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●第68回 第3章・力線の理論(その36)

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前回に引き続き『電極板の温度上昇』を取り上げます。
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99.漏れによる損失
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ここで、前回のおさらいをすると、次のようになります。
運動する荷電粒子●が減速(静止)するのは、制動波という電磁波が発生するか
らです。
また、電極板の温度が上昇するのは、発生した電磁波(制動波)を、電極板が吸
収するからです。

さて、そこで問題になるのは、『発生した電磁波(制動波)のうちの何割が、電
極板に吸収されるのか?』ということです。

もし、発生した電磁波の全てが電極板に吸収されるのなら、電極板は、●が失っ
た(運動)エネルギーを100%受け取ることになります。
したがって、電極板の温度上昇の仕方は、速度の増加による●の運動エネルギー
の増加を、よく示すものになるでしょう。

ところが現実には、発生した電磁波の一部は、電極板の外部に漏れ出てしまうの
です。
このため、その分、電極板に吸収される電磁波の割合は少なくなります。
したがって、電極板は、●が失った(運動)エネルギーを、一部しか受け取れな
いことになるのです。
そうなると、電極板の温度上昇の仕方は、速度の増加による●の運動エネルギー
の増加を、よく示すものとは言えなくなってくるのです。
なぜなら、前回の『97.定説の問題点』の『たとえ話』で示したような「思わぬ
増加があった」という錯覚があり得るからです。

こうしてみると、電磁波が、電極板の外部に漏れ出ることによる損失というもの
が、重要なポイントとなっていることが、おわかりいただけると思います。

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100.深度との関係
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それでは、上で述べた『漏れによる損失(の量)』は、何によって決まるのでし
ょうか?

たとえば、●が、電極板の表面近く、つまり、浅いところで(巨視的に見て)静
止したら、どうでしょうか?
電磁波(制動波)は、電極板の表面近く、つまり、浅いところで発生することに
なりますから、電極板の外部に漏れ出しやすくなります。
それ故、『漏れによる損失』が多くなり、電極板が受け取るエネルギーの割合が
少なくなります。

それでは、●が、電極板の内部まで入り込んだ場合、つまり、深いところで(巨
視的に見て)静止したら、どうでしょうか?
電磁波(制動波)は、電極板の深部で発生することになりますから、電極板の外
部に漏れ出しにくくなります。
それ故、『漏れによる損失』が少なくなり、電極板が受け取るエネルギーの割合
が多くなります。

以上のことから、『漏れによる損失』は、●が(巨視的に見て)静止する深度と
関係があることが、おわかりいただけると思います。

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101.速度と深度
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それでは、●が(巨視的に見て)静止する深度は、何によって決まるのでしょう
か?

それは、●の速度です。
速度が大きいほど止まりにくいため、電極板のより深部まで入り込んでいくこと
になります。

速度が大きいほど止まりにくくなるのには、二つの要因があります。

一つは、速度が大きいほど、運動量・運動エネルギーが大きくなるからです。

しかし、もう一つ、それ以上に大きな要因があります。
それは、前々回に説明した『減速抑制電気力』の影響です。
前回も述べたように、●は、電極板内の荷電粒子からの電気力を受けて減速(静
止)します。
ところが、●は運動しているため、それとは逆向きの電気力、すなわち、『減速
抑制電気力』が誘導により生じます。
言うまでもなく、『減速抑制電気力』は、●の減速を妨げる働きをします。
そして、『減速抑制電気力』は、速度が大きくなるほど、強くなります。
このため、速度が大きくなるほど、●は減速(静止)しづらくなるのです。

以上のことから、●が(巨視的に見て)静止する深度は、速度と関係があること
が、おわかりいただけると思います。

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102.速度との関係
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以上の話を整理すると、次のようになります。

  荷電粒子●の速度が小さい      荷電粒子●の速度が大きい
   ↓                 ↓
  減速抑制電気力が弱い        減速抑制電気力が強い
   ↓                 ↓
  止まりやすい            止まりにくい
   ↓                 ↓
  電極板の表面近くで静止       電極板の奥深くまで進入
   ↓                 ↓
  制動波の多くが電極板外に漏出    制動波の多くが電極板に吸収
   ↓                 ↓
  電極板の受け取り分が小       電極板の受け取り分が大
   ↓                 ↓
  温度上昇が小            温度上昇が大

これが、速度が小さい場合に比べて、速度が大きい場合に、温度上昇の仕方が異
常に大きくなる理由です。
つまり、速度の違いにより、●の運動エネルギーだけではなく、『漏れによる損
失』も違ってくるため、電極板の受け取り分の違いが、予想以上に大きくなって
しまった、というわけです。

このように、『電極板の温度上昇』も、『質量の増加』などという考え方を用い
ることなく、電磁気現象として説明することができるのです。

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103.補足のたとえ話
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ここで、補足のために、もう一つ『たとえ話』をしておきたいと思います。

損失というものは、時に、差を拡大するものです。
その最もわかりやすい『たとえ話』として、税金の話を取り上げてみたいと思い
ます。

税金は、納める(とられる)側からすれば、損失ですよね。
日本では、累進課税といって、豊かな者には税率を高く、貧しい者には税率を低
く課税しています。
こうすると、貧富の差が縮小されます。

それでは、逆に、豊かな者には税率を低く、貧しい者には税率を高く課税したら
どうなるでしょうか?

豊かな者は、損失が減り、ますます豊かになります。
一方、貧しい者は、損失が増し、ますます貧しくなります。
それ故、貧富の差が拡大されますね。

『電極板の温度上昇』も、これと同じです。

  豊かな者 → 速度が大きい場合

  貧しい者 → 速度が小さい場合

  貧富の差 → 温度上昇の仕方の違い

と置き換えてみて下さい。
そうすれば、速度が小さい場合に比べて、速度が大きい場合に、温度上昇の仕方
が異常に大きくなる理由が、おわかりいただけると思います。

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