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N┃→ 仮想力線電磁気学
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●第101回 第4章・遠隔作用と疑似近接作用(その31)
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当メールマガジンを御購読いただき、誠にありがとうございます。
たびたび発行が長期中断してしまって、申し訳ありません。
前回に引き続き、「量子」という考え方が、どう「遠隔作用」という考え方に置
き換わっていくのか、見ていくことにしましょう。
なお、このメルマガは等幅フォントで御覧下さい。
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132.所要時間をゼロにするには?
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前回は、『所要時間の観点からは、「エネルギーの粒子」による場合と、遠隔作
用による場合とで、見分けがつかなくなってしまう理由』の一つを説明しました
が、今回からは、さらなる別の理由を説明したいと思います。
もっとも、これは、「理由」というよりは、理屈の世界だからこそ可能なトリッ
クが(前者で)用いられている「実態」と言った方がよいのかもしれません。
それは一体どんなトリックかと申しますと、エネルギーの授受、すなわち、「エ
ネルギーの粒子」が移動するために必要な所要時間をゼロにするというトリック
です。
「本当に所要時間をゼロにするなんてことができるのか?」と疑問に思うかもし
れませんが、理屈の上では可能なのです。(もっとも、常識を完全に侮辱するこ
とにはなるのですが…。)
現に、量子力学では、「エネルギーの粒子」という概念を用いて、遠隔作用的な
現象を説明できているのです。
そこで、まず今回は、このトリックについて説明いたします。
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133.移動距離をゼロにする
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所要時間をゼロにするためには、どうすればいいでのしょうか?
そのためには、移動距離をゼロにすればいいのです。
移動距離がゼロならば、所要時間もゼロになるはずです。
では、移動距離をゼロにするには、どうすればいいでのしょうか?
たとえば、下図のように、物体Bを物体Aと接するような位置に置く…という方
法がありますね。
[図101・1]
(注)この図では隙間があいてしまっていますが、これはテ
AB キスト・アートの表示上の限界からくるものなので、
○○ どうか御容赦願います。本当は隙間はない、と考えて
下さい。
これなら、「エネルギーの粒子」の移動距離はゼロとなり、所要時間もゼロにな
るでしょう。
でも、これはいくらなんでも反則です。
たとえ理屈の上でも、物体の位置を勝手に変更するなんて、許されることではあ
りません。
ここで問題にしたいのは、あくまで、下図のように、物体Aと物体Bとが接して
いない(離れている)状態の問題です。
[図101・2]
A B
○ ○
では、この場合、どうすれば「移動距離はゼロである」とこじつけることができ
るのでしょうか?
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134.始点を偽る
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そのためには、始点を偽ればいいのです。
移動距離を測る際には、「何処(始点)から何処(終点)まで移動したか?」を
測りますね。(当たり前ですが…。)
その際、「どこから」の位置、すなわち、始点を偽ればいいわけです。
具体的に言うと、始点を、物体A(と接する微小空間領域)の位置とするのでは
なく、物体Bの位置にするわけです。
こうすれば、始点と終点とが等しくなり、移動距離はゼロになるでしょう。
これが、今回取り上げるトリックの基本中の基本です。
それでは、どうすれば、このように始点を偽ることができるのでしょうか?
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135.「放出」→「発生」という再解釈
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そのためには、言葉のちょっとしたトリックを二つ組み合わせて用います。
まず一つ目は、「放出」を「発生」と再解釈することです。
「エネルギーの粒子」が放出されると、「エネルギーの粒子」が(空間に)発生
することになります。
そこで、「エネルギーの粒子」が放出されたことを、「エネルギーの粒子」が発
生した、と言い換えるのです。
そして、その際、「エネルギーの粒子」が発生した位置を、「物体Bの位置」と
偽ればいいのです。
こうすれば、始点は「物体Bの位置」ということになり、移動距離はゼロになる
でしょう。
では、どうすれば発生した位置を偽ることができるのでしょうか?
