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●第66回 第3章・力線の理論(その34)

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今回は、前回まで説明した『ブレーキ電気力』の応用の話です。
なお、このメルマガは等幅フォントで御覧下さい。

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93.減速装置
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前回まで、巨大加速器での超光速への加速を不可能にする電磁気現象『ブレーキ
電気力』について説明しました。
ここで、電気力(クーロン力)によって、荷電粒子を加速する方法について、考
えてみましょう。
一つは、下図のように、前方からの引力を利用する方法です。

        □
        □
        □
     ●⇒
        □
        □
        □

もう一つは、下図のように、後方からの斥力を利用する方法です。

  ■
  ■
  ■
     ●⇒
  ■
  ■
  ■

ちなみに、●は加速される荷電粒子、■や□は電極内の荷電粒子で、■と●は同
符号、□と●は異符号の電荷です。

ならば、もし上の二通りの方法において、電極の荷電粒子の符号を逆にしたら、
どうなるでしょうか?

        ■             □
        ■             □
        ■             □
     ●⇒       または、       ●⇒
        ■             □
        ■             □
        ■             □

左の方法では、●は、前方から斥力を受けるので、減速させられますね。
一方、右の方法では、後方から引力を受けるので、こちらもまた、減速させられ
ることになります。
つまり、これらは、『減速装置』ということになります。

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94.減速抑制電気力
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さて、そこで問題になってくるのが、●が受ける電気力と、●の速度との関係で
す。

ここで、前回求めた『ブレーキ電気力』の式を、もう一度、見てみましょう。

 Ev = - ( ( v / c ) ^ 2 )・Eox'

巨大加速器の場合、Eox'は、●を加速させようとする電気力の電界でした。
そこで、Eox'の向き、すなわち、Eox'の値の符号を逆にすれば、今回の減速装置
の問題に、そのまま応用できることになります。
つまり、Eox'が、●を減速させようとする電気力の電界の場合でも、同じように
Evが発生することになるわけです。
この場合、Eox'は、減速させようとする電気力の電界ですから、Evは、減速を妨
げる働きをする電界、ということになります。
つまり、相対運動により、減速を妨げるような電気力が誘導される、ということ
です。
そこで、この電気力を『減速抑制電気力』と呼ぶことにしましょう。

さて、上の式を見ればおわかりのように、『減速抑制電気力』もまた、速度が大
きいほど強さが大きくなります。
そして、光速度において、もとの電気力(減速させようとする電気力)と等しく
なります。
したがって、●が受ける電気力(の合計)は、速度が大きいほど小さく、光速度
においてはゼロになります。
つまり、速度が大きいほど減速しづらくなり、光速度においては減速できなくな
るのです。

このように、『減速装置』においても、巨大加速器におけるブレーキ電気力と同
様に、その目的を妨げるような電気力が、運動により生じてしまうのです。

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95.運動と(電磁)場
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『減速抑制電気力』も、『ブレーキ電気力』も、本質的には全く同じものです。
ただ、加速・減速といった目的により、呼び方が変わるだけのことです。
いずれにせよ、重要なのは、運動によって、もとの電気力とは逆向きの電気力が
誘導されるということです。
この電気力は、もとの電気力を打ち消すような働きをします。
つまり、この電気力によって、見かけ上の電気力が弱まることになります。

これは、言い換えれば、(相対)運動すると、電気力が弱まってしまったかのよ
うに見える、ということです。
つまり、これは、運動により、電場が弱まってしまったかのように見える、とい
うことです。
このように、(電磁)場は、運動により変化するものなのです。
第1章で、『場は見かけ上のもので、実在性のないものである』ということを、
しつこく述べた理由が、これでおわかりになったと思います。

ところで、加速しづらくなることと同様に、減速しづらくなることも、また、あ
たかも質量が増大したかのような現象、と言えます。
もちろん、それは、これまで述べたように、運動により(電磁)場が変化しただ
けのこととして説明できるのです。

さらに、今回説明した『減速抑制電気力』を応用すると、運動による質量の増大
を示す現象とされてきた、もう一つの現象、『電極板の温度上昇』についても、
やはり、電磁気現象として説明できてしまうのです。
次回は、この現象について説明します。

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