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 N┃→          仮想力線電磁気学
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●第6回 概要(その6)

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今回から、疑似近接作用の入門的な説明を始めます。

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21.第三者の干渉
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本来は遠隔作用の現象なのに、見た目は近接作用的である現象を、仮想力線電磁
気学では、『疑似近接作用』と言います。
では、疑似近接作用は、どうして起こるのでしょうか?

ここで、『第2回』の『4.近接作用と遠隔作用』で、

  『途中の空間』という『第三者』が、作用の伝達に関わってくるのが『
  近接作用』であり、関わってこないのが『遠隔作用』である。

と説明したのを思い出して下さい。

疑似近接作用も、実は、第三者の存在によって起こる現象なのです。
といっても、それは空間ではありません。
遠隔作用では、空間は何の役割も果たさないからです。
では、何なのか?
それは、全空間に存在する物質(を構成する荷電粒子=電荷)なのです。
これらが干渉してくることで、作用の伝わり方が、近接作用的なものになってし
まうのです。

そこで、今回は、第三者の干渉により、作用が近接作用的なものになってしまう
様を説明します。
といっても、『力線の理論』の説明がまだですので、たとえを用いた説明をいた
します。

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22.遮蔽効果
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よく、『遠隔作用では、遮蔽効果が説明できない』という人がいますが、これは
完全な誤りです。
遮蔽効果は、『第三者の干渉』により、説明できます。
たとえを用いて説明しましょう。

  ある所に、A子さんという女性がいました。
  そのA子さんは、Bさんという男性に恋をしました。
  そこで、A子さんは、Bさんの気を惹こうと、最高のおめかしをして出
  かけました。
  ところが、Cさんという別の男性が、A子さんのその姿を見て、ぞっこ
  ん、一目惚れしてしまいました。
  そして、Cさんは、A子さんに関係を迫ります。
  A子さんは、Cさんに執拗につきまとわれます。
  Cさんのせいで、A子さんは、Bさんに会うこともできません。
  そうこうしているうちに、BさんはA子さんから遠ざかって、行ってし
  まいました…とさ。

あまり趣味のいいたとえ話ではないかもしれませんが、Cさんという第三者の男
性のせいで、A子さんの思いが邪魔されたことはおわかりになると思います。

遮蔽効果もこれと同じです。
障壁の向こうに作用を及ぼそうとしても、障壁という物質を構成している荷電粒
子が、その作用を打ち消すような働きをするのです。
この荷電粒子が、この場合の第三者です。
たとえば、正の電気力を及ぼそうとすれば、負電荷が集まってきて、もとの正の
電気力を打ち消す(弱める)働きをします。
また、磁力を及ぼそうとすれば、それを打ち消す磁力を発生させるような電流が
流れ、もとの磁力を打ち消す(弱める)働きをするのです。
このような現象は、静的な電磁気作用でも、動的な電磁気作用でも起こります。

実を言うと、この説明は、遠隔作用だけでなく、近接作用でも同じなのです。

このように、遠隔作用でも、遮蔽効果は説明できるのです。
ついでにいうと、誘電体や磁性体などの働きも、同じく説明可能です。

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23.疑似エーテル
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次に、第三者が、あたかも近接作用における媒体(エーテル)のような働きをす
る様を説明しましょう。
以下のたとえ話を見て下さい。

  D子さんは、Eさんという男性に恋をしました。
  でも、内気で消極的なD子さんは、なかなかEさんに告白できません。
  D子さんは、親友のF子さんに、恋いの悩みを打ち明けました。
  友達思いのF子さんは、D子さんの真剣な思いをEさんに伝えました。
  幸い、F子さんは、Eさんの幼なじみだったのです。
  とにかく、D子さんのおかげで、F子さんの思いはEさんに伝わりまし
  た。
  かくして、F子さんは、Eさんとめでたく結ばれました。
  めでたし、めでたし…

この話では、F子さんが、D子さんの思いを伝える役割をしていますね。
しかも、ここで気付いてほしいのは、F子さんは、D子さんから話を聞いてから
Eさんへの行動を起こしていることです。
したがって、Eさんに(F子さんの)思いが伝わるには、時間がかかります。
少なくとも、F子さんが直接、Eさんに告白する場合よりは、時間を要します。
音速(話声の伝わる速度)を無限大としても、F子さんを経由すると、時間を要
します。
つまり、F子さんは、あたかも近接作用の媒体(エーテル)のような働きをして
いるわけです。

電磁気作用においても、話は同じです。
たとえば、動的な電磁気現象による、電荷Aから電荷Bへの作用を考えるとき、
第三者となる電荷Cが関わってくることで、近接作用的になるのです。
つまり、電荷Aが電荷Cに作用を及ぼし、電荷Cが電荷Bに作用を及ぼすという
ことが起こるのです。
この問題では、動的な電磁気現象を扱っているので、電荷Cが電荷Bに作用を及
ぼすのは、電荷Cが電荷Aから作用を受けてからです。
したがって、電荷Cを経由する作用は、遠隔作用であっても、伝わるのに時間が
かかることになるのです。
この特徴が近接作用のそれと同じであることは、説明するまでもないでしょう。
つまり、電荷Cが、近接作用における媒体のような働きをするのです。
このような働きをするものを、仮想力線電磁気学では、『疑似エーテル』といい
ます。

このように、第三者の存在によって、遠隔作用が、見た目、近接作用的なものに
変わってしまうのです。

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24.遠隔作用の連鎖反応
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上の話では、疑似エーテルとなる電荷は一つだけでしたが、今度は下図のような
複数(C、D、E、F)の場合を考えてみましょう。


  ○  ○  ○  ○  ○  ○
  A  C  D  E  F  B

この場合、A→C→D→E→F→Bの順に作用が伝わっていくことになります。
これが前回の最後の部分で触れた、遠隔作用における連鎖反応なのです。
説明するまでもないですが、Aから遠い電荷ほど、位相が遅れます。
このため、これらの電荷は、あたかも近接作用のように振る舞います。

このように、遠隔作用でも、第三者となる電荷が複数存在することによって、そ
れらが連鎖反応を起し、電磁波という近接作用的な現象が生じることが、説明で
きるのです。

さて、疑似エーテルとなる電荷の数が増えれば増えるほど、作用の伝わり方はよ
りなめらかなものとなり、より近接作用に近くなってきます。
そして、ついには、人間の目には、それがあたかも連続体の媒体を伝わっている
かのようになります。
この状態が、『疑似近接作用』というわけです。
仮想力線電磁気学では、近接作用という概念は、こうしたある種の多体問題の近
似にすぎないとされます。

               * * *

ところで、このような説明をすると、次のような疑問が生じてくるでしょう。
「真空の場合は、どうなんだ?」と。
作用を及ぼす物体と、及ぼされる物体の途中の空間が真空だったら…
つまり、そこに疑似エーテルとなる電荷がなかったら…
やはり、近接作用的な現象は、説明できない…
そう思いますよね。
でも、説明できるのです。
というより、真空でも、疑似エーテルとなる電荷は存在するのです。
では、それは、一体、どこにあるというのでしょう?

ヒントは、次の二つです。

 1.電磁気作用の到達範囲は?

 2.スケールを変えて見てみる。

答えは、次回をお楽しみに…。

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