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 N┃→          仮想力線電磁気学
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●第15回 概要(その15)

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今回も、力線と遠隔作用に関する説明をいたします。

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45.数式で見ると…
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ファラデーの力線の理論によれば、電磁誘導、及び、その逆の現象(磁電誘導?
)は、

『力線が横切ると、力線と、その速度の双方に垂直な向きに、電磁気作用が生
 じる』

としています。

これを(マックスウェル電磁気学風に)数式で表すと、

 {E} = -{vb}×{B}

 {H} =  {vd}×{D}

となります。
ここで、{}で囲まれている項はベクトルを表します。
また、{vb}、{vd}は、それぞれ、磁力線、電気力線が横切る速度を表します。

これを見ると、距離に関係なく、作用は瞬間的に現れることがわかるでしょう。
そして、こうした特徴が、遠隔作用と同じであることに気付くと思います。
このように、数式の面からも、力線の理論が、遠隔作用と相性がいいことが、お
わかりいただけると思います。

さて、数式といえば、マックスウェル方程式の方が、高く評価されてきました。
その理由は、マックスウェル方程式には、divやrotなど、流体力学などで用いら
れている記述が用いられているからです。
流体力学など、既存の物理学理論と同じ記述がなされているということは、そう
した既存の物理学理論で使われている数学的解法・技法が、電磁気学の分野でも
そのまま応用出来るということです。
これは、コンピューターがまだ存在しない時代には、非常に大きな利点でした。
そういうわけで、マックスウェル電磁気学が高く評価されたのも、無理はありま
せんでした。

さらに、もう一つ重要なのは、流体力学などと同じ数学的記述が用いられている
ことが、『エーテル』という『機械力学モデル』の根拠になるということもあり
ました。

しかしながら、マックスウェル方程式を冷静になって見てみると、それが示す電
磁気現象は、機械力学モデルにうまく置き換えられるものではないことがわかり
ます。
確かに静的な電磁場については機械力学モデル的な考察は可能ですが、動的な電
磁場に対しては、どんな機械力学モデルもしっくりきません。

では、なぜ、それでもエーテルのような機械力学モデルを信じ続けることができ
たのかというと、マックスウェル方程式を解くと『波動方程式』が得られるから
です。
この波動方程式が、物質を伝わる波を表す波動方程式と、同様な形式をしている
のです。
なんと、もとの式(マックスウェル方程式)を無視して、結果の式(波動方程式
)だけを根拠に、エーテルという機械力学モデルの正しさを確信していたのです
ね。

いずれにせよ、電磁気作用を機械力学モデル的に説明する試みは、とっくの昔に
失敗していたと見るべきでしょう。
となれば、初めからそういうものにとらわれない電磁気学理論を作るのも、一つ
の方法です。
むしろ、そういうものにこだわり続けたために、相対論や量子論・量子力学が必
要になってしまった、と考えるべきなのです。
仮想力線電磁気学は、初めから、『遠隔作用』と『力線の理論』という非機械力
学モデル的な考え方をもとに作られた電磁気理論であり、そのために、様々な電
磁気現象を無理なく説明することができるのです。

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46.ファラデーの理論との相違点
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さて、同じ力線の理論とはいえ、ファラデーの理論は近接作用の理論であるのに
対し、仮想力線電磁気学は遠隔作用の理論ですから、当然、両者には異なる部分
があります。
特に、力線の考え方に違いがあります。

まず、これまでにも何度も申し上げているように、ファラデーの理論が力線を実
在性あるものとしているのに対し、仮想力線電磁気学では仮想的なものとしてい
ます。
つまり、力線は、前者では電磁気作用をもたらす要因(根元)であるのに対し、
後者では、電磁気法則を記述したり、ものを考えたりするための道具にすぎませ
ん。

しかし、何よりも異なるのは、前者では力線どうしが交わることは決して無いの
に対し、後者では、起源(あるいは、わき出し)の異なる力線どうしは交わるこ
とが出来るという点です。

例えば、今、電荷Aと電荷Bという二つの電荷があったとして、電荷Aからのび
る電気力線は、電荷Bからのびる電気力線と交わることが出来るのです。
ファラデーやマックスウェルの力線では、こんなことは許されません。

どうしてこのような違いがあるのかというと、仮想力線電磁気学は、他の二つの
理論と違って、重ね合わせの理が成り立たないからです。
逆に、他の二つの理論では、重ね合わせの理が成り立つため、電磁気作用(また
は場)を重ね合わせた状態で、新たに力線を描かねばならず、それ故、新たに描
かれた力線どうしは交わることは出来ないのです。
これに対し、重ね合わせの理が成り立たない仮想力線電磁気学では、それぞれか
らのびた力線を別個に扱わなくてはならないのです。
こうした特徴は、仮想力線電磁気学が遠隔作用の理論であることから来るもので
す。
また、こうしたことからも、遠隔作用では、厳密には、ほとんどの問題が厄介な
多体問題になってしまうことが、おわかりいただけると思います。

とはいえ、それでも幸いなことに、巨視的なスケールの問題では、作用を重ね合
わせた場合と結果が等しくなる場合がほとんどなので、そういう問題に限り、重
ね合わせを行うことが出来ます。
そして、この場合、重ね合わせで新たに描かれた力線どうしは、交わることは出
来ません。
ただし、それについても、例えば、電荷Aと電荷Bの電気力を重ね合わせて描か
れた力線と、電荷Cの力線、あるいは、電荷Eと電荷Fの電気力を重ね合わせて
描かれた力線とは、交わることは出来ます。
このあたりが、他の二つの理論とやはり異なるところです。

力線が交わることができるのは、力線を実在性あるものではなく、仮想的なもの
としていることとも関連があります。
遠隔作用では、空間自体は何の役割も果たさないので、作用を重ね合わせること
は本質的には意味が無く、それは単に問題を単純化する解法テクニックでしかな
いのです。

最後に、念のため注意しておきますが、仮想力線電磁気学でも、同じ起源(ある
いは、わき出し)の力線どうしは、決して交わることはありません。
交わることが出来るのは、あくまでも、起源(あるいは、わき出し)が異なる力
線どうしにおいてだけです。

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