実用的とは言えません。

多体問題の中には、カオスになって予測不可能のものもあります。
ですが、幸い、全ての多体問題がそうなるわけではありません。
中には、波動のように、非常に単純な振る舞いをするものもあります。

そこで、仮想力線電磁気学では、こうした単純な振る舞いの問題を扱う際、全空
間における全物質からなる疑似エーテルと等価な働きをする、仮想的な疑似エー
テルを、途中の空間に考えます。
これを『仮想エーテル』といいます。(詳しいことは、いずれ説明します。)
とにかく、この仮想エーテルのおかげで、たとえば図2のような問題も、複雑な
多体問題から、単純な二体問題に置き換えて考えることができるようになるので
す。

しかも、仮想エーテルは実在しないものなので、そこ(途中の空間)では、あた
かも、電磁場が連鎖反応的に次々と生じているかのように見えます。
その様は、マックスウェル方程式で示される近接作用の現象と、そっくりなこと
に気付くでしょう。
こうして、仮想力線電磁気学は、マックスウェル電磁気学や、ファラデーの力線
の理論といった、従来の近接作用理論とつながることになるのです。

ただし、仮想エーテルによる解法は、万能ではありません。
あくまで、ある特定の問題に限られた近似的解法にすぎません。
それ以外の問題では、この近似は成り立たなくなります。
その場合は、やはり、遠隔作用の多体問題として解かなければなりません。
そして、こうした問題こそ、マックスウェル電磁気学では説明できない問題、す
なわち、これまで相対論や量子論でしか説明できなかった問題なのです。

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