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●第25回 第2章・定説の問題点(その3)

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今回は『エーテル』と『近接作用』に関する問題です。

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8.エーテルと近接作用
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マイケルソン・モーレーの実験装置に関する従来の解析は、幾何光学の乱用によ
る根拠薄弱なものであることは、前回述べました。
事実、マイケルソンたちは、当初、今日の定説とは異なった解析を行っていたの
です。
もしローレンツが、この段階で『ローレンツ圧縮』という考えに走っていたら、
『ローレンツ変換』の式は、今日のそれとは違ったものになっていたことでしょ
う。

とはいえ、マイケルソン・モーレーの実験は、定量的にはともかく、定性的には
エーテル流(による光速度の変化)を検出できるものだったはずです。
御存知のように、この実験ではエーテル流を検出することはできませんでした。
そこで、次のような解釈が可能なはずです。

 エーテル流が検出できなかった
     ↓
 エーテル流は存在しない
     ↓
 エーテルは存在しない
     ↓
 光はエーテルを伝わる波ではない
     ↓
 電磁気作用は近接作用ではない(=近接作用説は誤りである)
     ↓
 電磁気作用は遠隔作用である(=遠隔作用説が正しい)

近接作用では、作用を伝えるもの(媒体=エーテル)が必要のはずです。
これに対し、遠隔作用では、それを必要とはしません。
だとすれば、電磁気作用を遠隔作用とするのが合理的なはずなのですが…。

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9.エーテル無き近接作用?
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歴史は、そうはなりませんでした。
科学者たちは、あくまで近接作用に固執したのです。
まず、ローレンツは、『運動方向に長さが縮む』というフィッツジェラルドの考
えにならい(いわゆるローレンツ圧縮)、ローレンツ変換を生み出しました。
彼は、エーテルを信じたかったのです。
近接作用では、作用を伝えるものが必要なのですから、これは当然でしょう。

ところが、アインシュタインはエーテル不要の近接作用理論を生み出しました。
それが相対論です。
そこでは、『光速度不変の原理』により、エーテルがなくてもローレンツ変換が
導けることを示しています。

ですが、よくよく考えてみれば、『エーテル無き近接作用』というのは、『何も
ないところを作用が伝わる』ということであり、これは『何もなければ作用は伝
わらない』という近接作用の原則に反する論理です。

また、『何もないところを作用が伝わる』というのは、言い換えれば、

 1.何もないところに作用が及ぶ

 2.何もないところから作用を受ける

ということであり、これは全く奇怪な現象と言わざるを得ません。

実は、アインシュタインは後にエーテルを奇妙な形で復活させました。
それによると、エーテルは『電磁場の担い手』であり、『運動を考えない実在』
ということです。

ですが、これは全く御都合主義的な仮説と言わざるを得ないでしょう。
確かにそういうものを認めれば、相対性や光速度不変、そして何より近接作用を
正当化することが可能になります。
ですが、『運動を考えない実在』というものの存在を、どうやって検証できるの
でしょうか?

それにエーテル理論によると、電磁場とはエーテルの緊張状態を指し、また、電
磁波はエーテルの振動(の伝搬)を指すはずです。
もしエーテルが『運動を考えない実在』だというのなら、どうやって緊張したり
振動したりすることができるのでしょうか?

そもそも、アインシュタインがエーテルを復活させたのは、大統一場理論、つま
り、重力場のみならず、電磁場も一般相対性理論によって統一的に説明すること
に失敗したからなのです。
このために、彼は、電磁場に関しては、マックスウェル方程式を代用することで
我慢しなければなりませんでした。
そして、また、そのことを正当化するために、エーテルを復活させざるを得なか
ったのです。
こういうところからも、彼の新エーテル理論は、全く御都合主義的であることが
おわかりいただけると思います。

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10.もっと単純に…
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そもそも、マイケルソン・モーレーの実験は、光がエーテルを伝わる波であるこ
と、すなわち、エーテルが存在することを前提とした実験だったのです。
つまり、この実験は、

 実験装置(が存在する地球)がエーテルの海の中を運動する
    ↓
 実験装置の系から見れば、エーテルが実験装置内を流れる
    ↓
 波である光が、媒体であるエーテルに引きずられる
    ↓
 光の速度が変化する

という考えに基づくものだったのです。

そして、実験の結果、光の速度の変化が検出されなかったために、ローレンツ圧
縮という考え方が必要になったのです。

もし、光がエーテルを伝わる波でないのならば、つまり、エーテルが存在しない
のならば、エーテル流は存在せず、光がエーテルに引きずられて速度が変化する
こともないのです。
それ故、ローレンツ圧縮などという考えは無用になるのです。

遠隔作用では、媒体(=エーテル)は無用です。
ですから、この実験では光の速度は変化しないことになり、ローレンツ圧縮とい
う考えも無用になるわけです。

もっとも、遠隔作用では、電磁波のような近接作用的な現象が説明できないよう
に思われます。
ですが、仮想力線電磁気学では、第1章で述べたように、『疑似エーテル』とい
う考え方により、それを説明することできるのです。
疑似エーテルとなるのは、厳密に言えば、全空間に存在する全物質です。
とはいえ、その関わり方は、場所により異なってきます。
大雑把に言えば、光の経路に近い物質ほど、疑似エーテルとしての働きが強くな
ります。
逆に、そこから遠ざかれば遠ざかるほど、疑似エーテルとしての働きは弱くなり
ます。
そして、これらのことから、マイケルソン・モーレーの実験で、

 1.なぜ光速度は変化しないのか?

 2.なぜ条件によっては、光速度の微小な変化が検出されることがあるのか?

ということが、説明できるのです。
詳しくは、第4章で説明します。

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