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 ━┓→
 N┃→          仮想力線電磁気学
 ━┛→
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●第39回 第3章・力線の理論(その7)

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前回に引き続き、力線の理論からマックスウェル方程式を導く話をします。
今回から『力線の連続の式』について説明します。
図(絵文字)があるので、等幅フォントで御覧下さい。

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21.入ってくる数
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『力線の連続の式』を導くためには、まず、単位時間あたりに領域に入ってくる
力線の本数を求めなければなりません。
そこで、今回は、その導出法を、よりわかりやすいたとえの問題を用いて説明し
ようと思います。

まず、次のような問題を考えてみましょう。
下図のように片側(左側)が解放された倉庫を考えます。

        ━━┓
          ┃
        ━━┛

そして、左側から人が一列に等間隔に並んで、倉庫の中に入ってくる状況を考え
ます。

    v
    →   ━━┓
  ・・・・・・  ┃
        ━━┛

ここで、『・』は人を表すとします。
また、全ての人は、左側に向かって、同じ速度vで移動しているとします。

そこで、問題ですが、単位時間あたりに、この倉庫に入ってくる人の数は、いく
らでしょうか?

それを考えるために、今、人と同じ速度で移動するロープを考えてみましょう。

    v
    →   ━━┓
  ──────  ┃
        ━━┛

ロープは速度vで移動しています。
したがって、単位時間あたりに倉庫の中に入ってくるロープの長さは、

 v・1 = v

となりますね。

そこで、先ほどの人の問題に戻って、単位長さあたりにどれだけの人がいるか?
ということを考えます。
人と人との間隔をLとすれば、単位長さあたりに存在する人の数nは、

 n = 1 / L

となります。

一方、上で述べたロープの問題で、単位時間あたりに倉庫に入ってくるロープの
長さはvだったわけですから、単位時間あたりに倉庫に入ってくる人の数は、

 (単位長さあたりの人数)×(単位時間あたりに入ってくる長さ)= n・v

となります。

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22.複数列の場合
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さて、今度は、人が一列ではなく、下図のように複数列の問題を考えてみましょ
う。

    v
    →
  ∴∵∴∵∴∵
  ∴∵∴∵∴∵━━┓
  ∴∵∴∵∴∵  ┃
  ∴∵∴∵∴∵━━┛
  ∴∵∴∵∴∵

図を見ればおわかりのように、この場合は、倉庫に入ってくる人たちと、入って
こない人たちがいます。
倉庫の左側の(入り)口の幅をHとすれば、倉庫に入ってくる人たちは、この幅
のエリアの人たちであり、それ以外のエリアの人たちは、倉庫には入ってきませ
ん。

そこで、単位面積あたりの人の数を(改めて)nとし、単位時間あたりに倉庫に
入ってくる人の数を求めてみましょう。

前の一列の問題の時は『入ってくる長さ』を考えましたが、複数列のこの問題で
は、『入ってくる面積』を考えます。(『ロープ』の代わりに、『幅Hの絨毯』
といったものを考えるとよいでしょう。)
単位時間あたりに入ってくる長さ(横方向)は、先の問題でも示したように、v
です。
一方、倉庫の(入り)口の幅は、Hです。
よって、単位時間あたりに入ってくる面積は、

 (単位時間あたりに入ってくる長さ)×(倉庫の(入り)口の幅)= v・H

となります。

さて、単位面積あたりの人数はnですから、単位時間あたりに入ってくる人の数
は、

 (単位面積あたりの人の数)×(単位時間あたりに入ってくる面積)
  = n・v・H

となります。

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23.出入り口が二つある場合
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さて、それでは、下図のように、倉庫の出入り口が左右に一つずつ(合計二つ)
ある問題を考えましょう。

       v1   v2
       →   →
  ∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵
  ∴∵∴∵∴∵━━━∵∴∵
  ∴∵∴∵∴∵ ? ∵∴∵
  ∴∵∴∵∴∵━━━∵∴∵
  ∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵

ここで、左側の出入り口の場所における人の速度をv1、単位面積あたりの人の数
をn1とします。
また、右側の出入り口の場所における人の速度をv2、単位面積あたりの人の数を
n2とします。
また、出入り口の幅は、左側も右側も同じHとします。

さて、単位時間あたりに、左側の出入り口から入ってくる人の数は、

  n1・v1・H

であることは、先の問題からおわかりになると思います。

一方、単位時間あたりに、右側の出入り口から入ってくる人の数は、

  −n2・v2・H

となります。
符号が負になったのは、図を見ればおわかりのように、人が右側へ進めば、倉庫
から出ていくことになるからです。
前回述べたことからもわかるように、『n人の人が出ていく』ということは、『
−n人の人が入ってくる』ということなのです。
これらのことを考えれば、右側の出入り口で符号が負になるのも、理解できるで
しょう。

さて、以上のことから、単位時間あたりに(左右の出入り口から)倉庫に入って
くる人の総数は、

  n1・v1・H − n2・v2・H

となるわけです。

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24.単位時間あたりの増加量
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さて、倉庫内の単位時間あたりの人の数の増加量は、単位時間あたりに倉庫に入
ってくる人の数に等しいことは、前回述べた話からも御理解いただけると思いま
す。
そこで、倉庫内の人の数をNとすると、単位時間あたりの人の数の増加量は、

  dN / dt

と表せますから、これまでの話から、

  dN / dt = n1・v1・H − n2・v2・H

となります。

さて、倉庫内の単位面積あたりの人数を(改めて)nとしましょう。
そして、倉庫の横幅、すなわち、左側の出入り口から右の出入り口までの距離を
Wとしましょう。
すると、

  N = n・H・W

となりますから、

   d(n・H・W) / dt = n1・v1・H − n2・v2・H

 ∴ (dn / dt)・H・W = n1・v1・H − n2・v2・H

 ∴ (dn / dt)・W = n1・v1 − n2・v2

となります。

こうして求まった式を(3・1)式としましょう。

さて、『力線の連続の式』も、この(3・1)式と同じ考え方で求まります。
つまり、『倉庫』を『(ある微小)領域』に、『人』を『力線』に、それぞれ置
き換えて考えればよいのです。
というわけで、次回は、今回述べた『たとえ』の考え方をもとに、『力線の連続
の式』を実際に導いてみます。

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