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●第19回 概要(その19)

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前回に引き続き、遠隔作用のエネルギー配分について説明します。

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57.疑似近接作用のエネルギー配分
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前回は、物体が3つまでの場合を扱いましたが、もっと数の多い場合を考えてみ
ましょう。
物体がA、B、Cの他に、D、E、F、…、Zがあるとすると、

 ΔEa = ΔEb + ΔEc + ΔEd + ΔEe + ΔEf + … + ΔEz

となります。
そこで、

 ΔE0 = ΔEc + ΔEd + ΔEe + ΔEf + … + ΔEz

と定義すると、

 ΔEa = ΔEb + ΔE0

となります。
これは、近接作用における二体問題の式と同じ式です。

実際、物体C〜Zが疑似エーテルの働きをしている場合、この式が成立します。

遠隔作用では、空間がエネルギーを得るという考え方はありませんが、その代わ
りに、疑似エーテルとなる物体がエネルギーを得ることになるわけです。
これが、疑似近接作用のエネルギー配分となります。
そして、疑似エーテルとなる物体が(問題を扱っている人間の)視界の外にある
と、(以前にも述べたように)あたかも何も無い空間がエネルギーΔE0を得たか
のように錯覚するわけです。

このように、エネルギー保存則を用いると、これまで述べてきたことが、より一
層明確になると思います。

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59.逆は成り立たない
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さて、ここで注意しなければならないことがあります。
それは、ΔE0>0だからといって、必ずしも物体C〜Zが疑似エーテルの働きを
しているとは限らない、ということです。
つまり、物体B以外にエネルギーを得る物体が存在するからといって、必ずしも
疑似近接作用的な振る舞いを示すとは限らない、ということです。
その場合は、厄介な『遠隔作用の多体問題』となります。

一方、ΔE0が0の場合は、物体Aと物体Bの『遠隔作用の二体問題』とすること
ができます。(つまり、逆が成立するということ)

とはいえ、ΔE0=0が厳密に成り立つことは、現実にはありません。
なぜなら、この世には無数の物体(物質)が存在するからです。
それらは、物体Aからエネルギーを得ることになるでしょう。
ですから、厳密な意味での『遠隔作用の二体問題』というものは、有り得ないの
です。

実際の多くの問題では、遠隔作用と疑似近接作用の中間的な振る舞いをします。
そして、どちらかの特徴が強く表れるのが普通です。
巨視的な問題では、疑似近接作用の特徴の方が強く表れることが多く、逆に微視
的な問題では、遠隔作用の特徴の方が強く表れることが多いのです。

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60.エネルギー配分と距離
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近似的には、『遠隔作用の二体問題』というものを考えることが可能です。
特に、微視的な問題では、そうです。
その理由は何かというと、電磁気作用の強さが距離に関係していることが挙げら
れます。
これが、エネルギーの配分のされ方に深く関わってくるのです。

一般に電磁気作用の強さは、距離が近いほど強く、遠いほど弱くなります。
それも単なる反比例ではなく、もっと急激な変化をします。
たとえば、最もわかりやすい例として『クーロン力』を挙げるならば、これは距
離の二乗に反比例して弱くなります。
要するに、距離が遠くなると、受ける作用が極端に弱くなる、ということです。

さて、物体が得るエネルギーの量は、受ける作用の強さに関係してきます。
作用、すなわち、力Fを受けると、物体の運動量m・vが変化します。
式で示すと、

 F・Δt = m・Δv

となります。
そこで今、時間Δt(と質量m)を一定とすると、速度の変化量Δvは、力Fに
比例することになります。

一方、物体の(運動)エネルギーEは、

 E = (m・v・v)/2

で、速度の二乗に比例します。

そこで、簡単のために、初速(エネルギーを得る前の速さ)を0とした場合、物
体が得るエネルギーは、受ける作用(力)の二乗に比例することになります。
したがって、例えば、作用(力)が2分の1になれば、得るエネルギーは4分の
1になります。

これらのことを考え合わせるならば、遠くのものほど、得るエネルギーの量は、
さらにより一層、極端に小さなものになることになります。

たとえば、上で例として挙げたクーロン力のように、距離の二乗に反比例する作
用の場合で、なおかつ、初速を0ゼロとした場合を考えましょう。
すると、距離が2倍になれば、作用は4分の1で、得るエネルギーは16分の1
になります。
距離が10倍なら、得るエネルギーは1万分の1。
距離が1000倍にもなれば、得るエネルギーは10の12乗分の1となり、こ
れはもう、ほとんど無視できる大きさです。

つまり、相対的に遠くにあるものは、ほとんどエネルギーを得ることが出来ない
わけです。
これは、言い換えれば、他の物体が十分遠くにある場合は、

 ΔE0 ≒ 0

とすることが出来る、つまり単純な『遠隔作用の二体問題』とみなす(近似する
)ことが出来るということなのです。

量子論・量子力学が必要となる微視的な分野と、それらを必要としない巨視的な
分野との、距離のオーダーの違いを考えれば、なぜ微視的な問題では『遠隔作用
の二体問題』という近似的な考え方が可能なのかが、十分、おわかりいただける
と思います。
微視的な問題では、注目する二物体間の距離が非常に近くなるため、周囲に存在
する他の物体の距離が相対的に遠いことになります。
それ故、これら視界外の物体の得るエネルギー量は0と近似できます。
こうして、遠隔作用の特徴が強まるというわけです。

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