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●第29回 第2章・定説の問題点(その7)

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今回も『マックスウェル方程式』に関する問題点を取り上げます。

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21.方程式を解くには?
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前回申し上げたように、一般にマックスウェル方程式を用いて問題を解くために
は、数値解析によらねばならず、そのためにはコンピューターに頼らざるを得な
いのです。

しかしながら、『一様な空間を直進する電磁波』といった問題の場合は、条件付
きながら、数値解析によらずに方程式を解くことができます。
この場合、(前回述べた)『空間(の場所)』の式だけを用いて、問題を解くこ
とになります。
これは言い換えれば、空間のことしか考えないということです。
本来、光源のある場所には、(前回述べた)『光源のある場所』の式を用いなけ
ればならないのですから、こうした解き方は厳密には正しくありません。
しかしながら、実用的には、光源から十分離れた場所においては、これで十分良
い近似が得られるので、こうした解き方が行われるのです。
コンピューターを用いない、すなわち、数学的に解こうと思うのなら、こういう
方法によってしか、マックスウェル方程式を解くことはできないのです。
したがって、コンピューターの無かった時代の人たちが、こうした解析法に頼ら
ざるを得なかったのは、仕方のないことだったと言えるでしょう。

しかしながら、この解析法が成り立つには、上で述べたように条件があります。
すなわち、考察の対象とする空間が、光源から十分離れているということです。
そして、この条件を満たすためには、光源は静止していなければなりません。
なぜなら、光源が運動してしまうと、それまで『光源から離れた場所』だった場
所が、『光源のすぐ近く』あるいは『光源のある場所』になってしまう可能性が
あるからです。
例えば、下図を見て下さい。

  t1     t2   t:時刻
  ☆−−−−→☆
  x1     x2   x:座標

時刻t1には『光源から離れた場所』だった座標x2も、時刻t2には『光源のある場
所』になってしまっています。
こうしたことを防ぐためには、やはり、光源は静止していなければならないので
す。

つまり、まとめて言うと、従来の数学的な解析法は、光源が静止していなければ
成り立たないということです。
言い換えれば、光源が運動する問題には、数学的な解析法は通用しないというこ
とです。

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22.光源を無視する
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したがって、光源が運動する問題について、数学的な解析法で導かれた結論は、
全く根拠の無いものなのです。
実は、『マックスウェル方程式からは、光源が運動しても、光速度が変化しない
ことが導かれる』という主張は、このようにして導かれたものなのです。
光速度不変という考えも、そうです。
こうして見ても、定説の胡散臭さがおわかりいただけると思います。

数学的な解析法では、『空間(の場所)』の式しか解きません。
つまり、『光源のある場所』の式が用いられないのです。
これは、光源の存在を無視することに他なりません。
つまり、光源は存在しないことになるのです。
ありもしない光源が運動しても、電磁場に影響が出るわけがないですよね。
したがって、光速度も変化しないことになってしまうのです。

このように、『光源が運動しても、光速度は変化しない』という説(解釈)は、
実は、マックスウェル方程式の誤用・乱用の産物なのです。

また、このことから、前々回(第27回)『15.相対性との不適合』の話も、理
解できると思います。(磁石とコイルの相対運動による電磁誘導の問題)
『光源が運動しても、光速度は変化しない』という説は、『空間(の場所)』の
式しか用いないで導かれたものです。
したがって、同じ考え方をするならば、磁石の存在は無視されることになるので
す。
ありもしない磁石を動かしても、コイル内の磁場が変化するわけもなく、起電力
も生じないことになるわけです。

いずれにせよ、光速度不変の根拠をマックスウェル方程式に求めることはできな
いことが、おわかりいただけたと思います。

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23.もう一つの例
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上記と同じマックスウェル方程式の誤用・乱用の産物として、もう一つ、『先進
波』があります。
『先進波』は(何と)過去に向かって進む波と言われています。
なぜ、こんな奇妙なものが捻り出されたのでしょうか?

これも、『空間(の場所)』の式だけを解くことによって導出されたのです。
何度も言うように、このやり方では、光源は無視されることになります。
これは別の見方をすれば、光源の位置情報が与えられない、と言うことができま
す。
このため、『光源から遠ざかる波』と『光源の方へ向かう波』という二つの解が
得られてしまうのです。
ところが現実には、光源はある場所に存在するわけですから、後者も『光源から
遠ざかる波』としなければなりません。
このために、後者を『過去に向かって進む波』と再解釈するわけです。
こうした再解釈は、数式で容易に示すことができます。
つまり、光源の方に向かう波を、

 A( x, t ) = A・cos( ω・t + k・x + φ )

とすると、

 A( x, t ) = A・cos( - ( ω・t + k・x + φ ) )

      = A・cos( ω・( - t ) - k・x + φ' )   (φ' = - φ)

となって、『光源から遠ざかるように、過去に向かって進む波』という再解釈が
可能になるわけです。

しかしながら、マックスウェル方程式を正しく解くならば、そもそも、『光源の
方に向かう波』の解自体が得られないのです。
こうした得られるはずのない解が得られてしまった最大の原因は、光源を無視し
たからです。
光源の位置がわからなければ、『空間(の場所)』の式からは、(互いに反対方
向に進む)二つ波の解が得られます。
こうして、『光源の方に向かう波』という、現実には有り得ない波の解が得られ
てしまうのです!

正しい解き方をすれば、マックスウェル方程式からは『過去に向かって進む波』
の解など得られはしないのです。
そんな荒唐無稽な解が得られるのは、マックスウェル方程式を誤用・乱用してい
るからにすぎません。

呆れたことに、ほとんどの科学者たちが、この事実に気付いていません。
それもそのはず。
『空間(の場所)』の式しか解かないというやり方は、19世紀から今日に至る
まで、電磁気学における常識となっているからです。
そして、光速度不変という考えも、この常識から導かれたものなのです。

いくらコンピューターが無かった(数学的にしか解く方法が無かった)時代には
仕方の無かったこととはいえ、それを乱用して得られた結果など、全く認めるに
値しないのです。

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