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●第50回 第3章・力線の理論(その18)

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今回は、運動の問題についてのまとめと注意点についてです。
絵文字の図があるので、等幅フォントで御覧下さい。

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50.疑似エーテルと光速度
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これまで、第46回から第49回にわたって、運動の問題を取り上げましたが、
それらをまとめると、次のようになります。

光源が受光体から十分に離れている場合、受光体から見た光速度は、光源の運動
に関係なく、受光体に対する疑似エーテルの相対運動によって決まります。

もし、受光体に対して疑似エーテルが静止していれば、光速度は変わりません。

       ・ ・ ・    / ̄ ̄ ̄      ☆ 光源
   u ←☆ 〜〜〜〜〜> □ <  c        □ 受光体
       ・ ・ ・    \___      ・ 疑似エーテル

もし、受光体に対して疑似エーテルが相対運動していれば、その相対速度のぶん
だけ、光速度は変化します。

      v
      ←・←・←・    / ̄ ̄ ̄
   u ←☆ 〜〜〜〜〜> □ < c - v
      ←・←・←・    \___


こうしてみると、従来のエーテル理論と同じだと思われるかもしれませんが、実
はそうではありません。
疑似エーテルによる疑似近接作用という現象は、見た目こそ近接作用によく似て
いますが、本来は遠隔作用の現象の一種であって、全くの別物なのです。
それ故、本当は似ていない部分の方が多いのです。

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51.疑似エーテルの運動は?
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近接作用の場合、媒体の役割を果たすのは、光源と受光体の途中の空間(に存在
するもの)だけです。
したがって、媒体の運動に関しても、この部分(に存在するもの)についてだけ
考えればよいわけです。
それ故、媒体の運動を、たとえば「速度v」というように、一意に定めることが
容易にできます。

これに対して、疑似近接作用(=遠隔作用)の場合、媒体の役割を果たすもの、
すなわち、疑似エーテルとなる物質は、全空間の全物質です。
したがって、媒体の運動を考えようとするならば、全空間の全物質の運動を考え
なければならないことになります。

いうまでもなく、全空間の全物質が、同じ方向に同じ速さで運動するなどという
ことは、現実にはあり得ないことです。
地上で静止している物体でさえ、その内部では、物体を構成する素粒子(荷電粒
子)が、めまぐるしく相対運動しているのです。
こうしたことから、全空間の全物質が同じ速度で運動するなどということは、現
実にはあり得ないことになるのです。

となれば、媒体の運動を、「速度v」というように、一意に定めることはできな
い、ということになります。

このように、疑似近接作用(=遠隔作用)の場合は、近接作用の場合と違って、
媒体の運動というものを把握するのが、非常に難しいのです。

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52.近似で我慢!
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厳密に解こうとすれば、疑似エーテルの運動というものは、結局、全空間に存在
する全ての物質の数だけ考えなければならないことになります。

しかし、これではあまりにも非実用的なので、近似を行います。

まず一つには、『時間的平均をとる』というものです。

たとえば、物体中を運動する荷電粒子などは、時間的平均をとると、ある範囲に
分散した形で静止している、とするわけです。

もう一つは、『疑似エーテルとしての働きの強い物質だけに注目し、働きの弱い
物質を無視する』というものです。
こうすることによって、運動について考えなければならない物質の数を減らし、
問題を単純化するのです。

たとえば、電磁波(光)の問題の場合、光源や受光体の近くに存在する物質(の
運動)や、光源と受光体とを結ぶ線分の近くに存在する物質(の運動)だけに注
目し、それ以外の場所の物質(の運動)は無視するわけです。
これは、第46回から第49回で取り上げた問題で、条件の形で出てきました。

このような近似によって、疑似近接作用の問題は、面倒な多体計算をせずに解く
ことが可能になるのです。
そして、疑似エーテルの運動も、「速度v」というように、一意に定めることが
可能になってくるのです。

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53.灯台もと暗し
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しかしながら、このような近似による問題の単純化が常に可能というわけではあ
りません。
それが可能なのは、第46回から第49回で取り上げたような、ごく限られた問
題だけなのです。

しかし、それ以上に困るのは、誤った近似をすることで、誤った理論的結論を導
いてしまうことです。

よくあるのが、『(疑似エーテルとなる)周囲の物質が相対運動しているのに、
観測される光速度が変化しない』というものです。
これは、『疑似エーテルとしての働きの強い物質』を選ぶのを誤った例です。
それは、(相対運動している)周囲の物質ではなく、観測装置を構成している物
質なのです。
観測装置を構成している物質は、観測装置自身に対しては静止しているのですか
ら、『疑似エーテルとしての働きの強い物質』は静止していることになり、観測
される光速度は変化しないことになるのです。

マイケルソン・モーレーの実験などは、こうした誤りを犯しかねない問題です。
(第46回参照)

また、前回の『49.光速度の観測』で取り上げた問題なども、そうです。

こうした誤りは、遠くの方ばかり見て、すぐ近くのことが見えていないことから
くるもので、まさに『灯台もと暗し』と言えましょう。

これに対し、『光源と受光体の途中の空間』という特定の領域しか注目せず、そ
れ以外の周囲の場所に疑似エーテルとなる物質が存在していることに気づかない
のは、『井の中の蛙』といったところでしょうか?

『灯台もと暗し』と『井の中の蛙』は、一見、対照的なことのように思われます
が、『ある特定のところにしか注目せず、他の部分が全然見えていない』という
点では、全く同じなのです。

遠隔作用では、このような失態を演じぬよう、十分注意しなければなりません。

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