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●第44回 第3章・力線の理論(その12)

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今回は、平面波を題材にして、力線の理論の式から、マックスウェル方程式を導
いてみます。

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33.前回の補足
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本題に入る前に、前回述べた(1・1・a)〜(1・2・c)式について、補足
説明しておきます。

たとえば、(1・1・a)式の右辺の第一項に、-vby・Bz という項があります
が、この vby は vbzy に等しいと言えます。
なぜなら、もとの磁力線の速度(のy成分)と、それを各成分に分解した磁力線
の速度(のy成分)は等しいからです。
右辺第二項についても同様で、これらのことから(1・1・a)式は、

 Ex = -vbzy・Bz + vbyz・By       (1・1・a')

とすることができます。
他の式についても同じく、

 Ey = -vbxz・Bx + vbzx・Bz       (1・1・b')

 Ez = -vbyx・By + vbxy・Bx       (1・1・c')

 Hx = vdzy・Dz - vdyz・Dy        (1・2・a')

 Hy = vdxz・Dx - vdzx・Dz        (1・2・b')

 Hz = vdyx・Dy - vdxy・Dx        (1・2・c')

とすることができます。

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34.平面波
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さて、それでは、本題に入りましょう。

今、x方向に進む平面波(の電磁波)を考えます。
また、簡単のために、空間の誘電率や透磁率は、全方向均一とします。

すると、x方向の電場や磁場は0となるので、

 Ex = 0

 Hx = 0

 Dx = ε・Ex = 0

 Hx = μ・Hx = 0

また、y方向の力線がz方向に運動したり、z方向の力線がy方向に運動したり
すると、電磁誘導や磁電誘導により、x方向の電磁場が発生してしまうことにな
ってしまうので、これらの運動速度は0としなければなりません。
したがって、

 vbzy = 0

 vbyz = 0

 vdzy = 0

 vdyz = 0

となります。

これらを、電磁誘導の式((1・1・a')〜(1・1・c')式)と、磁電誘導の
式((1・2・a')〜(1・2・c')式)と、力線の連続の式((3・6・1)
〜(3・6・6)式→第41回参照)とに、それぞれ代入すると、

 Ey = vbzx・Bz                     (3・7・1)

 Ez = -vbyx・By                    (3・7・2)

 Hy = -vdzx・Dz                    (3・7・3)

 Hz = vdyx・Dy                     (3・7・4)

 ( ∂ Hz / ∂t ) = - ( ∂( Hz・vbzx ) / ∂x )     (3・7・5)

 ( ∂ Hy / ∂t ) = - ( ∂( Hy・vbyx ) / ∂x )     (3・7・6)

 ( ∂ Ey / ∂t ) = - ( ∂( Ey・vdyx ) / ∂x )     (3・7・7)

 ( ∂ Ez / ∂t ) = - ( ∂( Ez・vdzx ) / ∂x )     (3・7・8)

という8本の式が得られます。

さて、Bz = μ・Hz ですから、(3・7・1)式より、

 ( Ey / μ) = vbzx・Hz

これを(3・7・5)式に代入すると、

   ( ∂ Hz / ∂t ) = - ( ∂( Ey / μ) / ∂x )

 ∴ ( ∂ Hz / ∂t ) = - ( ∂ Ey / ∂x ) / μ

 ∴ ( ∂ Ey / ∂x ) = - μ・( ∂ Hz / ∂t )     (3・8・1)

となります。
同様にして、

   ( ∂ Ez / ∂x ) = μ・( ∂ Hy / ∂t )      (3・8・2)

   ( ∂ Hy / ∂x ) = ε・( ∂ Ez / ∂t )      (3・8・3)

   ( ∂ Hz / ∂x ) = - ε・( ∂ Ey / ∂t )     (3・8・4)

が得られます。

こうして得られた4本の式((3・8・1)〜(3・8・4)式)は、実は、下
記のマックスウェル方程式から導かれる平面波の式と、全く同じなのです。

 rot {E} = - ∂{B} / ∂t        (2・1)

 rot {H} = ∂{D} / ∂t         (2・2a)

つまり、この二式に、平面波の条件を代入してやれば、同じ結果が得られるので
す。
したがって、(3・8・1)〜(3・8・4)式を解けば、電磁波を表す波動方
程式が得られ、当然、電磁波の解も得られることになるわけです。

かくして、マックスウェル方程式で表される現象が、力線の理論の式から導かれ
たことになります。
つまり、これは、力線の理論の式からマックスウェル方程式を導いたのと同じこ
とと言えます。

以上のことから、電磁気現象を記述するより基本的な式は、マックスウェル方程
式ではなく、力線の理論の式であることが、おわかりいただけたと思います。

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