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●第61回 第3章・力線の理論(その29)

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今回は『巨大加速器の問題』に関するイントロ的な話をします。
図があるので、等幅フォントで御覧下さい。

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83.運動を妨げる電磁気現象−誘導
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前回も述べたように、第52回で取り上げた『誘導型モーターの原理』は、『ブレ
ーキ現象』と言うことができます。
この『ブレーキ現象』は、ローレンツ力によって生じるものです。
そして、ローレンツ力は、『力線の理論』では、下記の式で示される電磁誘導と
いう現象として説明されます。

 {E} = - {vb}×{B}

ところで、『ブレーキ現象』は、『運動を妨げる現象』と言うことができます。
実は、電磁気現象、それも『誘導』が起こる現象では、こうした『運動を妨げる
現象』が少なくないのです。
たとえば、下図のような実験も、そうです。


   ■□  Ω      ■□ 磁石   Ω コイル
    ⇔

これは、コイルに磁石を近づけたり遠ざけたりしようとすると、それに逆らうよ
うな力が生じる、というものです。
つまり、磁石の運動を妨げるような作用が働くのです。
この現象は、力線の理論では、次のように説明されます。

 コイルに磁石が近づく(遠ざかる)
 ↓
 磁力線がコイルを横切る
 ↓
 コイルに起電力が生じる
 ↓
 コイルに電流が流れる
 ↓
 磁石の磁気と、反対(同じ)向きの磁気が生じる
 ↓
 磁石が押し返される(引き戻される)

これを、等価的な図で示すと、下図のようになります。


  f←■□   [□■]   コイルに近づく時
    →

   ■□→f  [■□]   コイルから遠ざかる時
    ←

ここで、[□■]および[■□]は、電磁石と化したコイルを表します。
2番目の『磁力線がコイルを横切る』という部分は、マックスウェル方程式向け
に言い換えるならば、『コイル内の磁界が強まる(弱まる)』となります。
いずれにせよ、3番目の現象が電磁誘導であることは、おわかりいただけると思
います。

このように、誘導が起こる現象では、運動を妨げる現象、すなわち、『ブレーキ
現象』がよく起こるのです。
そして、忘れてはならないのは、誘導という現象が、(力線の)運動によって起
こる現象であることです。

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84.もう一つの誘導との組み合わせ
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さて、誘導という現象には、電磁誘導の他に、磁電誘導という現象があります。
磁電誘導は、『力線の理論』では、下記の式で示される現象です。

 {H} = {vd}×{D}

実は、上で述べた『磁石とコイルの実験』でも、磁電誘導という現象が起きてい
るのです。
それは4番目の部分で、コイルに電流が流れると磁気が生じることです。
以前も説明しましたが、電流とは電荷の流れ(=運動)です。
電荷が運動すれば、それに伴って電気力線も運動し、横切っていくため、磁電誘
導により磁界が生じるわけです。

つまり、磁石の運動を妨げる磁界が生じる現象は、電磁誘導と磁電誘導という、二
種類の誘導が組み合わさった現象だったのです。
すなわち、

 1.(磁石の)磁界─<電磁誘導>→電界

 2.(電荷の)電界─<磁電誘導>→磁界

ということです。
このように、電磁誘導と磁電誘導の組み合わせより、磁石の運動を妨げるような
磁界が生じるのです。

ならば、同様に、(ただし、順番を入れ替えて)、磁電誘導と電磁誘導を組み合
わせれば、電荷の運動を妨げるような電界が発生することが、理論的に可能にな
るはずです。
すなわち、

 1.電界─<磁電誘導>→磁界

 2.磁界─<電磁誘導>→電界

という具合に、です。
実は、超光速への加速を不可能にする電気力、すなわち、『ブレーキ電気力』と
は、このようにして生ずるものなのです。

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85.光速度とは?
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『ブレーキ電気力』に関する具体的な話は次回以降に譲るとして、ここで『光速
度とは何か?』ということを、改めて考えてみましょう。

光速度とは、言うまでもなく『光の速度』です。
一方、電磁気学では、光は『電磁波』と説明されます。
そして、電磁波という現象は、電磁誘導と磁電誘導とが交互に繰り返し起こるこ
とによって生じます。
そこで、電磁誘導と磁電誘導の式を見てみましょう。
マックスウェル方程式では、

 rot {E} = - ( ∂ {B} / ∂ t )

 rot {H} = ( ∂ {D} / ∂ t )

力線の理論では、

 {E} = - {vb}×{B}

 {H} = {vd}×{D}

と表されますが、どちらの場合でも、

 B = μ・H

 D = ε・E

という関係から、εとμが関わってくることになります。
ちなみに、εは誘電率、μは透磁率です。
光速度cは、これらの式を解くことによって得られる値なのです。(ただし、力
線の理論では、この他に、力線の連続の式が必要になります。)
具体的に式で表すと、

 c = 1 / ( ( ε・μ ) ^ ( 1 / 2 ) )

です。
つまり、光速度cは、誘電率εと透磁率μとから求まる量なのです。

以上のことから、光速度cは、電磁誘導と磁電誘導とが組み合わさった現象にお
いて得られる値である、と言えることがおわかりいただけると思います。

また、このことから逆に、電磁誘導と磁電誘導とが組み合わさった現象では、光
速度cが出てくることが推測できます。

ならば、同様に、磁電誘導と電磁誘導の組み合わせによって生じる『ブレーキ電
気力』でも、光速度cが出てくることが推測できると思います。
実際、この電気力(前回の話で言えばfv)は、光速度で、もとの電気力(同fe)
と等しくなるのです。

ということで、次回からは、『ブレーキ電気力』発生の原理について、具体的に
説明していこうと思います。

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