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●第112回 第4章・遠隔作用と疑似近接作用(その42)

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当メールマガジンを御購読いただき、誠にありがとうございます。
体調不良から発行が大幅に遅れしまい、すみませんでした。

さて、今回は、遠隔作用によって近接作用的な現象を説明することを可能にする
考え方の話をします。
『エネルギーを有するものの位置と、エネルギーが存在する位置とは、異なる』
という考え方をすると、近接作用の理論でも、遠隔作用的な現象の説明が可能に
なります。
ということは、この考え方を逆にたどれば、遠隔作用の理論で、近接作用的な現
象が説明できるということではないでしょうか?
そこで、今回は、これを実際にやってみたいと思います。

なお、このメルマガは等幅フォントで御覧下さい。

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198.エネルギーの位置は?
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まず、具体的な例として、下図のような、物体Aが物体Bに(誘導によって生じ
る)電磁気作用を及ぼし、仕事をして、エネルギーを与える…という問題を考え
ます。

[図112・1]

  A   B
  ○   ○


もう見飽きた問題のように思えるかもしれませんが、注意してもらいたいのは、
今回のは、遠隔作用的な現象ではなく、近接作用的な現象であることです。
この違いに注意して下さい。

さて、そこで、物体Aから放出された「エネルギーの粒子」が、空間を移動し、
物体Bに吸収されるまでの過程を考えてみましょう。

古典的な近接作用の考え方によれば、下図のようになります。

[図112・2]

  A   B

  ●   ○    注:●は物体がエネルギーを有している状態

    ↓

  ○・  ○

    ↓

  ○ ・ ○

    ↓

  ○  ・○

    ↓

  ○   ●


これに対し、量子力学(量子化された場の理論)では、下図のようになります。

[図112・3]

  A   B
 ???????
 ?◎???○?
 ???????
    ↓
 ???????
 ?○???○?
 ???????
    ↓
 ???????
 ?○???○?
 ???????
    ↓
 ???????
 ?○???○?
 ???????
    ↓
 ???????
 ?○???◎?
 ???????

これを図112・2と比較してみて下さい。

「エネルギーの粒子」に関する記述が、一つの「・」から、無数の「?」に変わ
っていますね。
これは、その位置が確定できないことを示します。

また、一番上と下とでは、物体のエネルギーが、物体内部にではなく、周囲の空
間に広がって存在しています。
物体がエネルギーをまとっている…というイメージですね。
物体が「●」ではなく、「◎」で記述されているのは、そのためです。

さて、以上のことを念頭において、図112・3の考え方を遠隔作用向けに再解
釈してみましょう。

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199.位置不確定に対する再解釈
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まずは、(上から)1段目の状態について考えます。

 ???????
 ?◎???○?
 ???????

これは、「エネルギーの粒子」が、位置はわからないが、空間のどこかに存在す
る…ということを意味します。
そこで、この意味を再解釈するわけです。

「位置がわからない」とは、見方を変えるならば、「位置をどこかに限定しなく
ても良い」ということでしょう。
当たり前のことですが、位置をどこかに限定しなければならないのであれば、位
置は定まってくるはずです。
ですから、「(物体Bの内部以外の位置なら)どこでも良い」と再解釈できるわ
けです。

となれば、遠隔作用の考え方においては、物体Aの位置(内部)でも良いことに
なるでしょう。
よって、「物体Aの位置」ということにできます。
すると、下図のようになるでしょう。


  ●   ○


図112・2の1段目と同じになってしまいましたね。

同様にして、5段目も、


  ○   ●


ということにできます。(物体Bの位置)

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200.どこでも良いのなら…
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「位置の不確定」を「位置はどこでも良い」と再解釈すると、2〜4段目につい
ても、違った考え方ができるようになります。
例えば、三段目について考えてみましょう。

 ???????
 ?○???○?
 ???????

これは、たとえば、下図のように置き換えることが可能です。


  ○ ・ ○


これは、図112・2で示した古典的な“近接作用”流の考え方ですね。
エネルギーが空間に存在しています。

一方、これとは別の位置も可能です。
例えば、下図のような位置です。

[図112・4]
    ・

  ○   ○


これは突飛に思えるかもしれませんが、位置がどこでも良いのなら、この位置で
も問題は無いはずです。

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201.物体に置き換える
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さて、この考え方を、“遠隔作用”流にどんどん推し進めてみます。

遠隔作用では、空間はエネルギーを有することはできません。
そこで、図112・4の「・」を、物質(物体)「*」で置き換えます。
つまり、空間の代わりに物質「*」がエネルギーを有している…と考えるわけで
す。
すると、下図のようになるでしょう。

[図112・5]
    *

  ○   ○


物質が無いところに物質を書き込むことは反則です。
ですが、もともと存在していたが、視界の中に入っていなかっただけだ…という
のであれば、これは反則ではないでしょう。
実際、図112・5の「*」の位置は、図112・3では視界の外になっていま
すね。
逆に言うと、図112・4の段階で、「・」の位置を決める際、実際に物質があ
る位置を「・」の位置とすれば良い…ということです。

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202.分割する
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“遠隔作用”流の考え方を、さらに推し進めてみましょう。
遠隔作用では、量子、すなわち、分割不可能な(エネルギーの)粒子という考え
方を必要としません。
ですから、図112・4の「・」を複数に分割してしまっても良いわけです。
たとえば、下図のようにです。

