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 N┃→          仮想力線電磁気学
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●第31回 第2章・定説の問題点(その9)

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当メールマガジンを御購読いただき、誠にありがとうございます。

今回も『マックスウェル方程式』に関する問題点を取り上げます。

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28.万能ではない方程式
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前回まで、光速度不変という考えが、実はマックスウェル方程式の乱用の産物で
あったことを述べました。
ですが、そもそも、こうした乱用がまかり通ってしまう最大の原因は、マックス
ウェル方程式の運動の扱いが曖昧なことにあると言えます。
事実、これまでも見てきたように、マックスウェル方程式には、運動を記述する
項が存在しません。

こうしたことから、マックスウェル方程式は、運動の問題には適さないとするの
が賢明です。
もちろん、問題によっては、マックスウェル方程式でも解けるものもあります。
しかし、それは限られた一部の問題だけなのです。

つまり、ここで認識していただきたいことは、マックスウェル方程式が間違って
いるということではなく、マックスウェル方程式で解ける問題は限られていると
いうことです。
言い換えれば、マックスウェル方程式は、万能(万有)の方程式ではないという
ことです。

第1章でも述べましたが、マックスウェル方程式では、ローレンツ力が説明でき
ません。
言うまでもなく、ローレンツ力は、運動が関わってくる現象です。
こうした事実に目を向ければ、上で述べたことも理解できると思います。

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29.致命的欠陥
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マックスウェル方程式を、運動の問題に用いると、致命的な矛盾が生じる例を述
べましょう。

今、慣性運動(等速直線運動)する電荷を考えてみましょう。
電荷が存在するわけですから、当然、電荷の周囲に電場が生じます。
しかし、電荷は運動しているわけですから、電場は一定ではなく、電荷の移動と
ともに変化します。
すると、その周囲に磁場が生じることになります。
こうして生じた磁場もまた、一定ではなく、電荷の移動とともに変化するので、
その周囲に電場が生じることになります。
そうして生じた電場もまた、一定ではなく、電荷の移動とともに変化するので、
その周囲に磁場が生じ…ということが連鎖反応的に繰り返されます。
こうして、運動する電荷は、電磁波を発生させることになります。

ところが、電磁波を発生させると、電荷は、その分、エネルギーを失うことにな
ります。
このため、エネルギー保存則から、電荷は運動エネルギーを失わなければなりま
せん。
そして、そのためには、電荷の速度は減少しなければならないのです。
そして、やがては、電荷は静止することになるのです。

つまり、マックスウェル方程式によると、慣性運動する電荷はやがて静止するこ
とになるのです。

ところが、実際には、そうはなりません。
電荷は電磁波を発生させず、減速もしません。
つまり、事実と矛盾します。

加えて、それ以前に、理論的な矛盾があります。
系というものは、人間が自由に設定できます。
ですから、電荷を考察する系は、無数に存在することになります。
そして、運動する電荷は、これら、全て系に対して静止しなければならないこと
になるのです。
全ての系に対して静止するなど、有り得ないことであることは、言うまでもない
でしょう。

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30.苦しい言い訳
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もっとも、こうした矛盾を解決しようとする言い訳が無いわけではなりません。
それによると、
『慣性運動(等速直線運動)の場合、電荷は電磁場をまとって運動する』
とのことです。
確かに、そのような仮説を導入すれば、電磁波は生じず、(運動)エネルギーの
損失(=減速)も起こらないので、矛盾は解消されます。

しかしながら、これはあまりにも御都合主義的な仮説です。
なぜなら、電荷が加速度運動ではなく慣性運動していることを、空間はどうやっ
て知ることができるのか?、その理論的な根拠が全く示されていないからです。

そもそも、加速度運動と慣性運動とを区別する意義は、どこから得られるのでし
ょうか?
少なくとも、マックスウェル方程式からは、そんなものは得られはしないはずで
す。
マックスウェル方程式には、運動を記述する項が存在しないのですから、これは
当然のことと言えます。

また、電荷が電磁場をまとって運動するということは、電磁場が空間から独立し
た存在になる、ということです。
これは『場の理論』の考え方に反することです。
むしろ、力線の理論や、遠隔作用の考え方に近い…と言えるでしょう。

以上のことから、この仮説も退けられることがおわかりいただけると思います。

このように、マックスウェル方程式は、運動の問題では矛盾が生じてしまうこと
が多く、それ故に、運動の問題には不向きなのです。
ですから、そこから導かれた光速度不変という考えも、無根拠と言わざるを得な
いのです。

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31.場の実在性の問題
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ところで、マックスウェル方程式を運動の問題に用いると、なぜ、上で述べたよ
うな矛盾が生じてしまうことになるのでしょうか?

理由は二つあります。
一つは、『変動する電磁場の周囲に、新たな電磁場が生じる』とする誘導の考え
方にあります。
そして、もう一つは、『場』というものを『実在性あるもの』としていることで
す。
こうしたことから、『電場→磁場→電場→磁場→…』といった連鎖反応が起き、
電磁波が発生してしまうことになるのです。

電磁波が発生しないことにするためには、こうした連鎖反応を断ち切る必要があ
ります。
そして、そのためには、『場』は実在性の無いもの、としなければなりません。

しかしながら、そうしてしまうと、電荷が慣性運動(等速直線運動)ではなく、
加速度運動している場合に、電磁波が発生する現象が、説明できなくなってしま
います。
なぜなら、場の実在性を否定してしまうと、上で述べた電磁場発生の連鎖反応は
起こらないことになってしまうからです。

結局、どうやっても、矛盾は解決できないのです。

こうしたことから、運動の問題を解くためには、マックスウェル方程式の考え方
ではダメだということが、おわかりいただけると思います。
そして、これに代わる考え方として、力線の理論の考え方が必要になってくるわ
けです。

マックスウェル電磁気学も、もともとは、ファラデーの力線の理論を参考にして
作られたものだったわけですから、これは理論の原点に帰ることだと言うことが
できましょう。
詳しくは、第3章で説明する予定です。

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