========================================================================
 ━┓→
 N┃→          仮想力線電磁気学
 ━┛→
========================================================================
------------------------------------------------------------------------

●第43回 第3章・力線の理論(その11)

------------------------------------------------------------------------

当メールマガジンを御購読いただき、誠にありがとうございます。

今回は、数学に関する話をします。
具体的に言うと、ベクトルの外積の話です。
力線の理論における電磁誘導や磁電誘導の式に出てくるので、この機会に、簡単
ながら説明しておきたいと思います。

今回も、ホームページに図を掲載いたしました。
メルマガ中には、該当するホームページのURLを記してあります。

なお、一部、数式の記述で絵文字を用いておりますので、等幅フォントで御覧下
さい。

****************************************
32.外積について
****************************************

ベクトルには二種類のかけ算があります。
一つは内積、もう一つは外積です。

内積については、御存知の方も多いかと思います。
今、二つのベクトル、

 {a} = ( ax, ay, az )

 {b} = ( bx, by, bz )

があったとすると、これらの内積は、

 {a}・{b} = ax・bx + ay・by + az・bz

となります。
あるいは、ベクトルのなす角をθ(rad)とすると、

 {a}・{b} = |{a}|・|{b}|・cosθ

となります。(ちなみに、||はベクトルの大きさを表します。)
いずれにせよ、演算結果は同じで、スカラーとなります。
このため、内積は、スカラー積とも呼ばれます。

これに対し、外積の演算結果はベクトルとなるため、ベクトル積とも呼ばれてい
ます。
一般に、外積は、『×』を用いて、

 {c} = {a}×{b}

のように表されます。
この演算(外積)によって求まるベクトル{c}とは、次のようなベクトルです。
下記のホームページの図を見ながら、以下の説明をお読み下さい。
→ 43az.htm

まず、二つのベクトル( {a}と{b} )を二辺とする平行四辺形を考えます。
そして、この平行四辺形の面積を求めます。
ベクトル{c}の大きさは、この面積に等しく、

 |{c}| = |{a}|・|{b}|・|sinθ|

となります。

次に、ベクトル{c}の向きですが、これは、ベクトル{a}からベクトル{b}の方に
右ねじを回したときに、右ねじが進む向きとなります。
お気付きのように、ベクトル{c}の向きは、ベクトル{a}とベクトル{b}の両方に
対して垂直になります。(力線の理論における電磁誘導や磁電誘導の考え方の記
述にちょうどいいことがわかるでしょう。)

注意しなければならないのは、交換の法則が成り立たないことで、

 {a}×{b} = -{b}×{a}

という具合に、符号、すなわち、求まるベクトルの向きが逆になります。

以上が、外積という演算の定義と特徴です。

さて、外積の計算を、成分の形で記述すると、以下のようになります。

 {c} = ( cx, cy, cz )

とすると、

 cx = ay・bz - az・by

 cy = az・bx - ax・bz

 cz = ax・by - ay・bx

となります。

また、x、y、z方向の単位ベクトルを{i}、{j}、{k}とすると、

 {a}×{b} = ( ay・bz - az・by )・{i}
       + ( az・bx - ax・bz )・{j}
       + ( ax・by - ay・bx )・{k}

あるいは、

       │{i} {j} {k} │
 {a}×{b} = │ ax ay az │
       │ bx by bz │

とも記述されます。

ちなみに、力線の理論における電磁誘導や磁電誘導の式、

 {E} = -{vb}×{B}            (1・1)

 {H} = {vd}×{D}            (1・2)

を成分で示すと、下記のようになります。

 Ex = -vby・Bz + vbz・By        (1・1・a)

 Ey = -vbz・Bx + vbx・Bz        (1・1・b)

 Ez = -vbx・By + vby・Bx        (1・1・c)

 Hx = vdy・Dz - vdz・Dy         (1・2・a)

 Hy = vdz・Dx - vdx・Dz         (1・2・b)

 Hz = vdx・Dy - vdy・Dx         (1・2・c)

以上で、外積の計算はおわかりいただけたと思います。
次回は、平面波の電磁波を題材にして、力線の理論の式から、マックスウェル方
程式を導いてみようと思います。

========================================================================

バックナンバーに戻る