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 N┃→          仮想力線電磁気学
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●第52回 第3章・力線の理論(その20)

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今回から、ローレンツ力に関連する話をしようと思います。
絵文字の図があるので、等幅フォントで御覧下さい。

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56.運動によって生じる不思議な力
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マックスウェル方程式で説明・記述できない電磁気現象の一つに、ローレンツ力
があります。
電荷が磁場を横切るように運動すると、磁場と運動方向の双方に垂直な向きに、
電荷に電気力が働きます。
この電気力が、ローレンツ力です。

力線の理論では、ローレンツ力を説明・記述することが可能です。
力線の理論における電磁誘導の式、

 {E} = -{vb}×{B}            (1・1)

は、(単位電荷に働く)ローレンツ力をそのまま表していると言えましょう。
電荷が磁場を横切るように運動する場合、電荷の系から見れば、磁力線が横切っ
ていくことになります。
すると、磁力線の方向と、磁力線が運動する方向の、双方に垂直な方向に電気力
を受ける、というわけです。

ちなみに、電荷を q 、電荷の速度を {vq} 、電荷に働くローレンツ力を {F} と
して、磁場(をもたらしているもの)の系から見た式を記すと、

 {F} = q・( {vq}×{B} )

となります。

このように、力線の理論では、マックスウェル方程式では不可能な、ローレンツ
力の説明や記述が可能なのです。

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57.誘導型モーター
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さて、ローレンツ力を利用したものの一つに、誘導型モーターというものがあり
ます。
その原理について説明しましょう。

まず、下図を御覧下さい。


       _____
      /    /l
     /    / l
     l ̄ ̄ ̄ ̄l  l
     l  S  l  l
     l    l /l →
     l    l/ l
     l ̄ ̄ ̄ ̄l  l
     l    l  l
     l  N  l /
     l    l/
       ̄ ̄ ̄ ̄
   _____________
  /            /
 /            /
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

磁石の下に、銅板があります。(磁石とは接していない)。
そこで、磁石を向かって右側(矢印)の方向に動かすと、銅板はどうなるでしょ
うか?、という問題です。

磁石(のN極)からは、磁力線がのびています。
そして、磁石を動かすと、磁力線も一緒に動きます。(下図は正面から見た図)


    │    │→
    │  N  │
    └────┘
    │││││→
 ─────────────
    ↓↓↓↓↓→
 

すると、銅板の中の自由電子にとっては、磁力線が横切っていくわけですから、
電磁誘導により、磁力線と、磁力線の運動方向の双方に垂直な方向に電気力(ロ
ーレンツ力)を受けます。
このため、自由電子は、すぐ上の図で言えば、画面手前から奥へ向かう方向に運
動します。
これを、銅板を真上から見た図で記すと、下図のようになります。(磁石は画面
の手前にあり、向かって右側に動くことになります。)

 ┌────────────┐
 │            │
 │  ↑ ↑ ↑     │
 │  ・ ・ ・     │
 └────────────┘

さて、自由電子がこの方向に運動すると、自由電子は、この方向にも(磁石から
のびた)磁力線を横切ることになります。
すぐ上の図で言えば、磁力線の向きは、画面手前から奥へ向かう方向です。
このため、銅板中を運動する自由電子は、向かって右側にローレンツ力を受けま
す。(下図)

 ┌────────────┐
 │   → → →     │
 │  ↑ ↑ ↑     │
 │  ・ ・ ・     │
 └────────────┘

その結果、銅板は向かって右側、すなわち、磁石の動く方向と同じ方向に動くこ
とになるのです。

このように、銅板は、磁石を追いかけるように運動するのです。

誘導型モーターは、この現象を利用したものです。
もっとも、実際のモーターの場合は、銅板が円筒形(または、円筒状のかご型。
円盤形のものも、原理的にはあり得る)のローター(回転部分)となります。
また、磁石の代わりに、(複数極の)固定された電磁石(ステーター)がありま
す。
そして、磁石を動かす代わりに、電磁石のコイルに流れる電流を工夫するなどし
て、回転磁界を作ります。
この回転磁界を追いかけるようにして、ローターが回るわけです。

以上が、誘導型モーターの原理です。

                 * * *

さて、ここで述べたことを応用すると、惑星の地磁気や自転というものが、電磁
気現象として説明できるようになります。
次回は、そのことについて説明します。

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