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●第40回 第3章・力線の理論(その8)

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当メールマガジンを御購読いただき、誠にありがとうございます。

前回に引き続き、力線の理論からマックスウェル方程式を導く話をします。
今回も『力線の連続の式』について説明します。
図(絵文字)があるので、等幅フォントで御覧下さい。

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25.前回の話との対応
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今回からは、前回の『たとえ』の問題の考え方を参考にして、実際に『力線の連
続の式』を導いてみます。
といっても、一回で全ての式を記述するのは困難なので、複数回に分けてお送り
致します。
どうか御了承下さい。

その前に、前回の『たとえ』の話と、これからする『力線』の話との対応を確認
しておきましょう。

まず、『倉庫』は『ある微小領域』に対応します。

また、『人』は『力線』に対応します。

したがって、『単位面積あたりの人の数』は『単位面積あたりの力線の本数』と
なります。
『単位面積あたりの力線の本数』は、『電場・磁場の強さ』すなわち『電界・磁
界の強さ』を表します。
つまり、『単位面積あたりの人の数』は『電界・磁界の強さ』に対応するという
ことです。

これらの対応がわかれば、これから述べる『力線の連続の式』の導出も、前回の
話をもとに理解できると思います。

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26.まずは最も単純な問題から…
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まず、下図のような微小領域ABCDを考えます。

      Y
      ↑
      │
      │ A B
      │ □
      │ D C
      ┼────→X
      /
     /
   └
  Z

ちなみに、四つの頂点の座標は、

 A ( x , y + dy , 0 )
 B ( x + dx , y + dy , 0 )
 C ( x + dx , y , 0 )
 D ( x , y , 0 )

とします。
この微小領域を出入りするZ軸方向の磁力線について考えてみましょう。

始めに、磁力線がX軸方向に動く場合を考えます。

すると、単位時間あたりにADから領域内に入ってくる力線の本数は、

 Hz・vbzx・dy

となります。
ちなみに、Hz は、(x,y,0) における磁界のZ軸成分を表します。
また、vbzx は、(x,y,0) における、Z軸方向の磁力線の速度のX軸成分を表し
ます。

同様にして、
単位時間あたりにBCから領域内に入ってくる力線の本数は、

 - Hz'・vbzx'・dy

となります。
ちなみに、Hz' は、(x+dx,y,0) における磁界のZ軸成分を表します。
また、vbzx' は、(x+dx,y,0) における、Z軸方向の磁力線の速度のX軸成分を
表します。

一方、単位時間あたりにおける領域内の磁力線の本数の増加量は、

 ( d Hz / dt )・dx・dy

となります。

したがって、以上の式から、

 ( d Hz / dt )・dx・dy = Hz・vbzx・dy - Hz'・vbzx'・dy

よって、

 ( d Hz / dt )・dx = Hz・vbzx - Hz'・vbzx'

となります。
この式を(3・2)式としましょう。

さて、数学的に、

 Hz' ≒ Hz + ( ∂ Hz / ∂x )・dx

 vbzx' ≒ vbzx + ( ∂ vbzx / ∂x )・dx

という関係があるので、これらを(3・2)式に代入し、高次の微小項を無視し
て整理すると、

 ( d Hz / dt )・dx = - ( ∂ Hz / ∂x )・vbzx・dx
             - Hz・( ∂ vbzx / ∂x )・dx

ゆえに、

 ( d Hz / dt ) = - ( ∂ Hz / ∂x )・vbzx - Hz・( ∂ vbzx / ∂x )

よって、

 ( d Hz / dt ) = - ( ∂( Hz・vbzx ) / ∂x )

この式から、

 ( ∂ Hz / ∂t ) = - ( ∂( Hz・vbzx ) / ∂x )

という式が得られます。
この式を(3・3)式としましょう。
これが、『力線の連続の式』の最も単純な例です。

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27.別の方向の運動成分
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今度は、磁力線がY軸方向へ運動する場合を考えましょう。
この場合も、単位時間あたりに、ABから出入りする磁力線の本数と、DCから出入
りする磁力線の本数、そして、領域内の磁力線の本数の増加量の関係を求めれば
よいのです。
すると、先ほどと同様にして、

 ( ∂ Hz / ∂t ) = - ( ∂( Hz・vbzy ) / ∂y )

という式が得られます。
ちなみに、vbzy は、(x,y,0) における、Z軸方向の磁力線の速度のY軸成分を
表します。
この式を(3・4)式としましょう。

さて、Z軸方向の磁力線は、X軸方向とY軸方向の両方に動くことができます。
したがって、単位時間あたりにおける磁力線の本数の増加量について考えるなら
ば、(3・3)式と(3・4)式を重ね合わせて、

 ( ∂ Hz / ∂t ) = - ( ∂( Hz・vbzx ) / ∂x )
            - ( ∂( Hz・vbzy ) / ∂y )

ということになります。
これが、Z軸方向の磁力線に関する『連続の式』ということになります。
これを(3・5)式とします。

                           (次回につづく)

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☆★ 注 ★☆

ここで、念のため、当メルマガにおける数式の記述法に関する注意点を記してお
きます。

まず、乗算(かけ算、スカラー積)では、必ず『・』が記入されます。
ですから、『aかけるb』は、『ab』ではなく、必ず『a・b』となります。
逆に言うと、『ab』は、『aかけるb』の意味ではなく、『エィビー』という
名の一つの数(変数、定数、…)を表すことになります。

また、演算の優先順位を表すのに、大括弧 [ ] や中括弧 { } は使いません。
したがって、たとえば、

  d + { c / ( a + b ) }

といった数式は、

  d + ( c / ( a + b ) )

という具合に、小括弧 ( ) のネストで表します。
これは、コンピューターの高級プログラミング言語のやり方と同じです。

ちなみに、当メルマガでは、中括弧 { } はベクトルを表すのに使用されます。

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