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 N┃→          仮想力線電磁気学
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●第111回 第4章・遠隔作用と疑似近接作用(その41)

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当メールマガジンを御購読いただき、誠にありがとうございます。
いつもながら、発行が遅れて申し訳ありません。

さて、前回述べたように、今回は、エネルギーに関する重要な問題を指摘したい
と思います。

なお、このメルマガは等幅フォントで御覧下さい。

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190.「存在」とは言うものの…
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よく、エネルギーが「存在する」とか、エネルギーを「有する」という言い方を
しますが、実は、こういう言い方には若干問題があります。
今回は、この問題を提起してみようと思います。

まずは、下図を見て下さい。

〔図111・1〕

  v←●     ▲

       ■

●だけが左向きに速さvで運動していますね。
これらの物体を、■の系から眺めると、やはり●だけが左向きに速さvで運動し
ているように見えるでしょう。

さて次に、下図のように、■を加速して左向きに速さvで運動させたとします。

〔図111・2〕

  v←●     ▲

     v←■

すると、今度は、■の系からは、下図のように、▲だけが右向きに速さvで運動
しているように見えるでしょう。

〔図111・3〕

    ●     ▲→v

       ■

そこで、図111・1と図111・3とを時間順に並べて見てほしいのです。
すると、まるで、●が▲に作用を及ぼして、仕事をし、エネルギーを与えたかの
ように見えませんか?
まるで、エネルギーが、●から▲に移動したかのように見えるでしょう。
■の系(だけ)から見ていると、そう見えてしまいます。

はたして、エネルギーは本当に移動したのでしょうか?
もし、そうなら、どんな作用が●から▲に働いたというのでしょうか?

否、そんな作用は働いていません。
ですから、仕事はしていないのであり、エネルギーの移動も起きてはいません。
●や▲の運動状態が変ってしまったのは、■(の系)の運動状態が変ってしまっ
たからです。
でも、エネルギーの存在ということを考えると、今一つ、パッとしませんね。

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191.どっちが有しているの?
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今度は、観測者が、■と◆という具合に、二者いたとします。

〔図111・4〕

       ◆→v

    ●     ▲→v

       ■


すると、■(の系)から見れば、運動しているのは▲であり、故に、(運動)エ
ネルギーを有している(エネルギーが存在する)のは▲ということになります。

ところが、◆(の系)から見れば、運動しているのは●であり、故に、エネルギ
ーを有している(エネルギーが存在する)のは●ということになるのです。

〔図111・5〕

       ◆

  v←●     ▲

     v←■


はたして、運動しているのは、エネルギーを有しているのは、エネルギーが存在
するのは、●でしょうか?、それとも、▲でしょうか?

これには、解答できないでしょう。
少なくとも、相対性を認める(絶対静止空間を認めない)立場にあれば…。

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192.あくまで見かけ上の存在
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こうしてみると、エネルギーの「存在」という概念が、非常に怪しくなってくる
でしょう。

速度というものは、相対的なものです。
一方、運動エネルギーは、速度(と質量)によって決まります。
ということは、運動エネルギーは相対的なもの…ということになるでしょう。
つまり、運動エネルギーは、速度と同様、見かけ上のものにすぎない…というこ
とになるのです。

これは、位置エネルギーなどにも言えることですよね。
このように、エネルギーとは、相対的なもの、すなわち、見かけ上の概念にすぎ
ないのです。

以上のことから、エネルギーの「存在」と、物質(物体)の「存在」とは、全く
性質の異なるものであることがわかるでしょう。
つまり、エネルギーとは、物質のように「実体のあるもの」ではないのです。

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193.実在ではなく状態
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ところが、相対論や量子論といった近接作用の理論では、エネルギーのことを、
物質のように「実体のあるもの」とみなしているのです。
だからこそ、『場』を実在性あるものとみなしてしまうのです。
そして、これこそ、物理学が迷走してきた最大の原因の一つなのです。

物質のように「実体のあるもの」ならば、瞬間的に空間を飛び越えて移動するこ
と(空間的に不連続な移動)は不可能でしょう。
だからこそ、遠隔作用はあり得ないことになり、近接作用こそが絶対的に正しい
ということになってしまうのです。

「存在」という表現が用いられるとはいえ、エネルギーは、物質のように「実体
のあるもの」ではなく、速度などと同様、相対的な「状態」にすぎないのです。
まったく同じことが、運動量にも言えます。
そして、「状態」ならば、瞬間的に空間を飛び越えて移動しても、別に問題は無
いでしょう。
少なくとも真空の空間を経由しなければならない義務は無いはずです。
というより、「状態」など持ち得ない真空というものを経由することなど、でき
っこないでしょう。

かくして、近接作用というドグマからオサラバすることができるわけです。

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194.完全慣性系が必要な訳
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ところで、今回の最初の部分で述べた図111・1〜図111・3の話には、も
う一つ、別の重要な問題が含まれています。
それは、『慣性系』という問題です。

実際にはエネルギーの移動は無いのに、エネルギーが移動したかのように観測さ
れてしまいました。
このような現象が起こってしまったのは、■の運動状態が変ってしまったからで
すよね。

このことから、物理学では、運動状態が「絶対に」変らない(慣性)系が必要で
あることに気付くでしょう。
運動状態が変ってしまったのでは、上の話でもわかるように、まともな議論(考
察)が出来ません。
そこで、このような理想的な系のことを、『完全慣性系』と呼ぶことにしましょ
う。

もっとも、完全慣性系となるものは、(後で説明するように)実際には存在しま
せん。
しかしながら、まともな考察を行う上では必要なものであることは、おわかりい
ただけると思います。