[図112・6]
    ・

  ○   ○

    ・

ただし、ここでの「・」は、エネルギーの値が、図112・4での「・」の半分
だと思って下さい。(テキスト・アートでは表現できないので、念のため。)

さて、先ほどと同様に、この図の「・」を「*」に置き換えます。
すると、下図のようになるでしょう。

[図112・7]
    *

  ○   ○

    *

そこで、次に、この図の意味を考えてみたいと思います。

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203.疑似エーテル
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二つの物質「*」は、物体Aが放出したエネルギーを一時的に保有しています。
そして、これら二つの物質は、この後、物体Bに対してエネルギーを放出するこ
とになります。
ですから、エネルギーは、物体A→二つの「*」→物体Bというふうに移動する
ことになります。
ということは、二つの「*」は、ちょうどエネルギーを仲介する媒体のような働
きをしていることになるでしょう。
これが、『疑似エーテル』というわけです。

物体Aから放出されたエネルギーは、二つの「*」を経由して、物体Bに渡りま
す。
その際、物体Aから、直接、物体Bにエネルギーが伝わる場合に比べて、「*」
を経由する分、エネルギーの伝達に時間がかかることになります。
つまり、近接作用的な現象が起こることになるわけです。
こうして、遠隔作用でありながら、近接作用的な現象が起こることが説明できる
というわけです。

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204.空間にあると思ったら…
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ちなみに、図112・7は、図112・2と等価の図です。
つまり、


  ○ ・ ○


と

    *

  ○   ○

    *

とは、等価だということです。
言葉で言い表すと、物体Aと物体Bの中間の空間の位置にエネルギーが存在する
状態と、それとは全然別の位置に存在する二つの物質「*」にエネルギーが存在
する状態とは、(見かけ上は)同じだということです。

これが何を意味するのかは、もうおわかりでしょう。
途中の空間に存在すると思っていたエネルギーが、実は、全然考えもしなかった
別のところに存在していた…ということです。
別の言い方をしますと、途中の空間がエネルギーを有していると思っていたら、
実は、視界の外にある物質が有していた…ということです。

以上のことから、物体間が真空の空間であっても、近接作用的な現象は起こりう
ることがわかるでしょう。

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205.もっと増やせば…
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さて、図112・7では、「*」は二つだけでした。
そこで、「*」の数をもっと増やしてみましょう。
たとえば、下図のようにです。

[図112・7]
   c1c2c3
   ***

 A○   ○B

   ***
   d1d2d3

これだと、A→c1(d1)→c2(d2)→c3(d3)→Bとエネルギーが受け継がれていくこ
とになるでしょう。
そして、c1(d1)、c2(d2)、c3(d3)の各段階は、それぞれ、図112・2における
2段目、3段目、4段目に相当することもわかるでしょう。
また、仲介物質の数が増えたことにより、伝達所要時間も増すことになるでしょ
う。
その結果、より近接作用的に見えることになるでしょう。
これが、『疑似近接作用』という現象です。

この世には無数の物質(を構成する荷電素粒子)が存在します。
たとえ物体間に存在しなくても、周囲には無数の物質が存在するのです。
ですから、巨視的な問題では近接作用的な伝わり方をしてしまうのです。

このように、遠隔作用でも、近接作用的な現象は説明できるのです。
となれば、もはや近接作用に固執しなければならない義務はどこにもないでしょ
う。

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206.確率的広がりが意味すること
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「エネルギーの粒子」が、確率的広がりをもって存在しているということは、結
局のところ、問題を解いている人間が注目している領域よりも、もっと広い、別
の領域に存在する物質に、エネルギーが存在する…ということを意味していたの
です。
図で表すと、こんな感じです。

***********
***********
***********
*       ***
* ○   ○ ***
*       ***
***********
***********
***********

ちなみに、物体間(および物体の周囲)が真空ではなく、たとえば気体などの場合
は、

***********
***********
***********
***********
**○****○***
***********
***********
***********
***********

となります。
皮肉なことですが、上図において、「*」と「*」との間に隙間があることは、
かえって事実に即していると言えます。
なぜなら、気体分子どうしは離れているからです。

実を言うと、遠隔作用のもとでは、疑似エーテルとなる物質の分布は連続なくて
も良いのです。
なぜなら、離れていても作用やエネルギーは伝わるからです。
このあたりが近接作用とは大きく異なる点です。

このように、これまで空間にあると思われてきたエネルギーは、実は、(全然別
の位置にある)物質にあったのです。
そして、このことは、まさに、量子化された場の理論の考え方である『エネルギ
ーを有するものの位置と、エネルギーが存在する位置とは、異なる』という考え
方とつながることがわかるでしょう。
ただし、遠隔作用(疑似近接作用)の場合、『エネルギーを有するもの』は『空
間』に、『エネルギーが存在する位置』は『視界の外にある物質の位置』になる
のですが…。
とにかく、これで、量子力学とは逆の論理で近接作用的な現象を説明できたわけ
です。

こうなると、もう、近接作用という考え方は不要でしょう。
それだけではありません。
全然別の位置にある物質が疑似エーテルになることは、全然別の位置のことが現
象にかかわってくることを意味するのです。
次回以降は、この問題を取り上げていきたいと思います。

               * * *

ということで、やっと、この章の本題に入れます。
量子論への“寄り道”が、あまりにも長過ぎましたね。
でも、次回からは、違います。
今後もよろしく御愛顧のほどをよろしくお願い申し上げます。

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