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136.「発生」→「実在化」という再解釈
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そのためには、二つ目のトリックを用います。
それは、「発生」を「実在化」と再解釈することです。
「エネルギーの粒子」が発生すると、「エネルギーの粒子」が実在するようにな
ります。
そこで、「エネルギーの粒子」が発生したことを、「エネルギーの粒子」が実在
するようになった、と言い換えるのです。
そして、その際に、位置を偽ればよいわけです。
「実在するようになった」ということは、「それ以前は実在しなかった」という
ことです。
ですから、「放出はされていても、実在はしない」という状態をでっち上げるこ
とが(理屈の上では)可能になるわけです。
つまり、「実在するようになるまでは、実在しなかった」という(屁)理屈が成
り立つことになるわけです。
となれば、「エネルギーの粒子」が実在するようになった位置を、「物体Bの位
置」と偽ってしまえばいいでしょう。
そうすれば、発生した位置は「物体Bの位置」ということになり、その結果、移
動距離はゼロになります。
このように、言葉のトリックを用いることで問題を解決していくのが、量子力学
の特徴なのです。
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137.エネルギー放出時刻も偽れる
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上で述べたトリックは、さらに別の問題をも解決してくれます。
それは、物体Aがエネルギーを放出する時刻を偽ることができることです。
物体Aがエネルギーを失う(=放出する)のは、「エネルギーの粒子」が実在す
るようになった時です。
それ以前、すなわち、「エネルギーの粒子」が実在していない時は、物体Aはエ
ネルギーを失う(=放出した)ことにはなりません。
エネルギー保存則のことを考えれば、こうした理屈が成り立つはずです。
よって、物体Aがエネルギーを放出した時刻を、「エネルギーの粒子」が物体B
の位置に実在するようになった(=発生した)時刻、と偽ることができるわけで
す。
ちなみに、この場合、移動距離はゼロですから、所要時間もゼロです。
このため、「エネルギーの粒子」が実在するようになった瞬間に、物体Bはエネ
ルギーを得ることになります。
ということは、物体Aがエネルギーを放出した瞬間に、物体Bがエネルギーを得
ることになりますね。
つまりは、エネルギーの瞬間移動です。
こうして、離れたところにエネルギーが瞬間的に移動する現象、すなわち、遠隔
作用的な現象が説明できるというわけです。
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138.イメージで表すと…
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さて、これまでお話しした理屈のイメージを、図で表してみましょう。
以前説明した「エネルギーの粒子」による考え方は、下図のようなイメージでし
た。
[図101・3]
A B (注)◎は、授受されることになるエネルギーが、
◎ ○ 物体(○)に存在することを表します。
↓
○・ ○
↓
○ ・ ○
↓
○ ・ ○
↓
○ ・ ○
↓
○ ・○
↓
○ ◎
これに対し、今回述べた「エネルギーの粒子」による考え方は、下図のようなイ
メージになります。
[図101・4]
A B
◎ ○
↓
◎? ○
↓
◎ ? ○
↓
◎ ? ○
↓
◎ ? ○
↓
◎ ?○
↓
○ ◎
「エネルギーの粒子」を表す記号「・」が、全て「?」に変わっていますね。
これは、「エネルギーの粒子」が『実在していない』ことを表します。
実在していないからこそ、(1〜6段目では)物体Aはエネルギーを放出してい
ないことになるのです。(注:物体Aは◎のまま。)
実在するようになる最下段(7段目)で、はじめて、物体Aはエネルギーを放出
することになるわけです。(注:物体Aが○になっている。)
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139.確率的な存在というトリック
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では、図101・4に描かれている「?」とは、一体、何なのでしょうか?
「実在しない存在」とは、一体、どういうものなのでしょうか?
そんな「存在」が、はたしてあり得るのでしょうか?
否、理屈の世界、すなわち、量子力学の世界にはあるのです。
しかも、それは、みなさんが既に御存知の「存在」です。
それは、ズバリ、「確率的な存在」のことです。
以前、第95回にやりましたよね。
「エネルギーの粒子」が放出される方向の問題をごまかすために、この概念が用
いられました。
どの方向に放出されることにすればいいのかわからない。
そこで、あらゆる方向に放出されたことにする。
そして、後になって、相手方の物体に到達できたものだけを実在したことにし、
その他は実在しなかったことにする。
こんな(屁)理屈を正当化するために、相手方の物体に到達まで、「エネルギー
の粒子」は、実在するのではなく、確率的に存在することにする、と。
・・・・・
思い出しましたか?
そう、あの考え方です。
あの考え方を、ここでも利用するわけです。
実在はせず、確率的にしか存在しない「エネルギーの粒子」は、エネルギーを有
しません。
したがって、そんなものが放出されても、物体Aはエネルギーを失う(=放出し
た)ことにはなりません。
確率的にしか存在しなかった「エネルギーの粒子」が、物体B(の位置)に到達
した時に、はじめて、実在するものになり、エネルギーを有するものになるので
す。
そして、この時になって、はじめて、物体Aはエネルギーを失う(=放出した)
ことになるのです。
こうして、今まで述べてきた理屈が正当化されるというわけです。
このように、量子力学では、確率(的存在)という考え方により、移動距離・所
要時間をゼロにすることができ、遠隔作用的な現象が説明できるのです。
* * *
量子力学の確率(的存在)という考え方は、非常に奥が深いものです。
不確定性はもちろん、「場の理論」とも、深い関連があります。
ついでに言うと、図101・4のイメージも、厳密には正しくない…というか不
十分なのです。
そこで、次回は、確率(的存在)という考え方について、もう少し詳しくお話し
たいと思います。
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