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 N┃→          仮想力線電磁気学
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●第54回 第3章・力線の理論(その22)

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引き続き、ローレンツ力に関連する話として、惑星の地磁気と自転に関する話を
します。
絵文字の図があるので、等幅フォントで御覧下さい。

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61.アンバランス
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前回、惑星の昼側と夜側とで、正反対の作用が働くために、両者が打ち消しあっ
てしまい、自転も地磁気も説明できなくなる、という話をしました。


      ↑ 公転方向

     / ̄\
 昼 ↓│  │↓ 夜     天の北極側から見た図
     \_/


そこで、もし、昼側の作用が、夜側の作用よりも大きかったら、どうなるでしょ
うか?


      / ̄\
 昼 │││  │↓ 夜
   ││ \_/
   \/


これだと、昼側の作用の方が勝るため、惑星は反時計回りに自転するでしょう。

昼側の作用が大きくなるためには、言うまでもなく、昼側におけるローレンツ力
が大きくなれば良いわけですね。

また、そうであれば、電子の流れも、反時計方向の流れが勝ることになり、北が
S極、南がN極の電磁石となり、前回の終わりの部分で提起された問題は全て解
決されます。

それでは、ローレンツ力が、昼側で大きくなるためには、どうあればよいのでし
ょうか?

ローレンツ力の大きさは、磁場を横切る速度や、磁場の強さなどによって決まり
ます。

 {F} = q・( {vq}×{B} )

一方、磁場を横切る速度は、昼側も夜側も同じです。
電荷q(の分布)についても同じとみなしてよいでしょう。
となれば、磁場の強さが、昼側の方が大きければよい、ということになります。

実は、太陽磁場の特徴から、昼側の方が磁場が強くなるのです。
次に、そのことを、簡単ですが、説明しましょう。

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62.プラズマの働き
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太陽からは、太陽風というものが吹いています。
太陽風の主体は、プラズマという電気を帯びた粒子(の流れ)です。
このプラズマが、実は、太陽の磁気を、遠くまで運んでいるのです。

ふつう、プラズマのような荷電粒子は、つる巻き状に、磁力線に沿うような運動
をします。
一方、太陽自身の磁気は、それほど遠くには及んではいません。
このため、粒子としてのプラズマが存在しても、太陽磁場はそれほど遠くまでは
及ばないことになります。

ところが、電磁流体としてのプラズマには、『磁力線の凍結』という概念があり
ます。
これは、磁力線はプラズマに凍結してしまう傾向がある、というものです。
このため、プラズマは磁力線とともに、あるいは磁力線はプラズマと一緒に動く
ことになるわけです。

そこで、電磁流体としてのプラズマが、『風』となって、太陽から外に向かって
吹くと、磁力線も、プラズマに引っ張られるような形で、外に向かってなびくよ
うになるのです。
こうして、磁力線はかなり遠方までのびることになり、結果的に磁場が遠くまで
運ばれることになるわけです。

このように、太陽磁場は、太陽風、すなわち、プラズマによって運ばれるわけで
す。

さて、惑星には、太陽から、この太陽風が吹きつけることになります。
夜側は惑星の陰になるわけですから、惑星自身が防風の役割を果たし、太陽風の
浴び方は弱くなります。
これに対し、昼側は、太陽風をもろに浴びます。

一方、すでに述べたように、太陽磁場は太陽風(プラズマ)によって運ばれてき
ます。
したがって、太陽風の浴び方の強い昼側の方が、太陽磁場の強さが大きくなるこ
とになるのです。

その結果、磁場を横切る速度が同じでも、昼側の方が、ローレンツ力が大きくな
ります。
このため、反時計回りに回そうとする作用の方が大きくなり、惑星は反時計回り
に自転することになるわけです。
また、電子の流れも、反時計方向の流れの方が優勢になり、北がS極、南がN極
の地磁気が発生することになるわけです。

                * * *

以上が、内惑星のような比較的小型の惑星についての話です。
次回は、外惑星に多い比較的大型の惑星について説明します。

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