完全慣性系が実在するか否かは、重要ではありません。
考察の上で必要だと言っているのです。
ですから、たとえ実在しなくても、その存在を仮定する必要があるのです。

こうした存在の仮定は、物理学においては、別に珍しいことではありません。
たとえば、座標軸がそうです。
座標軸なんてものが実在しますか?
それを考えれば、完全慣性系の存在仮定も理解できるはずです。

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195.完全慣性系の条件
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それでは、その存在が仮定される完全慣性系とは、どのようなものでしょうか?
どんな条件が要求されるのでしょうか?
それは、運動状態が変らないことでした。

実は、完全慣性系には、もう一つ、重要な条件があります。
それは、他のものの運動状態を変えないことです。

たとえば、図110・1〜3や図110・4の問題で、■が●や▲の運動状態を
変えてしまったら、お話しにならないでしょう。
■には、●や▲(の運動状態)に干渉しない(影響を及ぼさない)ことが要求さ
れるのです。

以上のことから、完全慣性系には、他のものと互いに干渉し合わないという条件
が要求されることになるのです。
そして、それは、すなわち、他のものと互いに作用を及ぼし合わない、というこ
となのです。

では、他のものと互いに作用を及ぼし合わないための条件とは何でしょうか?
それは、重力も電磁気作用もゼロとなる条件ですね。
つまり、質量も電荷も磁荷もゼロであることです。

でも、これでは実体の無いものになってしまいますね。
このようなものは、実際には存在しません。
ですから、完全慣性系というものは実在しないことになるのです。
あくまで、考察のために、その存在を仮定するわけです。

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196.相互干渉という現実
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完全慣性系が実在しないことは、ある極めて重要なことを意味しています。
それは、他のものと互いに干渉し合わないものはない…ということでしょう。
このことから、この世のものは、必ず、他のものと相互に干渉し合っている…と
いうことになるのです。
つまり、完全に独立して存在しているものはない…ということです。

こうした傾向は、遠隔作用においては、さらに強まります。
つまり、この世のものは、他の「全ての」ものと相互に干渉しあっていることに
なるのです。
近接するものだけではなく、無限遠のものまで、相互干渉し合う相手となり得る
のです。
何しろ、作用が、空間を飛び越えて、直接相手に及ぶのです。
しかも、重力にしろ、電磁気作用にしろ、到達距離は無限大。
となれば、全てのものが相互干渉し合う相手となり得ることになるでしょう。
むしろ、相互干渉を抑えることの方が難しくなってくるのです。

さて、そうなると、(物理の問題を解いている)人間が「関係ない」と思ってい
るものも、実は関係してくることになりますね。
つまり、人間が注目していないものや、眼中にないもの、視界や視野の外にある
もの、人間の目には見えない(ほど小さい)もの、かかわって欲しくないものな
ども、現象に関係してくるということです。

そして、このことが、『疑似エーテル』という考え方を可能にすることは、第1
章でお話ししましたね。
また、疑似エーテルという考え方により、遠隔作用で近接作用的な現象を説明で
きることもお話しいたしました。
完全慣性系が実在しないことは、まさに遠隔作用と疑似エーテルの考え方が正し
いことを示しているのです。

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197.代用品ということを忘れると…
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ところで、完全慣性系が実在しないとなると、厳密な意味での二体問題も存在し
ないということになりますね。
でも、万有引力の法則にしても、電磁気学の様々な法則にしても、物理の基本法
則は、そのほとんどが二体の間で成り立つものになっています。
となると、これは困るのではないでしょうか?
二体の間での現象だと思っていたら、実はもっと多くのものもかかわっていた現
象だった…ということになります。
少なくとも、実験や観測によって、こうした法則を知る(確かめる)ことは不可
能だということになるでしょう。

ですが、幸い、完全慣性系の『代用品』のようなものは存在します。
もちろん、厳密には完全慣性系ではないのですが、相互干渉が無視できるほど小
さいとか、相互干渉の結果が注目する現象に無関係…といった、いわば「実用上
差し支えない」と言えるものです。
たとえば、地上での単純な力学問題においては、大地がその代用品となります。
このように、代用品と言えるものは、とりあえずは存在するわけです。
ですから、実験や観測によって法則を知る(確かめる)ことは、ある程度は(近
似的には)可能なわけです。

とはいえ、それはあくまで代用品にすぎません。
しかも、条件付きの。
つまり、条件を満たさない問題においては、代用品にすらならないのです。
たとえば、上で述べた「地上での単純な力学問題」で、物体や大地が電気や磁気
を帯びていると、大地はもはや、この問題における完全慣性系の代用品にはなら
なくなるでしょう。

代用品ですらないものを完全慣性系と勘違いすれば、全く誤った結論に至ってし
まうのは、当然のことでしょう。
ですから、これは十分に気を付けなければならないことなのです。
それを怠ると、どうなるか?

そのよい例が、マイケルソン・モーレーの実験です。
これなどは、まさしく、代用品ですらないものを完全慣性系と勘違いしてしまっ
た、典型的な例です。
同実験においては、大気や大地、さらには実験装置自身の影響が無視されていま
す。
つまり、これらのものを完全慣性系とみなしていたわけです。
でも、実は、これらこそ、疑似エーテルとして現象に最も強くかかわってくるも
のなのです。
これらは、(相対的に)静止しているわけですから、光速度が(ほとんど)変化
しなかったのは、当然のことなのです。
ところが、それらを完全慣性系とみなしてしまっていた(=それらの影響を無視
していた)ために、その意外な結果にパニックを起こしてしまったのです。
そして、こうした悲喜劇が、相対論の台頭を招いてしまったのです。

なぜ実在はしない完全慣性系という概念が重要なのか?、これでおわかりいただ
けたのではないかと思います。

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