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 N┃→          仮想力線電磁気学
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●第12回 概要(その12)

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今回から、力線に関する説明をいたします。
もっとも、詳しいことは『第3章』でお話しますので、この『第1章』では、概
要だけにとどめます。

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40.力線の役割
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力線という概念は、もともとファラデーが考え出したものです。

力線の方向は、電磁気作用の向きを表し、また、力線の密度は、電磁気作用の強
さを表します。

力線という概念は、マックスウェル電磁気学に受け継がれ、さらには仮想力線電
磁気学にも受け継がれています。
とはいえ、これらの間では、力線の考え方は、少しずつ異なります。
そこで、力線の考え方について、これら3つの理論の比較をしてみようと思いま
す。

まず、ファラデーにとって、力線は、上で述べたような、電磁気作用を単に記述
するためだけのものではなく、電磁気作用そのものをもたらす要因でもありまし
た。
例えば、静的な電気力や磁力は、力線が引っ張ったり、押し合ったりして生じる
としています。
また、電磁誘導(やローレンツ力)についても、磁力線を横切った時に電気力が
生じるとしています。
このため、力線は実在性あるものとされます。

次に、マックスウェルにとって、力線は、電磁気作用をもたらす要因とか、実在
性あるものというものではなく、むしろ、問題を考えるための道具としていると
ころがあります。
例えるならば、ちょうど、流体力学における流線のようなものです。
マックスウェル電磁気学において、電磁気作用をもたらす要因となるのは、力線
ではなく、空間です。
場という概念が出てくるのもこのためです。
マックスウェル電磁気学では、力線は、例えば、電気力管とか電磁弾性体などを
空間に定義するのに用いられます。
ついでにいうと、この電磁弾性体が、弾性力学における弾性体とよく似た特徴を
持つことから、エーテルの存在がますます信じられるようになりました。

さて、仮想力線電磁気学もまた、力線の理論です。
仮想力線電磁気学では、力線を実在性あるものとはみなさず、記述や思考のため
の道具とみなします。
この点では、マックスウェル電磁気学と同じです。
しかし、仮想力線電磁気学は遠隔作用の理論なので、空間は電磁気作用をもたら
す要因とはなりません。
この点が、マックスウェル電磁気学とは、全く異なります。

仮想力線電磁気学では、力線はあくまで、電磁気作用の法則を記述したり、問題
を考察したりするための道具とされます。
ちなみに、ファラデーは、力線というものを、多くの実験事実から帰納的に考案
しました。
仮想力線電磁気学の力線に関する考え方は、こうした姿勢をさらに押し進めたも
のです。

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短いですが、今週はゴールデン・ウィークなので、これぐらいにしたいと思いま
す。
続きは、また次回に…

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